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生活保護のリアル みわよしこ
【政策ウォッチ編・第35回】 2013年8月9日
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みわよしこ [フリーランス・ライター]

読めば貧困・生活保護が他人事ではなくなる!?
マンガで生活保護を描く、さいきまこ氏の思い
――政策ウォッチ編・第35回

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――河本さんは福祉事務所と協議の上でお母さんに仕送りをするなど、可能な範囲で扶養義務を果たしておられたようです。

 あのバッシングの時は……酷さにヘキエキしました。まるで自分がバッシングされているかのような気がして。それで、「政府の動きに対する反対署名を集める」などの活動をしていたんですけど、2012年末には衆議院選挙で自民党が圧勝、都知事選でも猪瀬さんが当選して。「もう、何をやっても無駄なのか」という気持ちになりました。いろんな方と話してみて、「でも、1人ひとりに、訴えて説得するしかない」という結論に達しました。

――その手段がマンガだったわけですね。

 はい。私は口下手ですから、直接、他の方に話しかけて説得するなんて無理です。でも、「自分の職業を通じて、自分のフィールドで、自分にできることがあるのでは?」と。そこで、「陽のあたる家」の企画を立てました。貧困に陥り、そこから立ち直る家族の、家族愛の物語です。

 第1回では、一家を困難と貧困が襲います。第2回では、水際作戦に遭うものの、一家は生活保護を申請して保護開始となり、緩やかながら生活再建へと歩み始めます。

「生活保護といえば不正受給」
そう思い込む読者を変えられたか

「フォアミセス」2013年9月号。毎月3日発売の月刊漫画雑誌。20代~60代の幅広い女性読者対象。TVドラマ化もされた戸部けいこ「光とともに…」 をはじめ、「介護」「病気」「嫁姑」「夫婦」など身近な問題をテーマとした作品を毎月掲載

――「陽のあたる家」は、今月(2013年8月3日)発売の「フォアミセス」で、第2回が発表されていますね。第1回を読まれた読者さんたちからは、どのような反響があったでしょうか?

 一番多かったのは、「自分だって、いつそうなるのか分からないです。身につまされました」という感じのコメントです。

――どこにでもいそうな共働きの夫妻と中学生・小学生の子どもたちの一家が、ありふれた理由によって困窮に陥るストーリーですからね。

 それから、「不正受給は多いけど、生活保護が本当に必要な人は受けられるようにしてほしい」というコメントも多かったです。

――第2回には、「あるある!」と言いたくなるほどありふれている、「水際作戦」の良くあるパターンの実際が描かれていますね。本当に必要な人にも、生活保護を受けられなくするという。

 もちろん「水際作戦」も問題なんですが、「不正受給は多い」も……生活保護について、あまり良く知らない方も、「生活保護といえば不正受給」と思っているんですよね。不正受給は金額で全体の0.4%にすぎないんですが、不正受給に関する報道は多いですから、刷り込まれてしまっているんでしょうね。世の中でそう思われているということを織り込んで、第2回のストーリーを作りました。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、2匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル みわよしこ

急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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