――さいきさんは、美術大学のご出身ですね。だから、抵抗なくイラストやマンガが描けたのでしょうか?
うーん……それは少し違うかなあと。美大って、絵の巧い人が入る学校というわけではありませんし、入ったら絵が巧くなるわけでもないんですよね。美大での専攻はグラフィックデザインで、卒業後はデザイン事務所に勤務したり、雑誌や書籍の編集をしたり、フリーライターとして記事を書いたりしてきました。その全部が、現在の仕事に関係していると思います。
――読み手からは、イラストとストーリーマンガは、全く異なるものに見えるのですが。
私の場合は、イラストから4コママンガ、4コママンガからストーリー4コママンガ、その次は通常のストーリーマンガ、という感じでした。コマ数が増えていって、自然にストーリーマンガになった、といいますか。39歳の時、ストーリーマンガで、マンガ商業誌デビューをしました。同時に、夫と離婚しました。以後は息子と2人暮らしです。
――自然にストーリーマンガが作れるようになるなんて……才能だと思います。私も、マンガにチャレンジしたことが何回もあるんですけど、「コマ割りができるようにならない」というところで挫折しました。
「生活保護をマンガに」のきっかけは?
――では、「陽のあたる家 生活保護に支えられて」について質問させてください。まず、なぜ、生活保護に関心を持たれたのでしょうか?
生活保護に対しては、「いつか自分も受けるかも」と思っていました。私は、余裕のない生活の中で、国民年金保険料はずっと支払い続けてきているんです。でも、今までのところ、老後に備えた貯蓄は全くできていなくて。私の老後を経済的に支えるものは、老齢基礎年金だけです。それでは生活できません。すると、生活保護しかないんですよね。
――息子さんに扶養を受けることは、考えていないのですか?
息子は、「私は、この子が大人になったら、絶対に手放す」と念じて産みました。私自身の両親は、子どもにしがみついてくる感じの人たちで、とても苦しかったです。息子には、自分自身の人生を生きてほしいです。
――廃案になった生活保護法改正案には、親族による扶養義務の強化が含まれていましたね。
ええ。2012年春に始まった生活保護バッシングのきっかけも、「お笑い芸人の河本準一さんのお母さんが生活保護を受給している」ということでした。河本さんがお母さんの扶養義務を果たしていないことが問題視されたのですよね。