【コラム】今こそ息子の度量の見せ所だ

 「これはゲームだ。俺たちは特別に選ばれたんだ。1000点取ったら勝ち。最後まで見つからなければご褒美に大きな戦車をくれて、家に帰れるってさ。だから最後まで見つかったらダメだ」

 きょう生きているということは、あす死ぬかもしれないことを意味していたナチス時代の強制収容所。父親グイドは息子ジョズエに収容所生活を「ゲーム」と言った。グイドは最後に銃殺され、ゲームのルールを守ったジョズエは生き残った。父親の愛を描いたイタリア映画『ライフ・イズ・ビューティフル』(1997年)のワンシーンだ。

 ユダヤ人の大量虐殺・民族浄化を主導したのはアドルフ・アイヒマンだった。ドイツの哲学者ハンナ・アーレントはアイヒマンにインタビューし『イエルサレムのアイヒマン-悪の陳腐さについての報告』(69年)という本を書いた。アーレントが見たアイヒマンはベートーベンを愛し、小児性愛小説『ロリータ』を嫌悪し、家族を愛する普通の父親だったという。彼だけが特別なのではない。その生きざまが「くず」同然でも、子どもに対してはどの親の胸にも仏が宿る。

 キム・ヒョンスンの詩『父の心』に次のような一節がある。「爆弾を作る人も/刑務所を監視する人も/居酒屋の戸を閉める人も/家に帰れば父親になる」

 どの父親にも子どもがいる。父親の評判が高ければ幸いだ。普通でもラッキーだ。問題は悪名高い父親の子である場合だろう。世間から後ろ指を指される者の子として生きるというのはどういうことか。どれだけ想像しても、現実にはかなわないだろう。

 今、全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領一家は全国民に責め立てられ、悔し涙をのんでいるかもしれない。7月12日に公布された「公務員没収特例法」、別名「全斗煥追徴法」は追徴時効を2020年まで延長し、家族に対しての追徴も可能にした。「正義のためにはこのような法律が必要だ」と言う人も、この法律が法律不遡及(そきゅう)の原則を破り、連座制を適用したという点にはある程度同意する。しかし今「国民の法感情」は「どんな超法規的行為をしてでも追徴金を取れ」と後押ししている。

文化部=朴垠柱(パク・ウンジュ)部長
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