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生活保護のリアル みわよしこ
【政策ウォッチ編・第35回】 2013年8月9日
著者・コラム紹介バックナンバー
みわよしこ [フリーランス・ライター]

読めば貧困・生活保護が他人事ではなくなる!?
マンガで生活保護を描く、さいきまこ氏の思い
――政策ウォッチ編・第35回

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――楽しみにしています。

 私の中では、それは完結ではないんです。「陽のあたる家」の主人公一家は、まじめに働いていた夫妻と、育ち盛りの子どもたち。誰もが「救われてほしい」と思うような人たちですよね。

――はい。だから、多数の読者さんたちの心に届いたのでしょう。

 ただ、貧困の現場も、生活保護制度の実際も、そういう方々だけが対象というわけではないんです。生活保護制度の原則の1つは「無差別平等」ですから、いわゆる「眉をひそめたくなるような人たち」も受給しています。

「陽のあたる家」第1回(「フォアミセス」2013年8月号に掲載)より。妻がリアルに想像した一家の死。日常のあちこちに存在する落とし穴に落ち、セーフティネットに助けられることもなく、落とし穴の底に打ち付けられて死ぬ (C)さいきまこ(フォアミセス)
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――「無差別平等」とは、「この人は生きていい」「この人は生きなくていい」を、人が判断してはならない、ということですからね。親鸞の「善人なおもて往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」や、キリスト教の「神の前の平等」という考え方と通じるものを感じています。

 そうは言っても、眉をひそめたくなるような生活保護当事者に対しては「なぜ、私たちの税金で?」という見方がされやすいですよね。だから、「貧困はなぜ生まれるのか」を描かなくては、と思っています。そこまでは、絶対にたどりつきたいです。そうしないと、「陽のあたる家」は、私の中では完結しません。

 個人って、偏見や差別意識でいっぱいですよね。私自身、正義感に溢れているような人間ではありません。私の中にも、偏見や差別意識が溢れています。ときどき気がついて、自分でびっくりします。

――私もそうです。自分自身も含めて、各個人は、偏見や差別意識でいっぱいの度し難い存在であることから、結局は逃れられないと思っています。私は、個人の意志や努力の限界を痛感するからこそ、法や制度の問題に意識が向かっているところもあります。

 でも、個人だって、知れば変われるんです。知らないと、どうしようもありませんが。

「ホームレスに近づくな」と
息子に語った自分を乗り越えて

――さいきさんご自身の、「知れば変われる」のご経験をお聞かせください。

 しばらく前、息子に、

 「ホームレスに近づくなって、お母さん、言ったよね?」

 と言われたんです。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、2匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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