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2011年2月9日 第2回小児がん専門委員会議事録
健康局総務課がん対策推進室
○日時
平成23年2月9日(水)14:00〜17:00
○場所
三田共用会議所1階 講堂
○議題
【参考人意見聴取】
1 小児がん緩和ケアのシステムについて
2 医療における子どもの権利等について
【協議事項】
小児がんの診療体制について
○議事
出席委員:檜山委員長、天野委員、小俣専門委員、原専門委員、堀部専門委員、牧本専門委員、馬上専門委員、森専門委員、多田羅参考人、増子参考人
○鈴木がん対策推進室長
それでは、定刻より若干早いですが、委員の皆様方おそろいになりましたので、ただ今より第2回がん対策推進協議会小児がん専門委員会を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局の健康局がん対策推進室長の鈴木でございます。よろしくお願いいたします。
初めに、本日は全委員の出席をいただいておりますので、議事運営に必要な定数に達していることをご報告申し上げます。
また、本日は小児がんに関するプレゼンテーションをいただくということとしまして、お二方の方を参考人としてご参加いただいておりますので、ご紹介いたします。
大阪市立総合医療センター緩和医療科兼小児内科医長の多田羅様でございます。
弁護士法人のぞみ法律事務所代表社員、増子様でございます。
それでは、初めに、外山健康局長のほうからご挨拶させていただきます。
○外山健康局長
委員の皆様、それから参考人の皆様におかれましてはお忙しいところお集まりいただき、誠にありがとうございました。
今日は第2回目ということで、前回は小児がん対策について先生方から網羅的な意見をいただいたわけでありますけれども、今日は小児がんの診療体制に焦点を当ててご議論いただくということになっております。その中で特に医療における子供の権利といった問題であるとか、いろいろ現場の実態を踏まえるとともに、さらには今後の小児がん対策というものが、絵に描いた餅にならないようにしたいと考えております。本日は、例えば学会の専門医制度のご紹介もあるようでありますけれども、手つかずの分野だけに、そういった今後の行政との連携、医学会との連携なんかも新しい小児がん対策を進める上で、むしろお互いに最初から検討できるいいポジションにあるのではないかと思っております。そういった観点からも活発なご議論をよろしくお願いしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○鈴木がん対策推進室長
それでは、以後の進行につきましては、檜山委員長にお願いいたします。委員長、よろしくお願いいたします。
○檜山委員長
皆様、本日はお忙しい中、ありがとうございます。
本日は、小児がん緩和ケアシステム及び医療における子供の権利等について、まずは参考人の方からのプレゼンテーションいただきました後に、小児がんの診療体制につきまして、事前に各委員からご提出いただきました資料に基づいてご議論いただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
それでは、事務局より資料の確認等をお願いいたします。
○鈴木がん対策推進室長
それでは、資料の確認をさせていただきます。
以上をもちまして、撮影のほうを終了させていただきまして、カメラを納めていただきますよう、ご協力よろしくお願いいたします。
それでは、資料の確認です。座席表と議事次第のほか、右肩に資料番号、資料1、がん対策推進協議会小児がん専門委員会名簿について、以下資料2番から資料5番までお配りさせていただいています。また、参考資料といたしまして、参考資料1、第1回小児がん専門委員会議事概要、それから参考資料2、参考資料3、参考資料4ということでお配りしております。なお、増子参考人のほうから資料が追加されておりまして、別途冊子ではございますが、机上配布させていただいておるところでございます。
以上、資料の過不足等ございましたら、事務局のほうにお申出いただきたいと思います。
○檜山委員長
それでは、本日の議題に入りたいと思います。
最初に、本日ご参加いただいております参考人の方から、小児がんに関するプレゼンテーションをお願いいたしたいと存じます。
初めに、小児がん緩和ケアのシステムについて、大阪市立総合医療センター緩和医療科兼小児内科医長の多田羅様、よろしくお願い申し上げます。
○多田羅参考人
大阪市立総合医療センターの多田羅です。
私のほうで準備させていただきましたのは、小児がんの緩和ケアのシステムについてということでテーマをいただきましたので、時間も限られていますので、若干早口になったり資料を少し飛ばしながらというところもあるかと思いますが、後ほどもしご不明な点等ありましたらご確認いただければと思います。早速中身に入らせていただきたいと思います。
まず、小児がんのシステムについてという資料の1枚目のところからですけれども。小児がん緩和ケアの要素と描いてあります。これは成人のものと大きく変わりませんが、概ねこういったことを網羅的に取り組んでいく必要があるのではないかということで、六つの要素を挙げています。
症状緩和、痛みをはじめとする様々な苦痛にしっかりと対応していくこと。そして、家族との生活や社会との関わりというものを重視していく観点から、在宅支援。そして、様々な病気に伴う心理的な問題や社会的なハンディキャップを含めた社会的な問題に対応していくということ。さらには、家族のサポートや、子供を亡くした後の遺族のケア。そして、昨今子供の権利と親の意向、そういったことも含めて子供たちにどのような情報を伝えていくべきか、あるいは延命治療の差し控えや、場合によっては中止といったこと、様々な倫理的な問題がこの緩和ケアの周辺の中で生じてきますので、こういったことを適切に検討していくということ、こういったところが緩和ケアの要素となると思います。これは中身的に大きく成人と変わるところではないと思うんですけれども。
次の資料の下の段のほうを先に説明させていただきます。ただ一方で、小児と成人の間では共通する部分も多くありますけれども、幾つかの点で大きく異なるあるいは配慮しなければいけない点があります。一つは、疾病構造が小児がんと成人がんでは異なるというところで、疾病が多様であるということ。そして、体のサイズが数kgの子もいれば100kg程度の子供たちもいるということで、薬物の使い方やエコードウタイを含めて特殊な配慮が必要であるという点。
そして、もう既にご存じと思いますけれども、患者の絶対数が成人と比べて非常に少ないですので、システムの確立や技術の向上といった緩和ケアの観点からのそういった進めることが困難になりやすいということ。
そして、倫理的問題につきましても先ほど申しましたように、大人の緩和ケアとは異なる問題として、子供の最善の利益や子供の意向、子供の自立というものをどのように尊重していくべきか。あるいは、そういったことに基づいた延命治療等の差し控えをどのように考えていったらいいのかというような問題が異なったポイントとしてあると思います。
さらには、子供は成人とは異なりまして、遊びであるとか学びというのが大人以上に、あるいは大人では必ずしも必要ではない部分もあるかもしれませんが、非常に不可欠な要素として緩和ケアの領域においても重要なポイントとなっていると思います。
そして、家族の役割が、単に病気の子供を持つ親というだけではなくて、主たる介護者としての役割、保護者としての意思決定をしていかなければいけない役割という面で、多くの役割を家族は担っている、そういった家族の役割が成人とは異なると思います。
さらには、死別体験というものが配偶者や親を失うという人たちに比べると、死別後の有病率、あるいはうつとかも含めた精神的な問題、自殺率といった問題で、あるいは配偶者間、夫婦間の関係に影響を及ぼしたりということで、死別体験が非常に大きな問題になりやすいということ、こういった点が小児において特に配慮すべき緩和ケアの課題であろうというふうに思っています。
こういった小児特有の問題もかんがみながら小児がんの緩和ケアを考えていかないといけないと思うんですけれども、特に今回は小児がんの治療施設における課題にフォーカスを当ててみたいと思います。
上のスライドになるんですけれども。大きく緩和ケアのことを考える場合に、一般的な緩和ケアと専門的な緩和ケアというふうに分けられると思います。一般的な緩和ケアというのは、一人一人のスタッフであるとか、社会の様々な人たちが関わっていく一般的なものです。多くは小児がん治療施設においては多職種的に、例えば治療している主治医であるとか、病棟の看護師、心理士、あるいは院内学級の教師であるとか、ソーシャルワーカー、様々な人たちがそれぞれの職能あるいは技術に基づいて多職種的なチームアプローチを進めていく。
あるいはそういった一人一人のスタッフが適切に緩和ケアを提供していくために、教育プログラムによって技術を上げていくようなプログラムも必要だろうと思いますし。この小児がんに関わらずですけれども、緩和ケアというのは一施設だけで完結することというのはしばしば難しいですので、地域の様々な活動、ピアサポートと呼ばれるような患者会の活動であるとかNPOの取組、そういったものとの地域活動との連携というのが一般的な緩和ケアとして含まれるものだと思います。
もう一方で、専門的な緩和ケアというのは、緩和ケアの専門家というものをどのようにつくっていき、あるいはどのように関わっていくのかというような専門家としての緩和ケアの関わり方ですけれども。一つは、コンサルテーション・システムによってプライマリーに関わる一般的な緩和ケアを提供する中で困難なものをコンサルテーションを受けていく。あるいは、ターミナルケアというのは、多くの緩和ケアの複雑なニーズが特に突出して必要となってくる部分だと思うんですけれども、そういった場合の病床の在り方。あるいは、地域において在宅でターミナルケアを提供していく上での専門的な緩和ケアとの関わりといったところが一方の課題になると思います。
こういったところから、今回は時間も限られていますので、次の用紙になりますけれども、専門的な緩和ケアの特に体制ということについて触れてみたいと思います。
この下の小児がんの症状緩和というところなんですけれども、これはアメリカのボストンの報告なんですけれども。90年代は小児の緩和ケアのチームというのがない時代には、やはり疼痛とか呼吸困難、不穏とか不安、あるいは家族の心の安心・準備といったものがなかなか十分にコントロールされていない状況が、緩和ケアチームが97年に設立されて以降、数字が改善したと。やはりそういった専門家の関与というものが子供たちの、特に終末期における緩和ケアの様々な症状の緩和に役立っているという、これは一つの一例としてご紹介します。
次の用紙になるんですけれども、ケアの場所というところですけれども。欧米においてはこれまで小児がんというのは在宅死亡率が非常に高いのが特徴です。ここには主な幾つかの報告を挙げていますけれども。イギリスの全国調査、全数調査をしたところ、小児進行がんの8割近い子供たちは在宅で死亡していたり。オランダの1施設の報告やフィンランドの報告、あるいはカナダではがん以外も含む緩和ケアプログラムの全体で53%というような数字がありますが、がんだけだともう少し高くなると思います。アメリカは全盛期の報告ではありますけれども、小児がんの約半数が在宅で死亡していると。
こういった報告から見ても、小児がんの子供たちやその家族は自宅で最期の時期を過ごしたいというふうに思っている様子がうかがえますし、そういったところにこの緩和ケアチームの専門的なコンサルテーションや専門的な関わりがあるとこういった数字が上がってくるということが一般的に言われています。
その下にロンドンの子ども病院の例を挙げているんですけれども。もともとロンドンでもがんの子供たちは在宅死亡率が1割台でした、70年代までは。80年代の半ばに小児緩和ケア専門チームというのがロンドン子ども病院で発足するんですけれども、その直後から在宅の死亡率が75%に上昇していると。こういったやはり専門家の関与、当然これは直接的に全てのがんの子どもたちにこの緩和ケアチームが関わっているというよりは、地域とのコンサルテーション・システムを構築することによって、子供たちがより地域の中で家族とともに暮らす時間を長く持てるようになっているということを示唆する数字だということでご紹介させていただきます。
こういうふうにやはり専門的な緩和ケアチームであるとか緩和ケアのスタッフというものが関わることが、子供たちの症状緩和や地域で暮らしていくということ、そして在宅での死というところまでを非常に貢献するということが理解できると思うんですけれども。
一方ひるがえって、我が国の緩和ケアチームということで、その下の段ですけれども、見ていきますと。現在、各がん拠点病院やそれ以外の病院も含めまして、成人の緩和ケアチームというのが多数活動していると思うんですけれども。中でもそのチームによって活動の内容であったりとか濃度というのは様々だと思うんですが。少なくとも加算をとるような専従性を持ったチームであれば、症状の緩和には十分に長けた専門性が発揮されていると思います。
ただ一方で、子供のケアに関われるかということになってくると幾つかの点、特に小児の医療といいますか、小児医療の文化といいますか、小児医療に十分なじめていないという、コンサルテーションを受けたとしてもどういうふうに返したらいいかというところで十分な経験がないといったところがあるように思います。
一方で、この間幾つかの子供病院で多職種的な緩和ケアチーム、あるいはそういった集まり、カンファレンスなるものが持たれている子供病院が増えてはきています。これは特に緩和ケアの専門家が活動するというよりは、心理士やプレイスペシャリストを含めた、あるいはソーシャルワーカーや看護師さん、それから主治医も含めて、あるいは麻酔科医とか、様々な多職種的な集まりでチームアプローチで緩和ケアをやっていこうというような取組が幾つかの子供病院で始まってきています。
ただ、こういうことで多職種的なチームアプローチ、小児医療に慣れた人たちが取り組むという点では、成人の緩和ケアチームと異なったメリットがあると思うんですが。一方でやはり緩和ケアの専門家が必ずしも配置されていないということからすると、専門性を十分に発揮するチームとしては十分に機能し得ないというデメリットもあります。
そして、緩和ケアを必要とする子供は大人に比べると随分少ないですから、専従あるいは専門家をそこにスタッフとして配置するということが困難であるという点が小児病院の緩和ケアチームあるいはカンファレンスの欠点として挙げられます。
そういったところを併せてメリットをとっていこうとすると、小児緩和ケアの専門家を置いた緩和ケアチーム、欧米のようなチームをつくっていくことが一つの提案になるわけですけれども。残念ながらやはり人的な資源あるいはそういった人材を置くことのコスト面での問題ということがあって、なかなか実現されにくいのが原状かと思います。
そういった点から、全ての施設にそういった専門家を配置してということが困難な現実を見ますと、やはりコンサルテーション・システムのような形で全体的なシステムを考えていく必要があるのではないかというふうに考えます。ここにもお示ししましたように、コンサルテーション・システムとして、まずは一般的な緩和ケアというのをプライマリーのチームが多職種的に対応していく。その中で特に各、もし小児がん拠点病院というような各小児がん治療施設があれば、そういった施設ごとに多職種的に緩和ケアについて定期的にカンファレンスを開いたりチームアプローチをしていくようなチームを、できれば看護師の専従というようなものがあるとより効果的だというふうには感じますけれども、こういった緩和ケアチームをレベル2として配置すると。しかし、必ずしも専門性が十分に担保されないとも思いますので、レベル3として小児緩和ケア医であるとか、小児緩和ケアに長けたナースが専従でいるようなチームを、恐らく全国でまずはモデル的に二つあるいは三つという形で各地域に配置することで、本当に困った症例においてのコンサルテーションができたりとか。あるいは、教育的にそのレベル2の人たちのスタッフ教育といった観点からもレベル3というのが幾つかあるということがコンサルテーション・システムとしては重要ではないかというふうに考えています。
時間もありますので、簡単にだけ、この英国のそういったレベル3までのお話を簡単にさせていただきますと。専門医のポストがあるのは子供病院としては4施設、子供のポスピスとコミュニティに存在している人を含めれば六つの場所で小児緩和ケアの専門家がいるんですけれども。イギリスの北東と北西と南東と南西に分かれてこのように配置されています。全国で4カ所専門家がいる子供病院があるということになります。そして、小児緩和ケアのそういったトレーニングポストをロンドンとカーディフが1名ずつ毎年受け入れています。
小児がんの緩和ケアの専門ナースと言ってもいいんですけれども、訪問専門看護師というのが各小児がん治療施設22施設に、POONSと呼ばれますけれども、配置されていて、地域との連携、調整であったりとか、緩和ケアの提供といったものを担っています。したがいまして、こういった専門医のいない施設ではこのPOONSが主導して緩和ケアチームが動いているということです。
その次のページに、ロンドンの子供病院の緩和ケアチームのナショナルセンターとしての患者数を、2005年のもので少し五、六年数字が古くなっていますけれども、当時私が調べた数字として紹介しておきます。大体年間に350人、そのうちのがん患者さんが250人程度が小児がんで、それ以外が100人程度という紹介になっています。そのうち死亡例が105人、こういった大きな数をコンサルテーション・システムとしてチームとして持っているというふうになっています。
こういったコンサルテーション・チームをうまく利用していきながら、ターミナルケアの場所として、一般的に子供たちが死亡する場所としては小児病棟が多いと思うんですけれども、さらに考え得るものとしては、成人緩和ケア病棟を使っていく、あるいはもう一つは自宅というような選択肢もターミナルケアの場所としては挙げられると思いますが。これらはそれぞれここに挙げたような利点と欠点というのがあると思います。
こういったものを在宅ターミナルケアを進めていくためのシステムとして、次のところになりますけれども。在宅ベースのサポートとして、レベル2やレベル3が地域医療とのコンサルテーション・システムをつくって、あるいは逆に小児がん治療施設から先ほどのPOONSのようなそういった小児がんの子供たちのケア全般によく慣れたナースが地域に出向いて行って指導していったり、一緒に見ていくようなアウトリーチの、アウトリーチは出張という意味ですけれども、そういった仕組み。そして、訪問による、もちろん在宅で暮らすということは、そこに充実した生活がないと余り大きな意味がありませんので、遊びだとか教育だとか様々な生活の質を高めていくような活動というものも同時に充実させていく在宅ベースのサポートと。
一方で、やはりご家族からすると、緊急時の不安であるとか、症状が非常にコントロールするのが難しくなったときの対応をどうしていくかということが在宅ターミナルケアで大きな課題になってきます。その受け皿をきちんとつくっておくことが重要だと思うんですけれども。一つは、緩和ケア病棟で非常に症状が難しくなったときは看取りの場としては非常にいい環境を持っていますので、そういったところを受け皿にしていく。そして小児加算を新設したり、そういった緩和ケア病棟向けの教育プログラム等をつくっていくことでそういったものを促していく。
一方で、小児専門の緩和ケア病床というのを、先ほどレベル3のところで受け皿をつくっていって緩和ケア病床として機能させていけば、最終的な質の高いあるいはレベルの高い緩和ケアが保証できるというふうに考えています。
その後、一般的な緩和ケアにつきまして緩和ケア教育プログラムというものを今私どものほうで、昨年年2回実施しましたので、その紹介だけこの後ろに載せていますので、もしお時間にお手すきがありましたら目を通しておいていただければと思います。
すみません、早口でちょっと十分にうまく伝わったかどうか分からないんですけれども、時間も限られていますので、これで終了させていただきます。
○檜山委員長
多田羅様、どうもありがとうございました。
ただ今のご説明に対して質問等ございましたらお願いいたします。
天野委員、どうぞ。
○天野委員
貴重なプレゼンテーション、ありがとうございました。私から2点ございます。まず、1点については、レベル1、2、3というふうなコンサルテーション・システムということで、レベル2の各小児がん拠点病院というものをもし置くのであればということですが、そこのチームがある程度キーになるかなというふうに聞いていて感じました。
ご存じのとおり、成人のほうではがん診療連携拠点病院で拠点病院の指定要件として緩和ケアチームがありまして、身体症状の緩和に関わる専門的な医師であるとか、あと看護師等の配置とかが要件として幾つか定められているんですが。その小児がんの拠点病院というものがもしあるのであれば、そこの緩和ケアチームに求められる要件といったものがもし具体的にあれば、ご教授いただければというのがまず1点です。
もう1点が、成人のほうでも緩和ケアのことについて、その評価についてですが。アウトカム指標的なものですね、例えばジョツリツといったものが一つあるわけですが。小児のほうでは何かそういうったものを評価する上で特有の指標といったものが何かあるのであればご教授いただければと思います。
○多田羅参考人
まず1点目の緩和ケアチームの要件としてどういったものが必要かという点ですけれども。どこまでの機能を緩和ケアチームに求めるのか、プライマリーな部分で、例えば精神科の領域のようなものをリエゾンとして対応するのか緩和ケアチームが対応するのか、心理的な問題とか、あるいはそういう在宅調整も含めて、どこまでを緩和ケアチームが担うのかによって必要とされる要件は変わってくると思うんですけれども。やはり僕自身が感じているのは、そういった在宅調整であるとか心理的な問題も含めてよろず、治療に関わる以外のいろいろな困ったことの受け皿がどこかにないと、結局だれに相談したらいいか分からないということでいうと、相談を受ける受け皿となり得る。そして、それが自分たちのチームのコアメンバーだけで対応できなければ、それを各専門家、これは栄養の人だねとか、これは心理の人だねという形で、必ずしもコアメンバーに入ってなくてもいいですけれども、コアメンバーの人たちはそれを調整する能力がある必要があるだろうと思っています。どこまでをそのメンバーに入れるかというのは、その病院の持つリソースによっても変わってくると思いますので。
基本的に必要なのは、やはり小児がんの治療についてよく分かっている医師と看護師がコアのメンバーとしていたほうがいいだろうと思いますし。できれば心理であるとか社会的な問題に日ごろ関わっている心理士であるとか、あるいは最近では病院ではポスピタルプレイスペシャリストやチャイルドライフスペシャリストといって入院中の子供のストレスに直接的に関わる職種も増えてはきていますので、そういった子供の心理的問題や社会的問題に直接的に関わるようなスタッフとして、その数名程度がコアとして入っておくのが望ましいと思います。それで、児童精神科であるとか、あるいは緩和ケア医というのが各その病院にいれば緩和ケア医というのが関わっていく必要があるだろうし。疼痛の問題について、例えば麻酔科医にそういった関心であるとか専門的な知識を持っている人がいれば麻酔科医でもいいかもしれませんし。そこはリソースに応じて関わっていただいてもいいし。少なくとも僕は相談を受けれる窓口としてチームを持っておく必要があるのではないかというふうに感じています。
もう一つのアウトカムの指標なんですけれども、これも先ほど症状緩和の部分でいうとアウトカムの指標として幾つか疼痛とか呼吸困難、不穏、センモウであるとか、幾つかの身体症状については様々なアウトカムが評価される形で報告は国際的にはされていると思うんですが、症状緩和以外の部分で重要な指標として国際的に見られているのは在宅死亡率です。必ずしも僕自身は在宅で死亡することだけが望ましいとは思わないんですけれども、なるべく地域で暮らせている指標として在宅死亡率が高いということはその地域のリソースが豊かであるということの間接的な証明にはなってくるんだと思うんですけれども。多くの場合、その在宅死亡率というのが地域連携における一つの指標になっています。
ですので、大きな指標を幾つか挙げろと言われれば、症状緩和のための幾つかの、特に小児がんにおいて終末期に多い症状というのが、疼痛とか倦怠感とかセンモウとか不穏とか呼吸困難、オウキョウと幾つかありますけれども、こういったものの改善があるかどうかということと、在宅での、死亡率がいいのか在宅でのリソースがどの程度得たかということの指標として一般的な死亡率というところが一般的だと思います。
あとは、家族も含めていいますと、家族というのは非常に心理的な問題が多くて、うつであるとか適応障害といったような家族の心の問題、社会的なサポート、財政的な問題が治療に影響してきたりということもありますし。生活が二つに分かれるというのは家族の問題も含めて評価していくということになりますと、家族のうつ評価を含めた適応障害とか心理的な評価であるとか、社会的な、経済的なものも含めた評価というものが非常に重要なアウトカムの指標として求められるというふうに思っています。
○檜山委員長
ありがとうございます。
ほかにご質問ございますか。
特になければ、続きまして、医療における子供の権利等について、弁護士法人のぞみ法律事務所代表社員、増子様、よろしくお願いいたします。
○増子参考人
ご紹介いただきました、弁護士をしております増子孝徳と申します。本日はこうした意見を述べる機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
10分間程度ということでございますので、話は絞ってさせていただきます。資料3として皆様のお手元に、医療における子供の権利等ということで、レジュメというよりほとんど口述原稿のようなものと、それから一番最後にございますのが、子ども療養支援協会というところの設立趣意書の裏面でございます。表面はございませんけれども、裏面だけを皆様のお手元に配布をしております。
最初に、何ゆえ私弁護士なのにここへ来ているかということを少し説明しませんと分かりにくいかと思いまして、若干お話ししますと。弁護士はいろいろな仕事をいたしますけれども、弁護士会を中心にいろいろな人権擁護活動というのをしてございます。その中で私は医療に関する人権ということで、子供の問題に限りませんけれども、いろいろな人権問題を扱っている日弁連というところの人権擁護委員会の医療部会というところにずっと所属しておりまして、それが一つ。
それから、委員の皆様のところには別途参考資料ということで配布してございますけれども、栃木県弁護士会という私が所属している弁護士会で医療における子供の人権というのを数年前に研究いたしまして本にしておりますので、そうした関係から本日お話をさせていただきます。
それと、若干個人的なことを申し上げますと、私の長男が、子供のころ、今も子供ですけれども、小さいときに白血病ということで入院をしたことがございます。そうした経験も若干ございますけれども、本日のお話は主に弁護士としてさせていただくということで予めお断りをさせていただきます。
まず、医療における子供の権利もしくは人権ということで、あえて申し上げなければならないのには一つ理由がございまして。皆さん患者の権利とかあるいは子供の権利というふうに切り分けますと、それぞれきちっとした専門家といいますか、日ごろ活動している方がたくさんいらしていろいろな主張がなされているわけでございます。しかしながら、これが子供さんであるということになりますとちょっと状況が変わってくると。それはなぜかといいますと、まず患者の権利といいますのはいろいろありますけれども、メインはやはり自己決定権を中心としたものでございます。ところが、子供であるからというようなことが理由となって、説明もいいかげんであったり、ましてやご本人さんの決定を得るというふうなことがなかなかなされないという傾向がございます。
それから、子供ということですと、ご案内のように子どもの権利条約というのがありまして、成長発達権を中心としたもろもろの子供の権利というものが定めされておりますけれども。再三指摘されているように、入院中であるから、あるいは患者なんだから、病気なんだからということでいろいろな制約があるわけでございます。
そういった中で、遊びへの参加ですとか、教育への参加というものが顕著に制限されていると言っていいかと思います。こういったことはしばしば問題として指摘されながらも、これが人権であるという認識にまでなかなか至らないものですから、ついつい後退していくという傾向があろうかと思います。
そこで、この二つをきちんと見据えて、医療を受ける子供、つまり患者でありかつ子供であるという、こういう二重に弱い立場に着目をして、医療における子供の人権もしくは権利という考え方をきちっと認識する必要があるだろうというふうに思っております。
それで、各論を若干申し上げますととても長くなるので、かいつまんで申し上げますと。まず、2番目として、親に付き添われる権利というものを申し上げております。これはいわゆる入院中、親御さんが子供に付き添える、もっと我々から正確に言いますと、子供は親に付き添ってもらえると言ったほうが正確なんですけれども、そういう権利があるのだということを申し上げたいと思います。これはそうしたほうがいいとかいうレベルの話ではなくて、子どもの権利条約等々から導かれる人権であるというふうに考えるべきだというふうに思います。
そうなると何が違うのかと、人権であると考えると何が違うのかといいますと、支障がなければ一緒にいていいよというのではなくて、一緒にいられるようにどういうふうにサポートしていくか、あるいはもし離す、分離をするというのであれば、何ゆえに分離しなければならないのかというその目的をきちっと吟味して、必要最小限度の制限にとどめなければならないと、こういうことが帰結されていくというところに特徴がございます。
面会の制限、例えば午後1時から7時までですよとか、小児病棟の場合は若干緩いとは思いますけれども、一定の制限があるところがなお多いかと思います。何ゆえそのような制限をしているのかという理由を、いろいろあろうかと思いますけれども、果たして本当に必要であるかどうかということを吟味していっていただきたいなと。これは医療機関、医療従事者の方にお願いをしたいことであります。
ただ、付き添い等は、そうは言いましても24時間ずっと横にいるというわけにはいかないわけでありまして、そういったことを親に強いるという主張をしているわけではございません。それがまず注意していただきたい。
それから、付き添いがしやすいようにきちんと国や地方公共団体はそのサポートをすべきである。具体的には、いわゆるファミリーハウスといわれるような宿泊施設、これが病院の近所にある。低廉な価格で利用できるということは必須であろうというふうに思います。
それから、入院中に限らず、通常の処置等を行う際に子供さんから親を引き離すというようなことも、医療従事者はなかなかつらい部分もあろうかと思いますけれども、してはならないのではないかというふうに考えております。
それから、3番、4番へと進めさせていただきますけれども。先ほど多田羅参考人からもご指摘ありましたが、遊びやあるいは学びというものへの参加というものはとても重要なことでございます。重要であるというのみならず、子どもの権利条約にきちっと定められているいずれも権利というふうに考えなければなりません。
遊びにせよ、教育にせよ、自由にできるというだけではありません。きちっとアクセスができるように整備をしなければならないと。それは当然締約国、すなわち国あるいは地方公共団体の責務として、子どもの権利条約上も位置付けられておりますし、人権というのはそういうものであるということを申し上げておきます。
ポイントとして申し上げておきたいなと思いましたのは、これ3ページの4番で申し上げますと、教育のことなんですが。具体的には、病院内での教育ということを念頭に置くことになろうかと思います。その際に、いわゆる院内学級院内学級というふうに言っているわけですが、この院内学級と俗に言っているものにはどうやら4種類ほどあるようでございます。
そのうち訪問学級、訪問教育といいますかね、先生が病院へ訪問して行ってそこで教育をする。これも大きな意味では院内学級の一つというふうに言っていいかと思います。ただ、これは日数が限られる。当然時間数も限られるということで、やはり本来の形ではないのだろうというふうに思います。多くの子供たちがいるところ、あるいは長期間療養を要する子供がいるところ、ここにはきちっとした教室があって、そこへ通っていくというスタイルがとれるということがとても重要なんだということを指摘したいと思います。分教室とか、あるいはいわゆる特別支援学校が併設されているということが必要なのではないかなと思います。
私は今栃木県から参りましたけれども、栃木県には大学病院と言われるものが二つ、正確には三つですかね、ございまして。がんのお子さんなどが入院するのは二つあります。そのいずれもいわゆる近くの特別支援学校が分教室等を設けているということで、ちゃんと教室がございます。訪問して見学したこともございますけれども、本当に学校という感じがいたしまして、とてもいいものですね。
他方、東京などに来てみますと、意外と学校がない。特に学校法人等はじめとした私立の病院にはたくさんお子さんがいても、いわゆる分教室型の学校がなくて、訪問教育がメインであると。なかなか私立系の病院がまとまって要請をしても、教室が設置されないというふうな事情にあるんだというふうに承っております。やはりこれは改善されていかないといけないのではないかなということで、一つ強調していきたいというふうに思います。
それから、いわゆる患者の権利としての自己決定権の話を若干させていただきますけれども。自己決定権といいますのは、いわゆるインフォームド・コンセントというものをメインといたしました権利でございます。自分の病状ですとか、医療行為の目的、方法、危険性とか代替的治療法などにつきましてきちんとした正しい説明を受けて、理解した上で自主的に選択、同意、拒否できるという原則ですね。これは当然のことながら、子供さんにも適用されるのだということです。
しばしば子供は説明しても分からないとか、決定はできない、あるいは親権者である親が決定するのだということでもって、子供さん自身の決定を促さない、ひいては決定しない人には説明する必要がないということでそもそも説明しないというようなことがしばしば起こりがちでございます。これは何も医療者に限ったことではなくて、親の側がそういった姿勢を見せる場合も大変多いかと思うんですね。ここはやはり子供の権利という視点からいたしますと、なかなか受入れがたい現象であろうかと思います。
ですので、いわゆるコンセント、同意、これができる場合には当然お子さん自身から同意を得る必要がありますし、それができない場合であっても俗にアセントと呼ばれておりますけれども、日本語で言うと賛意となりますが、そういったものを得るべきであろうと。そのコンセントからアセント、そして何もとれないというこの3段階に至る、これは無段階でございまして、その無段階な子供さんの状態に応じて説明、そして意思の尊重ということがなされていく必要があろうかというふうに思います。
飛ばしまして、4ページ目の7番に入らせていただきますが。先ほど多田羅参考人の中からもホスピタルプレイスペシャリストですとかあるいはチャイルドライフスペシャリストといった専門家が紹介されましたけれども、この心理社会的支援を行う専門家というのは私も同じものを指して言っております。いろいろな子供の権利というのはあるわけですけれども、これはいわゆる物的な体制の整備というもの、例えば学校とか、これも必要ですけれども、人的な体制として整備をしなければならない部分があろうかと思います。療養する子供を心理社会的に支援する専門家、いろいろな役割を担っておりますが、こうした方も必要であろうかと思います。特に長期療養を要する子供たちが多く入院する病院においては、そういった職種がいるということはとても重要なことであろうというふうに思っております。
ただ、いわゆる医師とか看護師等と異なる医療関係者は現在たくさん現在あるわけですけれども、それでもなおこうした専門家を必要であるというふうに申し上げたい理由は、そこの(2)のところにあることでございます。若干ご紹介いたしますと。まず、医療を子供や家族を主体としたものにするためには、子供の思いあるいは考えを聞くという体制がいかなる医療の状況においても存在しなければならないのだという、こういった考え方が必要であろうと。
それから、年齢が低くても、子供を未熟な存在または親に付属する存在だというふうに見るのではなくて、一人の人間として意思を持って存在していることを認める、いわゆる人格を尊重するということになろうかと思います。これは、例えば、じゃあ私が行ってやればいいかというとそのようなものではやはりなくて、きちっと子供の認知、発達段階に応じた方法でこれらのことを行うと。極めて専門的な活動が必要なんだろうというふうに思います。
それから、慣れない環境からいろいろなことが生じまして、その後の成長、発達に影響するという可能性が懸念される子供の心理的混乱というものがございます。不安ですとか緊張、恐怖、いろいろあるわけでございます。そうしたものを軽減して、本来あるはずの成長、発達を促すような介入・支援が必要だと。これもやはりきちっとした専門的な訓練を受けた人が行わなければ駄目である。見よう見まねでやってみるということでは駄目なんだろうというふうに思います。このような介入・支援を行うための専門性をきちっと持った専門家を育てていく必要があるだろうと。
チャイルドライフスペシャリストとかホスピタルプレイスペシャリスト、これはいずれも北米、それから英国でそれぞれ固有に養成されている職種でございますけれども、日本では当然のことながらそういった職種をとるための体制がないわけでございます。いずれも外国へ行って留学をしてとってきているわけですけれども。そういった格好ではやはり増えてもいきませんし、波及もしにくいということで、本日資料の最後に加えてございます子ども療養支援者というものを、これは極めて詰めて申しますと、チャイルドライフスペシャリストもしくはホスピタルプレイスペシャリストの日本版であるというふうにご理解いただければよろしいかと思います。こうしたものを養成をしていって、そして病院で働いていただくということが必要なのではないかなというふうに思います。
若干ここでよく誤解が生じるので申し上げておきますけれども。そうした専門家が子供に関わるというのは、例えば説明一つをとっても、これは医師などが行ういわゆるインフォームド・コンセントの肩代わりをするものではないのだという点はメモしておきたいと思います。インフォームド・コンセントなどを医療に子供さん自身が主体的に関わるための支援を行うものであるという点にご留意いただきたいということで。
お時間でございますので、私のとりあえずのプレゼンはこの程度にさせていただきます。どうもありがとうございました。
○檜山委員長
ありがとうございました。
ただ今のご説明につきまして質問等ございましたらお願いいたします。
特にございませんか。
私から一つだけ。今最後に申されました、インフォームド・コンセントをやはり医療側がやっている状況で、医療と家族、患者という形でいつも我々やっているわけですけれども。よく聞くのは、その場では家族は同意してちゃんと同意書に署名をするわけですけれども、よく後で聞いてみると理解が得られていない場合が往々にあると、そういうことがやはり問題であるというふうにお考えというふうに理解していいのでしょうか。そういうところにそういう方が関わっていくことで理解が進むとか子供のインフォームド・コンセント、アセントが進んでくるという状況がはっきりと分かるんでしょうか。
○増子参考人
今のご質問は、親御さんご自身も理解できていないということがありますよという、そういう現状をおっしゃられているわけですね。親御さんが理解されないというのは、何も子供の問題に限らず、いわゆるインフォームド・コンセント全般に言えることかと思うんですね。やはり説明がなかなか難しいとか、聞いているほうも何となく聞き返しづらくてほかにはいらないと答えてしまうという、そういうインフォームド・コンセントというのは医療者と患者との間にもともと存在する関係に由来することなのかなというふうには思います。
それはとりあえず置きましても、子供の関係で言いましたら、やはり子供さんになぜその医療を行っているのかということをきちっと理解させる必要があるんだと思います。それは、普通に医師が大人に対して行うような説明をしたのではこれは分からないですよね。大人だって、委員長今おっしゃられたように分からないわけですし、まして子供にそのまましたら分からない。医師が子供に分かりやすいようにこうしたらいいかなと独自の考え方でやってみても、これは全くその質が変わりません。本当に工夫をそれぞれの経験のみでやっていることになりますので、おぼつかないんですね。
ですから、そこのすき間をきちっと埋めて、橋渡しをしていただくという方が必要なんだろうと。そういう趣旨でこういった支援をしていかなければならないのではないかということでございます。
○檜山委員長
原委員。
○原専門委員
最後に必要な要件というのが書いてありますけれども、実際インフォームド・コンセントあるいはアセントを行うために、なかなか子供たちから本音を聞きだすという作業がいるんですが、それをやっていくに当たって心理社会的支援を行う専門家というふうに書いてあるんですが。ここには臨床心理士が入ってないんですけれども、CLS、HPSも重要だと思うんですが、そういう役割での臨床心理士の位置付けについてはいかがでしょうか。
○増子参考人
臨床心理士、それからチャイルドライフスペシャリスト等の先ほど来申し上げている心理社会的支援を行う専門家、そしていわゆる医療保育士、この辺りの仕事の分担といいますか、そこはやはり一つ課題かなと思うんですね。どこまでが臨床心理士でどこからがチャイルドライフスペシャリストみたいな人なのかということについては、私もきちっとこうなのではないかなという切り分けができるほどには実は理解ができておりません。
ですから、カンゲキがあるなというのは分かっているんですけれども、どこまでどう出しあうのかということは今後の課題なんだろうと思うんですね。今回私のレジュメの中に特に臨床心理士等を省きたいという趣旨で書いていることではないです。その点ご理解いただければと思います。
○檜山委員長
よろしいでしょうか。ほかにご質問ございますか。
それでは、どうも増子様、ありがとうございました。
続きまして、本日の協議事項、小児がんの診療体制について。各委員より事前にご意見を提出していただいており、各委員の意見を踏まえまして、資料5として論点を整理させていただきました。本日のご議論を踏まえ、小児がんの診療体制についてとりまとめを行いますので、ご協力をお願いいたします。
本日の進行といたしましては、各課題ごとに委員の方から提出された資料等を踏まえて議論を行っていきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
では、資料5の、初めに1−0、小児がん医療に関する情報発信について、課題と対応案についてご議論をお願いいたします。このいわゆる小児がんの現状としては、情報発信についてかなり問題も指摘されていますが、ご意見等あればよろしくお願いします。
馬上委員、どうぞ。
○馬上専門委員
患児家族は、まず症状が出たときに近くの診療科にかかるんですけれども、小児科、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科など、その最初に行った病院で小児がんであることを特定できないという実態があります。患児家族のほうも一般常識として小児がんという知識がないものですから、いろいろな病院を回って診断がついたとしても、そこでそこが専門病院でなかったりしますと、そこから医師も患児家族も専門の病院を探せないでいる状態があります。セカンドオピニオンというシステムも積極的に受け入れられていない実情があるので、患児家族としましては、経験と実績のある専門医と専門スタッフが十分にいる、そういった体制の整った病院に迅速に紹介していただいて治療をしていただきたいというのが願いです。そのためには、何の腫瘍をどれぐらい経験があるかなどの治療実績などの情報の公開が非常に必須だと思っております。
○檜山委員長
この点について、何かご意見、あるいは現状についてご説明等ございますか。
牧本委員、どうぞ。
○牧本専門委員
まず、情報の公開、情報が例えばホームページ等々ですぐ取り出せる、それが信頼がおけるということは非常に重要なことで、それは確実に必要なことなんです。あと、付け加えとしては、多分小児がん医療というものが高度に専門化した医療のために、いわゆる三次医療圏以上ですね、三次医療圏の中のまたさらに専門家の集団にリーチしないと、実際には診断の細かいこと自体が不可能であることも多いことから。結局一方で近くの病院というのは一次医療圏で、非常に隔たりがあるんですね。ところが、小児がんと疑った途端に、本当は三次医療圏の先生にかからないと診断がつかないという。つまり、二次医療圏の地域の中核病院みたいなところでは実は専門家がいなくて、やはり同じことが繰り返されてということが起こっているのが現状だと思うんです。
我々としても国立がん研究センターとしても、結局この疑い例だけで受け入れることを実は今現状ではできていないんですね。これは日本のがん医療の構造そのものの問題ではないかと思うんですけれども。小児がんのように進行の速い、非常に注意しないといけない集団に関しては、もう疑い例からしっかり専門医療を受ける権利があるというふうな認識の下、専門医療の提供体制という、診断からですね、関わりを促進するような診断加算とか、あるいは疑い症例に対する保険とか、そういうふうなことを考えていかないといけないんじゃないかなということを私も意見書でも書かせていただいたんですが。
この辺をちょっと議論しないと、多分特殊だと思うんです。ここは成人がんとも、成人がんの一部と同じなんですが、成人がんの中にも進行が速くて同じような問題を抱えるものがあります。ですから、それと同じなんですけれども、やはりここは本当に特殊性に配慮しなければいけないところかなと思いますので、議論をお願いします。
○檜山委員長
天野委員、どうぞ。
○天野委員
今お二人の委員からご指摘があったことと重なるんですが。やはり小児がんの疑いが出てから専門施設へ行くまでの過程が余りにも現状として時間がかかりすぎていて、非常に患児さんやご家族の方の負担が大きすぎるということがありますので、例えばですが、小児がんの疑い例等が出た場合の医療機関の中での動きというか連携の在り方、パスのようなものを作成していただいてそれを提供していくということがまず一つあり得るのかなというのを感じました。
あと、情報提供に戻りますと、情報提供に関しては現状で国立がん研究センターのがん対策情報センターのほうでウェブ等の情報提供を行われているところで、そちらにも小児がんの項目などあると理解しているんですが。ただ、小児がんの患児さんやご家族の方の問題ということについていえば、特に精神的な問題、社会的な問題については非常に特有なものがありますので、それとは別個にコールセンターというようなものを併設するような形で情報センターというのがあってもいいのかなというふうに感じております。
○檜山委員長
小俣委員。
○小俣専門委員
今、天野委員や馬上委員がお話しされたように、発症当時から家族、そして本人は混乱をしております。ですので、適切な、そして正確な情報が家族や本人の手に入るようなシステムというのが必要だということが一つと。
それから、説明をするのに、アクセスをするということもありますが、画面上だけで、紙ベースだけでということは理解できないことがあります。やはり人が私は大切かなというふうに思っています。先ほど天野委員がお話しをされたような、真に社会的な支援が必要でもあると思いますので、そのためには人ですね、情報提供する人の確保というのが必要ではないかなというふうに考えます。
○檜山委員長
どうぞ、原委員。
○原専門委員
馬上委員から以前からずっとおっしゃっていることなんですが、要するにどこの病院で見てもらえば、がんと分かった後の話になるかと思うんですが。どこの病院で見てもらったらいいか分からないと。どの先生に手術をしてもらったらいいか分からないという、それが一番の問題なんですよね。これについてちょっと考えていたんですが、一番簡単な解決方法というのがあって、それはどういうことかというと、全ての診療情報を公開すればいいわけですよね。なかなか成人でもうまくいってませんけれども、そんなに難しいことではないと思うんです、小児がんの世界においては。というのは、診療している施設、かなりたくさんありますけれども、実際うちが例えば小児脳腫瘍の手術をやりますよという施設ってそうないわけで。個々の外科医の手術の経験数だとか、あるいは診療面での体制だとか、それから診療している患者数だとか、そういうのを全て公開してしまえばもうそれで済む話なのかなと。
成人では例えば肺がんのどうのといっても、なかなか数が多すぎて難しいと思うんですが、小児がんのみならず成人でも同じことで、希少がんに関してはそれぐらいのことをしてもいいと思うし、せざるを得ないだろうと思うし、すること自体難しくも何ともないだろうというふうに思います。
それから、2点目ですけれども、一番の問題は小児がんを疑うかどうかというところなんですよね。以前から馬上委員がおっしゃっている、なかなか脳腫瘍という診断がつかなかったと。小児脳腫瘍の診断ってかなり難しいんですね。私自身も今まで何回か見落としそうになったことがあります。実際見落としているのかもしれません。見落とした人に関しては分からないので。実際、例えば精神科に1年以上通院していたとか、あるいは不登校で1年あるいは2年ずっと精神科にかかっていたとか、そういう例がまれではない。
ですから、どうやって疑ってもらうかという、そこは医学教育といいますか、日々、これは我々がそういうことを啓蒙していく必要があると思うんですけれども。そういう活動を教育あるいは学会のほうでやっていくということは一つですね。
二つ目は、疑ってからどうするかですよね。疑った場合に、例えば手術しにいくということが多いわけですけれども。やはりそういうときにかなり専門的な疾患が多いので、一般的なといいますか、例えばこの間もありましたけれども、脳血管障害を扱っているような脳外科の病院で脳腫瘍の手術をしたがために大変な後遺症が残ってしまった。ですから、専門医というのは必ずしもないですけれども、経験のない、特に外科医ですね、が手を出してはいけないということを社会のコンセンサスにする必要があるんですね。それをどうしたらコンセンサスにできるのかということですけれども、とりあえずはまずは雰囲気づくりと言いますかね、キャンペーンとまでは言いませんが、何かそういったことをやっていけばいいのかなというふうに思います。
○檜山委員長
少し議論が1−1のほうに動いているので、もう一回少し整理して議論したいと思うんですが。
○森専門委員
どの施設で診療するかというところの手前の情報という部分ですけれども、実際に私たち国立成育医療研究センターで診療している際に、がんと診断された子供たちがうまく情報にアクセスできないという声を多数聞きました。多くの場合には成人の情報ばっかり載っている、それからサイト自体が信頼できるようなものなのかどうかが分からない。それから、病気についてはこっちを調べて、治療についてはあっちを調べて、支援についてはまた違うところを調べなければならない。また、非常に抽象的、あいまいな内容が強すぎるようなものが多い。そういった多くの声をいただきました。
成育委託研究事業という研究費で実は成育医療センターのホームページの中に小児がんの情報に関するものをつくったんですけれども。その際に患者、家族にインタビューを再度行いましたところ、今挙げたような問題点があって、子供のがんに特化したサイトが、情報拠点が欲しいというようなこと。それから、それがちゃんと信頼できる情報であることが分かるようにしてほしい。それから、網羅的、疾患についても治療についても支援についてもフォローについてもあちこち移動しなくても見れるようなものをつくってほしい。そういうような需要が多いように患者さんたちからは感じました。
ですので、今後新たな取組として情報発信ということを考えていく中では、やはり成人がんと小児がん、頻度も違いますし、病気も違いますし、それから求められる医療、支援、そういったものも大きく異なりますので、やはり子供に特化したものというものをつくることが求められているのではないかというふうに感じております。
○檜山委員長
馬上委員、どうぞ。
○馬上専門委員
患児家族はやはりインターネットに情報を求めるのがまず最初です。今インターネット上では小児がんの情報が非常に錯綜しておりまして、患児家族は素人ですので、正しい正確な情報に行き着けないという実情があります。信頼性が高くて、患児家族が分かりやすいソース、一元化されたソース、すぐ行き着けて、情報が全てそろっているところ、そういうところを私たちは非常に求めています。
○檜山委員長
ありがとうございました。
今のご意見だと、やはり患者様に非常に信頼性があって分かりやすい情報が一元化されたシステムがどうしても必要だということで大体ご意見いただけると思うんですけれども。
あと、堀部委員のほうから少し医者側にもやはりきちっとした情報をアップデートに送ったほうがいいんじゃないかというようなご意見があったと思うんですが。
○堀部専門委員
医者側にも情報というのは、要は専門でない人たちへの情報をいかに伝えるか。これは今原委員が言われたように、我々医療者側、特に専門の学会に集まっているところへはそれぞれ意識の高い人が集まってきますので、その人たちの情報共有というのは非常に容易ではあるんですが。実際日本における子供の医療、特に一次医療の現場というのは小児科医だけで成り立っていないという現実がありますので、そういう意味で子供を見る診療されている、治療されている現場の先生方にそれをきちっと情報を伝えるというのは、これはどちらかというと学会等我々の責任ではないかなというふうに感じています。
それから、ちょっと離れますけれども、今は患者さん及び病気を抱えている家族の方ですね、そういう子供への情報提供、その人たちは非常に自分の問題として情報を集めようということで意識が高いので、その人たちにどう情報提供するか、これはそういう意味では医療情報そのものは施設が、原委員が言われたように、開示をするということですごく分かりやすくはなるんですけれども。その情報のとりまとめが非常に錯綜していて分かりにくいということで一元化して欲しいということだと思うんですけれども。
それに当たっては、僕はやはりまずは国民に広くきちっと小児がんの情報が提供されるような仕組み、これが公がするとすれば、例えば地域ごとで小児救急とかいろいろな小児に限らずいろいろなものもそうなんですけれども、市民、地域、住民が医療、健康に関する問題をどこかにきちっとアクセスすれば、そこからそれらの専門の情報センターに通じる、そういう意味ではやはり地域の医療のサポート、保健医療業務を担当しているところがその辺の窓口になれる公の仕組みができれば、僕は比較的容易にできる問題ではないかなと。その辺が日本の場合になかなか公と民間との役割分担ができていないというところがあって。例えばホームページ、ネット等に入ると、もう何がどれが優先してアクセスすべき情報かということが見えないと。それがだけれども、日ごろの生活の中でそういうネットではなくて、もっと地域の行政とのコンタクトの中でそういう情報提供システムというのが、今救急なんかはみんなそうだと思うんですけれども、そういう仕組みの中に同じように入れば、もうこれはスムーズではないかなというふうに思ったのと。
一般の人に対しては、当然恐らく小児がんを扱っていない医療従事者もそうですけれども、積極的に情報収集しようという意思は働かないわけですよね。だから、ある意味自動的に入る仕組み、世の中こういうものだということがきちっと情報提供される形が必要ということで。私は30年前アメリカにいたときでも、やはり自動的にきちっとそういう情報が入ってくる、いろいろなマスメディアを通じて入ってくる仕組みがありましたので、やはり日本もそういった形になっていくのが望まれるなというふうに感じています。
○檜山委員長
天野委員、どうぞ。
○天野委員
先ほど原委員から一言あったかと思いますが、私もちょっと付け加えたいんですが。診療情報、施設ごとですね、が必要ではないかというご意見があったと思います。私もそれは患者の立場としても非常に重要だと思っています。もちろんそれは一般の患児さんやご家族の方に触れる際には誤解ないように、ローデータではなくいわゆる難治例についての統計的な処理とかそういった誤解のないような情報公開というのは必要ですが、質の維持と担保という意味においても、これは施設ごとの診療情報と公開というのは非常に重要だと思いますし。もし今日そういった例えば小児がんの拠点病院についての議論というものがもし入るのであれば、それは拠点病院の要件の一つに加えてもいいのではないかというふうに私個人は考えています。
○檜山委員長
原委員、どうぞ。
○原専門委員
結局、先ほど馬上委員がおっしゃったように、情報についてなんですが、各施設ごとの診療情報これはこれとして、例えば公的なところから出ているいろいろな例えば小児がんについてのいろいろな説明等々ありますけれども。結局それでは患者さんたちはとても満足ができていないということだろうと思うんですね。だから、結局患者ニーズとこちらが提供しているものがマッチしていない。ですから、あれだけでは全然足りなくて、実際どこでどう行ってどうやったらいいんだということが書いてないので、近くのとかそういう抽象的なことしか書いてない。だから、いろいろなところをネットサーフィンされてぐちゃぐちゃになっていくんだと。ですから、もっと提供するものとしては、もっとやはり詳しい情報ですよね、それがやはり必要になってきます。
それからあと、セカンドオピニオンのところにも出てはくるんですけれども、今アメリカの話なんかもちょっと出ましたけれども、米国なんかだったらインターネットでのセカンドオピニオンとかそういうのも、あれは無料ではなくて有料ではありますが、アメリカの場合ですね。そういったことなんかも一つの手段としては出てくるのかなというふうに思います。
○檜山委員長
ありがとうございます。ちょっと問題点が少し1−1、1−2辺りまで動いているので、1−0から少し整理させていただいて。今堀部委員から言われたことというのは、小児がんだけではなくて、小児医療全体の問題というふうにも受け取れるんだと思うんですね。だから、小児医療に対してきちっとした情報発信をするシステムが日本にはまだ十分ないのではないかというようなご意見というふうに考えてよろしいですか。
この辺の母子保健課のほうは何かそういう情報発信をするシステムとかは何かお考えとか、現状について何かありませんでしょうか。
○母子保健課長
母子保健課です。医療に関する情報ということになりますでしょうか。今ですと、先ほど成育医療センターのほうからお話ございましたような形でやっていただいているということですが。小児慢性特定疾患の中では登録情報について公開しているという面はございますが、医療に関する情報については現状なっていないというふうに思っています。
○檜山委員長
ですから、その辺りの充実が小児医療としては必要だというご意見でよろしいでしょうか。
ほかにこの現在の情報発信について何かご意見なければ、次の、一部ご意見が出たんですけれども、いわゆる小児がんを疑う体制という辺りで、症状が出てから診断されるまでの間の問題点についてもう一度ディスカッションをお願いできたらと思いますけれども。
どうぞ、馬上委員。
○馬上専門委員
患児家族にとっては、小児がんは年齢や発症部位、悪性度などで非常に治療法が多岐にわたりまして、特に難治性のがんなどは治療が様々に行われている現状があります。そういった患児家族にとって、診断がついたときに様々な治療法を短期間で理解する、そして選択を迫られる、そして晩期合併症なども納得した上で苦渋の決断をしなくてはならないことがあります。非常に心理的な負担が大きく、できれば心のケアを伴った十分な治療説明が望まれています。標準治療がないということもあるんですけれども、そういった標準治療の確立も望まれています。
そのときに、医師だけでなく、先ほど増子先生がおっしゃっていたんですけれども、いろいろな専門スタッフによる家族と患児そのものに対しての治療説明というものが大切だと思っております。
あともう1点は、治らない病気であるものをぜひ治る病気にしていただきたいので、もしその拠点化をすることになりましたら、そこに症例数を集めて臨床試験による治療、臨床試験をたくさんしていただいて、治療の選択肢を多くしていただくということも望まれています。
○檜山委員長
今のご意見は、ちょっと1−2という辺りに関わると思うので、また少し後討論させてください。
とりあえず今小児がんを疑う体制と、それから今牧本委員からありましたように、ある程度専門施設に送るようなシステムづくりが必要ではないかというようなところのご意見だと思うんですが。これに対して何かご意見、あるいはもう少しこうしたらいいだろうというようなご意見がございますか。
今天野委員から出ている、いわゆる連携パスというような、いわゆる成人がんで行われているような、症状が出てから診断されるまでのパスというのが一体小児がんで可能なのかどうかというところも少しご意見をいただきたいなと思っているんですが。いわゆる一般症状として発熱があったり、不明の発熱が少し続いたり、貧血が出てきたりというようなところで、いつ小児がんを疑うのかというようなところもあると思うんですね。大人ではいわゆる連携パスというような形で診断するというようなシステムができ上がりつつありますが。実際天野委員のご指摘のような連携パスというのは本当に小児がんで可能なのかどうかというようなところをもうちょっとご意見をいただいてよろしいでしょうか。
原委員。
○原専門委員
ちょっと余りにも数が少なすぎるので、連携パスというのは恐らく機能しないと思うんですね。恐らく引き出しの奥深くに入ってしまって出てこないだろうと。
例えば一般通いの先生方でいうと、小児がんの患者さんに遭遇するのは一生の間で一回あるかないかというレベルの話なんですね。大体人口が30万人クラスの市立病院で大体年間二人、三人、四人ですね。白血病なんかの場合は診断が全然困難ではありませんし、手遅れになるということはほとんどないんですが、結局やはり手遅れになる、手遅れというと語弊がありますが、診断に問題が生じるのは、疑うのにですね、やはり脳腫瘍だろうと。それ以外のものはみんなお腹の腫瘍とかが多いですので、これは普段からきちんとした診察をしておれば早期発見ができるはずなんです。早期とは言いませんが、通常のタイミングで診断ができるはずなんですけれども。実際は腹部の診察をしない小児科医というのも結構多くて、これはちょっと別問題ではありますけれども。という意味で、ちょっとパスは難しいかなというふうに思いますね。毎月一人、二人そういう患者さんがおられればパスも成立するかとは思うんですが。
○檜山委員長
馬上委員、どうぞ。
○馬上専門委員
その症状が長引いて何かおかしいと思ったときに、全身を検査して見つけ出すというようなことは普通は行われないということなんですね。脳腫瘍の場合は頭なんですけれども、頭のMRとかCTというのを撮ることが思い浮かばない、CTやMRIを撮るとすぐ分かるんですけれども、それを撮らないので、いつまでも眼科とか耳鼻咽喉科をずっと回ることになるので。そういう徹底した検査というのをどこかでやっていただければと思います。
○檜山委員長
牧本委員。
○牧本専門委員
多分一般のクリニックとかであればやはりそのまま、じゃあCT撮りましょうとできないですよね、つまりCTがないので。より高次病院に紹介をすると。高次病院に行ったときに、多分元に戻っちゃうんですね。子供がそんな重病するのはまれであるからもうちょっと様子を見ましょうと、そうやって結局引き伸ばし。恐らく医者の心理、一般医の心理、私も若いとき一般医でしたから、としては本当にやはり元気な子供がそういう重病するということは非常にまれであるというのがまず1点。
頭痛とか吐き気とかというのはやはり頻度からするとほかの理由のほうがよほど多いわけですから、僕らはそういう訓練を受けて、頻度からまずナンバー1が感染症でとかそういうふうな患児でカンベ診断行っていって、検査をできるだけセレクトするように頭を働かせてしまうので、それが専門家というものなので。そこをちょっと経験というものがあればそれを打ち破ることができるんですけれども、そこのところをどう打ち破るかというところで、天野委員は連携パスという話を出してこられたんですが。やはり地域でそれはつくらないといけないし、地域にそれだけの専門家がいらっしゃるのかという話になると、その方法が難しいということだろうと思うんですね。
だから、今なぜ撮らないのかというかなぜそうなるのかという話を説明したわけなんですけれども。そうなると、本当に腫瘍を疑って撮るという、もし腫瘍じゃなかったら腫瘍じゃなかった、よかったねと言ってあげられるような施設が幾つあるかという問題になってきて、それはもうほとんどがんを専門と自負しているような人が言わないといけないと思うし、そういう人の役割だと思うんですね。そうなるとがん専門病院あるいは地域の小児医療センター、あるいはもう地域のコア病院であってもそういう専門を自負する先生がいらっしゃるところというところにリーチするしかなくなるので。そこの閾値をどこまで低くするかという議論になってきます。
一方、低くしすぎると何でもかんでも頭のCTということになって、医療のリソースの無駄使いになるので。その辺は、もちろん議論で決めることでは絶対ないんですけれども、一つは小児科全体の、一次医療圏の先生も含めた人への教育、あるいは情報の公開であって、それは恐らく患者さんへの情報公開と同じようなレベルで行わないといけないんだろうと思いますし、そこはベースとして。
もう一つはやはり高次病院がそこの二次医療圏まで下りてくるかということを私さっき申し上げたんですけれども。例えば、アメリカの私も行ってましたが、MDアンダーソンがんセンターなんかではもうコールセンターがあるんですね、小児がんの。だから、小児がんかもしれない、私の子供小児がんかもしれませんと、もう熱が長引いていますだけでも構わないんですね、コールセンターにコールを送れればそういう相談にのっていただける。そこまで言うんだったらもうCTを撮りましょうかとCTを撮る。ただ、じゃあ、変な話、国立がんセンターでそれをやったら今どうなるかというと、やはり特定機能病院という問題があって、加算が取られちゃうんですね。もしそれで、お金の問題ではないとおっしゃるかもしれないけれども、普通の病院以上に敷居が高い病院というのは何個か存在していて、恐らく成育医療センターなんかでも飛び込みで行ったら同じようなことが起こるんじゃないかと思いますが。
だから、その医療体制自体に例外をつくるべきではないかということをさっきから僕は申し上げていて。それは二つしかないんです。地域連携の中でうまく底上げをして対処するか、高次病院と言われて高く止まっているのではなくて、高次病院でそういう疑い例まで受け入れるような体制をつくっていくか、どちらか、両方すると思うんですが、両方しないと多分そういう問題は解決していかないと思うので。
だから、今の現状ではちょっとそこの求められるところは無理で、対策はその二つと思っています。
○檜山委員長
どうぞ、原委員。
○原専門委員
先ほども申し上げたように、疑うところまでいかないんですよね。だから、疑えば頭を調べるわけです。それで、本当に疑えば、脳腫瘍を診断しようと思うとCTでは駄目で、MRIを撮らないといけない。子供でMRIを撮るというのはかなりの、本人も大変だし、我々も重労働なんですね。三つの子がじっと20分してくれるわけでもなく、ということでかなりハードルは高いんですが。ただ、本当に疑えばそれは撮ります。もっと疑えば、造影MRIを撮るんですけれども。
そういう今まで脳腫瘍の診断が非常に難しいという反省から、ちょっとこれは自院の症例ですけれども、症状とか、それから診断までの時間とか、今そんなのを全部調べているんですけれども。やはりここは地道に、プライマリーな小児科医を対象に、どういう症状があったときに脳腫瘍を疑うのかということをしっかり言っていかざるを得ないと思うんですね。これは、例えば患者さんの団体なんかからも、こういう症状があったときはどうと、不登校なんかもそうなんですけれどもね、脳腫瘍を一回疑ってみましょうみたいな、なんかやはりキャンペーン的なことを、それをだれがやるかという問題は別にして、NPO法人がやるのか、あるいは国ベースでできるのかちょっと分かりませんが、それをしないことにはちょっとどうしようもないのかなというふうに思います。要するに一般の人たち、一般のお医者さんたちが疑わないことには話が始まらないので。
○檜山委員長
天野委員。
○天野委員
一次医療のところで止まってしまって、そもそも疑いに至らず、ぐるぐるたらい回しにされてしまって、高次医療のところに上がってこないということは多分問題に尽きると思うんですけれども。それで一つパスということを提案させていただきましたが、現状それは地域ごとで難しいという先ほどご指摘があったと思います。今、啓発が非常に重要だということがあったと思いますが、例えば小児がんに関する医療者向けの啓発資料というものを作成していただいて、医師会などを通じて小児の診療科へ配布していただくと。そういった疑い例とかもしくはそういった疑われるようなものがあった際に、例えば医療者のほうで、全国1カ所でもいいと思うんですけれども、そういったコンサルテーションに対応できるような仕組みというのは、そういったものをつくるということは現実的には可能なんでしょうか。ちょっと確認したいんですけれども。
○原専門委員
いったん疑ってしまえば、あとはそんなに難しくはないと思うんですね。三次医療圏といいますか、地域によって二次医療圏だったり三次医療圏だったり様々でしょうけれども、そこへそういう患者さんを送って、疑いを持って見てもらえば、それは診断に至るのはさほど難しくはないだろうとは思いますが。
○檜山委員長
馬上委員、それから堀部委員、お願いします。
○馬上専門委員
疑うということがキーポイントになっているみたいなんですけれども。そうしますと、知識があるということなので、医学部とか看護部のときに小児がんの症状の知識を最初から入れていただくとか、そういうことはあれなんでしょうか。
○原専門委員
結局、それは先ほど牧本委員がおっしゃっていましたけれども、例えば不登校なんていうのがあった場合に、例えば中学生の不登校で、実際その中で脳腫瘍の人がどれだけいるかと、極めてまれなんですよね。例えば吐き気だとかそういうものも症状としては一般的な病気の中でいうと、そういう患者さんたちが1,000人に一人か、あるいはもっと低い。だから、例えば教育ではいろいろなことをもちろん習ってはいますけれども、結局やはり頻度の高いものから順番に見ていくわけですよね。最後まできてまだ症状も続いていて、あとこれしかないみたいな話になってくるので。
ですから、知識としてはみんな知ってるんですよ。脳腫瘍の症状は頭痛、嘔吐だと、知ってるんだけれども、そういう頻度の問題なんですね。だから、先ほども申し上げたように、通常の開業医の先生方は恐らく一生に一回会うか会わないか。例えば、つい先月も見たということであれば、同じような症状の患者さんが来たらそこからまずピンとくると思うんです。だから、そこに難しさがあって。それを解決するには、先ほど申し上げたように、啓発、啓蒙しかないのかなと個人的には思うんですけれども。
○堀部専門委員
小児がんに関して拠点病院、恐らくみんな必要だというふうには認識されると思うんですが。当然この分野もやはりその要件になってくるのではないかなと。先ほど天野委員も言われましたけれども、その連携というか地域の中できちっと小児がんに関しての拠点病院がどこだということが地域住民みんなに分かる状況になっていれば、お互い声をかけられる、医療者側もあそこに相談すればという窓口がはっきりしていれば、そこのギャップはかなり狭まるのではないかなと。
つまり、それは今のがん拠点病院に与えられているように、相談支援センターをつくって、きちっと情報発信をする義務を負わせる。全部の拠点病院、拠点病院の数にもよるかもしれませんけれども、ある程度頻度からすれば、広域の中核になる地域ごとのセンターがあって、そこがきちっと相談窓口になれる、相談窓口になるということは、常に逆に情報も発信もする、地域の医療者に対しても住民に対してもするという仕組みがあれば、何らか異変が起きたときにスッとアクセスできるわけです。何でも救急でもいろいろなものでもそうですけれども、ハッと思ったときにピンと浮かぶかどうかという、医療者側も。今は医療者側はそれが全部やはり学閥系列なんですね。相談するというと、今まで一緒に釜の飯を食った医師の流れでもって相談ルートになっていくのであって、八十幾つも大学がある状況の中で、必ずしも専門家がいないところでもそこへいってそこで止まってしまうと。
今回例えばこれ小児がんの拠点病院が大学系列になったときに、そこを乗り越えられるかというと、地域の中でのきちっと拠点病院なんだということを相互にやはり認識できるような形で整備していかないと。日本のやはり医療の、これは医師の供給体制がそういうところに依存しているがゆえに、そこをやはり脱却するというのはかなりハードルは高いと思うんですけれども、特に都会部分だと。地方へ行けば確かに1県1大学ですけれども、これは今度は少子化になると、県単位では拠点病院というレベルにならなくなる。そうなれば大きいもっと地域ぐるみの中でそれは考えなくちゃいけない。そこの整備をすれば、医療者側との情報のやりとり、地域住民への情報発信のルートも確立するのではないかなと。
確かに日本全体でセンターは必要だと思いますけれども、やはりもっと利用現場に近いところではそこまでのアクセスという形にはならないので、実際開業医さんレベルからのアクセスもしやすい、当然患者さんがそこへアクセスし得るような範囲の中での設定が必要ではないかなというふうに思いますけれども。
○檜山委員長
拠点病院の話まで出ましたけれども、拠点をどういうふうにするかということはまた十分議論を煮詰めないといけないとは思うんですが。今のお話だと、やはりきちっとした情報発信をするということと、逆に牧本委員が言われるように、そういう症例をきちっと受け入れる体制も必要だという、その二つだと思うんですね。ですから、情報をきちっと開示して、症状とか発症年齢とかそういうことのデータをきちっと開示して、啓発するということも必要ですし。それに対して疑い症例が出るとか、患者側からのコールに対してもきちっと対応できる、そういう体制が地域ごとに必要だということで、大体よろしいですか。
馬上委員、どうぞ。
○馬上専門委員
ぜひ正確で精度の高い情報というのをお願いしたいんですね。やはり治療実績とか経験とか、そういったものを開示していただきたいと思います。
○檜山委員長
では、森委員先に、その後牧本委員。
○森専門委員
私も堀部委員の考えと同じでありまして、原委員、堀部委員。プライマリーケアのお医者さんたちに気づいていただく、疑っていただく、これに関してはやはり啓発活動しかないように思っております。ただ一方で、これを機会に小児がん診療拠点施設ということに日が当たる、よく分かる、地域のクリニックの先生方も知っている、市民も知っているような状態になれば、容易に相談ができるような体制ができるかと思います。
牧本委員がおっしゃったように、受入れはなかなか難しい問題なんですが、例えば当施設では疑いの状態であれば一般小児科にまず来ていただいて、その段階から一緒に動くような形で、変な言い方ですけれども、そうであれば私たちのところにそのまま引き継ぐ、そうでなければ別の部門で対応するというふうな。施設における工夫でいろいろと現実的にはできるんじゃないかと思います。
ただ一方で、逆に疑いを強く持ちすぎるとものすごい件数疑いが来て、疑いを持たれた患者さん、ご家族というのはものすごく不安な状況ですので、そこに対応するためにはものすごいエネルギーと時間を要することがあります。ですので、そういう体制をつくる際には、やはり人的な支援等が必要なのかもしれないというふうに思っております。
○檜山委員長
牧本委員。
○牧本専門委員
私の個人の意見の資料の中、資料4の18ページに私がずっと申し上げているようなことが書いてあるんですが。一つ、全然申し上げてないことが、やはり小児科医の能力というものですね、総合小児科医ですよ、小児がんの医者ではなくて。あらゆる、僕らが小児科ストレート研修をしているころは大学病院に根ざした研修でしたけれども、あらゆる難病を症例を経験していくんですね。一方で、今の初期研修生度ですと、やはり初期研修のうちに小児科を学ぶ期間というのは長くても多分半年、特殊な病院では1年とかあると思うんですが。その中でとても最初の2年間でがんを見られる機会はほとんどないと思うんですね。
一方で、米国だと最初の3年間はもう1年目から小児科系と内科系に内科系が分かれてしまう。つまり、成人を見るか小児を見るかを決めてしまうので。小児科の中で総合研修の中でがんセンターに行ったり。小児がんを学ぶ期間が必ず一定期間あるんですね。これはもちろん病院とかのシステムの違いの問題がありますけれども、やはり小児医療というのは、小児科の専門医というのは短期間であってもそういう経験を積めるような、システムの中で教育されるべきじゃないかなと思うので、今は2年行った後、後期研修で小児科にまた行ってしまうので、すごく時間がかかってしまうためにまた専門医が遠のくという状況にありますから。
僕はここでもうちょっと各国の教育状況というものを見て、厚生労働省から外れていきますけれども、文部科学省のほうにも検討いただいたほうがいいんじゃないかなと思ったりはします。
○檜山委員長
馬上委員、どうぞ。
○馬上専門委員
子供の病死原因第1位ですので、小児がんは、ぜひそういうふうにしていただきたいと思います。
○檜山委員長
それでは、この1−1に関しては大体ご意見まとまったと思うので。
次の、一応腫瘍があるだろうということで、正確かつ迅速な診断体制というところで少しご意見をいただければと思うんですが。少し意見も出ているんですけれども、この辺りは特にないですか。非常に診断する、いわゆるクオリティの問題とか、診断医が少ないとかというところが大きな問題だと思うんですけれども。
牧本委員、どうぞ。
○牧本専門委員
ちょっとしゃべりすぎかもしれませんけれども。私の先ほどのページの一番下に書いてあるんですけれども、画像診断とかあるいは骨髄の生検だとか外科手術による生検査だとか、いろいろなプロセスが本当に患者さんや家族にも負担がかかるプロセスがずっと続いていくんですね、診断に対してですね。もちろん多くの患者さんは鎮静といって麻酔のようなものが必要になってきたりして。
あともう一つは、それを専門としているがんをよく見ている施設ではそういうシステムがある程度整っていて、優先権があったり、つまり進行が速いので早く撮ってくださいといえば早く画像を撮ってくれたりするんですが。それ以外の施設では、やはり二次医療圏の標準的なところではMRIを即日撮るなんていうことがすごくしにくいところがあるんじゃないかと思うんですね。だから、もちろん救急医療をやっているところはその限りではないかなと思うんですけれども、中途半端に救急医療でもない、やや慢性型のそういう二次医療圏のところではなかなかパッパパッパと対応することができていかないんじゃないかなと思うので。それがまた診断の遅れにちょっとずつつながっていっているという事例は、実は我々のところに来られる患者さんでも、もうちょっと早くできなかったのかなという。つまり、疑ってから確定診断までの間が異様に長いという症例はよく経験しますので。その辺のところが、さっきの私が専門施設が門戸を開放したほうがいいんじゃないかと言った理由なんですね。その辺もちょっと問題視していただきたいかなと思います。
○檜山委員長
原委員、どうぞ
○原専門委員
結局は私も自分のところに書いたんですが、診断から初期治療までの説明、治療選択の在り方、治療開始前に検討される事項、こういうのはガイドラインで定めてしまえばもう決まりかなと。例えば画像は1日、2日以内に撮るとか、あるいは病理診断もどうとか、そういうことをガイドラインとして出して、それを遵守するというのが拠点施設の責務というふうにすればいいのかなと思います。
○檜山委員長
馬上委員、どうぞ。
○馬上専門委員
病理診断についてなんですけれども、希少の小児がんについては非常に診断が二転三転するということがよくありまして、そういう病理の研究についてはどのような状態になっているのかちょっと教えていただきたいんですが。
○原専門委員
これは研究としてなんですけれども、ようやく施設が病理検体を中央病理診断に出してというそういうルートですね、それをつくりました。成育医療センターのほうで病理検体を全部一括して受け取って、そこで成育で診断する場合もありますし、例えば脳腫瘍なんかでしたら群馬のほうへ送ってやるとか、それなりの専門性の高い病理が中央診断をして、その結果を返すというシステムを今度立ち上げたので、それにさえ乗せていただければ、問題は解決するのかなと。
ただ、これは研究としてやっていますので、研究費が担保されないと継続は難しくなるという、そういう問題はありますが。今はそこまでとりあえずきたという状況です。
○檜山委員長
どうぞ、森委員。
○森専門委員
この診断という観点では、画像検査、病理診断、病理診断をするために材料を取る生検手術ということはバラバラではないんですね。全部をコーディネイトしてやっていくことが最も効率的で一番速いスピードで処理ができる。例えば画像診断でどういう病気を疑うからどういう解析が必要で、そのための必要なサンプルがちゃんと取れたかどうか、取りきれてなければもう少したくさん検体を取る必要がある、そういうことを随時判断しながらやっていくことが本来一番効率的だと思います。なかなか拠点施設という中にそれだけのリソースをそろえることは容易ではないと思うんですが、どこかに書いたんですが、拠点施設の役割ということをある程度はっきり決めていって、むしろ中央診断のネットワークも大事なんですけれども、やはり中央診断に標本を送りました、返ってきました、それだけでも日数のロスもありますし、必要な染色がされていない、再度対応が必要だ、それで時間がどんどん流れていくことになります。やはりがんを診断するチーム、放射線科医、病理医、腫瘍医、外科医、外科系医のチームが機能させることが拠点施設の中で特に診断の中核を担う施設として設定していくことが、いろいろな患者さんの移動の問題がございますのでいろいろな制約はあるかと思いますけれども、理想論を述べるとすれば、そういうことになってくるんじゃないかと思います。
それから、保険診療の問題は、私も書いたんですが、非常に大きくて。医学論文、それから欧米の教科書ではスタンダードな診断主義に含まれているような方法でも保険で査定されてしまう等の事情が出てまいりますので、保険収載のアップデートということに関してもご検討いただくことが必要ではないかと思っております。
○檜山委員長
今のご意見は、やはりきちっとしたチームとして画像から全て遺伝子診断も含めてできる施設で行うべきだというご意見。
○森専門委員
そこに伴ういろいろな制約が出てくると思いますので容易ではありませんが、あくまで理想論としては、患者さんにとって一番少ない侵襲、負担で一番短い期間でというふうに考えるとすれば、そのような方法論が考えられるのではないかと思います。
○檜山委員長
ご意見ございますか。確かに現実問題としては病理をきちっと診断できる医師が非常に少ないとか、画像を見れる、小児のがんに限って画像診断できる医者が非常に少ないという意味で、中央診断システムというのはある意味では必要ですけれども、今森委員が言われるように、きちっと診療体制としては一つの施設にそういうチームがあって、診断のプロセスからきちっとかかわっていくというシステムがぜひ必要だというご意見でよろしいですか。
ほかに特になければ。
どうぞ、堀部委員。
○堀部専門委員
診断の問題は今のまとめでいいと思うんですけれども、やはり日本、日本だけでなく多分国際的になってくると思うんですけれども。患者さんの数が少ないということで、診断医も経験が少ないわけですね。専門の病理の人が診断したら正しいかというと、血液病理の分野にしても、血液の病理の専門している人が8人集まる、10人集まると意見は割れるもんなんですね。一致率はせいぜい6割ぐらいです。同じ診断にならないんですよ、専門家同士でも。そういう現実があって。多分血液病理以外どの分野でも非常にその辺のところはまだきちっと確立していない分野でもあるんですね。
だから、そういう意味では、そういう疾患群だという理解の下に、やはり専門家の人たちが、つまり専門家であっても一人の診断ではなく、きちっと専門家の集団が集まって診断をするというシステムをつくっておかないと非常に危険だなと。
そういう意味では、小児がんの血液病理にしてもケイがん病理にしても、先ほど原委員が言われたように、研究ベースでそういった仕組みをつくろうということが行われていて、それが全ての小児がんの診断ベースのところに還元されるようなふうになってくるのが望ましいと思っていますし、そのような努力はしたいと思いますけれども。
やはり患者さん側からすると二転三転するということに関して、これは確かに大きな診断違いのところでも起こり得るかもしれないんですけれども、実際の医学的に見て非常に難しいレベルで二転三転するということも現実にございますので、やはりその辺の情報共有もしながら、かつそれを踏まえた上の診断システムという意味では、日本全体の中央診断システム及び国際的な診断システムというものが必要になってくるというふうに思います。
○檜山委員長
小俣委員。その後森委員。
○小俣専門委員
今診断体制をどうするかというお話になっておりますけれども。多分発症するかどうか疑いがという時点から本人や家族がずっと不安に思っているはずですよね。その情報センター、もしコールセンターができるのであればまずそこに相談をするということがありますが。診断が確定するまでもずっと不安があり、継続して支援が必要だと考えます。そうすると、継続して、最初から今どういう状況でということを確認したり、相談をしたり、それから不安を聞いてもらえるというような場所や人が必要ではないかなというふうに、ちょっと今別の視点なんですけれども、そのように考えます。
○檜山委員長
非常に貴重なご指摘だと思うんですけれども。
では、森委員。
○森専門委員
中央診断、コンセンサス診断には全く反対ではなくて、むしろ重要です。あと、今堀部委員の発言は一般の方に誤解されるといけないので申し上げますが。6割程度しか一致しないというのは、全く別の病気になってしまうということではなくて、あくまで例えば医学、科学としても二つの疾患の境界線が不明瞭なような病気もあるわけです。それをAというかBというか。そもそもそのAとBの区別も科学的にもはっきりしていないようなものもあるわけです。そこを含めてそのぐらいということで。決して病理によって6割しか診断が一致しないなんていうことはないというふうに。ごく一部重大な不一致は生じ得ますけれども、6割という数字はそういうレベルということでよろしいですか。
○堀部専門委員
すみません、はい、そのとおりです。
○檜山委員長
ありがとうございます。
どうぞ、馬上委員。
○馬上専門委員
そのようにきちんと患児家族に、治療法については変わりがない、けれども病理的には非常に難しいものがあるということを丁寧に説明していただければいいんですけれども、患児家族は聞いたところ、あ、病理が違ってしまったということで、小俣委員が言うように、診断の直後からものすごいストレスを感じているものですから、非常にあたふたとしてしまうわけですね。やはり説明というのをチームでしていただくということが重要であると思います。
○檜山委員長
天野委員、どうぞ。
○天野委員
先ほども病理医の話が出ましたが、成人のほうでもご承知のとおり病理医がそもそもいないという状態があって、血液の成人の病理医も全くいないような状態なんですが。平成23年度予算案の中でがん対策の中で拠点病院に対して病理医の充実を求めるような内容が入っていたと思いますので、これは平成23年度には盛り込めないと思うんですが、がん対策推進基本計画、もしくは平成24年度予算のほうでぜひ小児の病理医、非常に数えるほどしかいらっしゃらないとは思うんですが、その充実ということについてもぜひ項目として入れていただきたいと思います。
○檜山委員長
ありがとうございます。
大体皆さんのご意見は同じ方向を向いていると思います。やはり病理のデータも診療情報もきちっと開示するということと、データとして保存していくということもぜひ必要なことで、それでクオリティをどんどん担保すべきだと思いますが。
今ちょっと馬上委員の辺りは1−2のほうの項目に移っていますので、そちらのほうに移らせていただいて、そこで一応心理面も含めた社会的支援というふうな項目で少しまとめさせていただければなと思っております。一回診断がついてから初期治療に入るまでの問題点について少し議論していただければと思います。
馬上委員、どうぞ。
○馬上専門委員
先ほども先走って申し上げてしまったんですが、結局標準治療がない難治性のがんとかそういった希少がんについては、治療法が様々なので、まず最初にそれを理解することが患児家族にとっては困難ということがあります。
そして、その治療法を理解したとしても、それを選択する、晩期合併症のことなども納得して選択するというのが非常に難しいということがあります。標準治療というところが患児家族に最初本当に理解できないところがあるんですけれども。私もまだちゃんと理解していないので、ちょっとそこのところをよく教えていただきたいんですけれども。
○檜山委員長
その辺のご説明を、造血器腫瘍と固形腫瘍とニュアンスが少し違うのかもしれないので、堀部委員と原委員、少しご説明していただいていいですか、今の標準治療、いわゆる恐らく臨床試験の境界の話だと思うんですが。小児がんにおけるそういういわゆる成人がんと少し現状が違うので、その辺りをちょっと分かりやすく説明していただいていいですか。
○堀部専門委員
標準治療といわれるものは、血液、小児の白血病、リンパ腫におきましては、欧米の臨床試験を基にして比較をしながらよりよい治療法が選択をされて、それがひな型となって日本の患者さんに適用できる、日本の医療に合った形で少しモディファイされた形で各研究グループが行ってきたものが標準治療となっているんですね。
それは全て科学的根拠というか、比較試験でもってよりすぐれた治療法と。だけれども、標準治療法はあくまでそういう結果が出たその時点における標準治療ということであって、常にやはり改善の余地を残されたものであるということも確かなので。そういう意味で、議論になっているように、常に研究的な治療というのが、それに対してよりよくするための試験治療が行われて、そして比較をしていくと。研究グループに、子供のがんの場合には、特に造血器腫瘍の人は多くの人が研究治療に参加をして実際治療を受けてみえるので、その受けられている治療が標準治療なのか試験治療なのかということになると、多くの人がその試験に参加をされているということは試験の治療を受けられていると。それはだけれども、それまでに情報が得られて確立されている治療から一歩よくしようということでいろいろ工夫をされた治療。だけれども、それが本当にいい成果になるのか、もしくは下回る成果になり得るのか。だけれども、何らかの専門の人たちが集まって改善をしようという形で行われていますので。
残念ながらそれが日本全体であちこちのそういう研究グループ活動があると、それぞれまちまちの考え方でやっていたために、標準治療を適用する基準がそれぞれ違っていたりだとか、同じような薬は使うんだけれども方法が全然違っていたりとか、そういうことで標準治療はあくまでその医療施設にとっての積み上げられた根拠が標準治療ということで。
現在の段階では、血液に関してはリンパ性白血病を除いて全て一応全国で共通の試験治療が行い得る状況になっていますので、すなわちきちっと全国でディスカッションして標準治療というものの考え方を統一して進めていますので、リンパ性白血病も間もなくそれが今できる状況になっていますので、日本全体で今の根拠に基づいた治療法がこういうものだというひな型ができて、それを乗り越えるための試験治療を皆さんに提示をしていくという段階にあるかなというふうに思いますが。
○原専門委員
今堀部委員のおっしゃったことと同じなんですが、固形がんのほうもですね。簡単に言うと、標準治療というのは要するにガイドライン治療ということですね。だから、コンセンサスの得られた、こうやって治療するのが当たり前ですよと、普通ですよと、それを標準治療というわけですが。ほかの言葉を使えばガイドライン治療、コンセンサス治療と言ってもいいかと思います。
日本のガイドラインはこうなんだよと言いたいところなんですが、小児固形がんなんていうのは非常に数が少ないので、大体は世界的な標準が日本の標準にそのまま準用しているというのが実情ですね。だから、普通はこうするんだよという治療が標準治療といって、そういう言葉を使っているということですね。だから、それ以外のものは全て試験的な治療ということになります。
小児がんでややこしいのは、標準的な、あるいはガイドライン的な治療法が何かという、それがはっきりしないケースも非常に多い。だから、まれな病気の場合それがない。それから、1回再発してくるとそれがない。1回目あっても2回目再発するとますますないと。成人であれば、例えば五大がんであれば、少なくとも1回再発した後もセカンドラインの標準はこうだ、2回再発したらこうなんだよというそういうのがほとんど決まっているんですけれども、小児はそういうのが全くないので。そうなると、各施設での担当医が知恵を振り絞っていろいろなことを考えてやっていくと。ですから、そこにかなりの個人差といいますかそういうものが出てきます。
○檜山委員長
よろしいですか。
○馬上専門委員
患児家族が感じていたのはまさにそこのところで、いろいろな施設によって治療法、同じ疾病であろうと言われているのにも関わらず違う治療が行われているので、そこのところをもしできれば最善の治療というものを決めていただいてしていただきたいというのが願いです。
○檜山委員長
牧本委員、どうぞ。
○牧本専門委員
最善の治療とおっしゃったのと、標準の治療が必ずしも最善の治療ではないというのががんの一般論なんですね。やはり標準治療というのは多数を対象として、しかもある程度状態のいい患者さんを対象として行われた臨床試験結果に基づいて定められるもので、原先生がガイドラインとおっしゃったのは、そういう幾つものそういうデータに基づいていろいろなバイヤスとかを排除した結果、こういうものがいいだろう、例えば手術をして術後化学療法4コースするのがいいだろうとか、この薬は何を含まないといけないとか、そういう割と粗いところで決める線がガイドラインなんですね。
ただ、ガイドラインのとおりやったら必ずしも最善かというと、やはり固形がんの場合は例えば部位が微妙に異なる部位に出ていたり、あるいはある人は簡単に取れたけれども、ある人は取れないとか、脳腫瘍も同じだと思うんですけれども。あるいは、やはり進行しすぎていて手術が不能であるとかいうことで、必ずしも標準治療の道筋に乗れない患者さんもたくさんいらっしゃるので、ガイドラインとか標準治療というのはある程度幅を持たせていくということがもう前提になってくるので、そこの幅をここの患者さんに最適化するのは医師の能力、専門医の能力にほかならないと思っています。
ですから、何か紙ベースでポンと決めたから、それで全部がうまくいくという考えではもちろんないと、もちろんお分かりだと思うんですけれども。そこの個人の医師のベースをどこまで上げていくかということが多分課題なんだろうと思っています。
○檜山委員長
馬上委員、どうぞ。
○馬上専門委員
分かりました。研究ということが今よく分かったんですけれども。そうしましたら、その拠点化をすることによって症例数を集めることによって、その研究は格段と進むことになるんでしょうか。
○牧本専門委員
基本的には臨床試験を効率的に、あるいはバイヤスとか、つまり施設間格差という言葉もありますから、あるいは手術主義による違いとか、そういうようなものを全部排除するためには、当然1施設に全部集めればそれは当然バイヤスのない結果が出てくるだろうと思われますが。実際にはそれは無理なので、小児がんはアメリカでも200施設以上の施設が集まって多施設共同臨床試験をしているという状況です。
すごくレベルの高い施設とレベルの低い施設が一緒にやっていると、結局何をやっているのか、どのレベルのものを見ているのか全く分からなくなってしまう、ごちゃ混ぜのデータになってしまいますので、やはりある程度レベルの高い施設に患者さんを集合させて行って、日本の専門医のレベルとはこれぐらいというふうなものを出すのが正解だとは思っていますが、今そこまではいっていないので。
馬上さんおっしゃるように、ある程度の拠点化、そして拠点病院の中でしっかり臨床試験のデータを出していって、それが日本のデータですということが僕は理想的だと思っていますが、この辺は本当に価値観の相違によっていろいろ賛否両論があるところです。
○檜山委員長
どうぞ、天野委員。
○天野委員
先ほどご指摘いただいたように、小児の血液がんでは臨床試験という形で一定のプロトコルに従って多施設共同で行われているということがあると思うんですが。実際の患児さんが受けている医療ということについていうと、例えば臨床試験に参加されていないような施設がそのプロトコルを見て治療を行っているというふうな残念な例もあるように聞いております。そういった施設で治療がうまくいけばもちろんいいんですが、うまくいかない場合もあると。非常にさじかげんが難しいということがありますので。
そういったもし標準的な臨床試験も含めたプロトコルというものがあるのであれば、そういったものを行える施設というものをある程度限定するとか明らかにしていくといった方向性も標準治療の推進という上では重要なのかなというふうに感じています。
○檜山委員長
非常に重要なご指摘だと思うんですが、その辺について何かコメントとかございますか。
堀部委員、どうぞ。
○堀部専門委員
血液分野については小児に関しては日本小児白血病・リンパ腫研究グループという、日本全体の研究グループを取り込む形で今統一した臨床試験を行っていますので、それに関しては参加施設については全て情報開示していますし、その施設のクオリティを担保するために、順次審査をしながら進めているところですので。そういう意味では、参加施設の底上げという努力の形で、166施設いるんですけれども、スタート時点は205施設あったんですね。だから、166もあるとまだ登録もほとんどない施設も当然含まれている状況ではありますけれども、少なくとも我々医師側からスタートした研究で、研究意欲のある人に関して全部手を上げて参加していただいていますので、その中から絞り込むというためには一つのコンセンサスを持ちながら順次進めているという段階ですね。
また、外圧的に学会からの認定だとかいろいろな公からのこういう拠点とか云々という話も加われば、さらにそこがより集約化という方向には進むのではないかなというふうに思います。
○檜山委員長
非常に堀部委員の言われるのはよく分かるんですが、もう一つ馬上委員が言われたことの大事なことは、患者側から治療選択をする方法がよく見えないというようなご意見ではないかなというふうに思えるんですけれども、その辺と。
あと、治療開始をするときにいわゆる晩期合併症まできちんとした説明を受けていないような現状を今ご指摘されたように思うので、その辺について何かこうしたほうがいいとか、こういうふうにあるべきだというようなご意見いただけませんでしょうか。
小俣委員、どうぞ。
○小俣専門委員
その治療のほうの選択もそうですし、それから晩期合併症の内容ということもそうですが、そもそも私意見書に書きましたが、本人へ伝えるのか、何をどう伝えるのかということや、兄弟姉妹に伝えるのかということも含めまして、だれがどのように説明を行うのかということが一つ問題として挙げられるのかなというふうに考えます。
それは医療者がということでもなく、先ほど増子参考人がお話ししてましたけれども、親が拒否するということもありますので、本人が最初に伝えられずに治療を行うということはかなり苦痛です。また、これだけ情報が氾濫しておりますので、ちょっと昔になりますが、2000年に調査した結果では、半分以上が自分の病気のことを知っておりました。それはやはり小児病棟の中で相当な情報交換が行われておりますので、そういった現状もあります。そうすると、多少周りが分かる本人であれば、親や医療者を気使って、自分の病気のことを質問したり聞いたりということがなくなっていきます。すみません、話が長くなりましたけれども。そんなこともありますので。そこもご議論いただきたいなというふうに思います。だれがどのようにということ。
○檜山委員長
原委員。
○原専門委員
小俣委員おっしゃることはもちろん重要だと思うんですけれども。結局治療法の提案ですよね、それをどのように正しい提案の仕方をするか。それから、晩期合併症についてどれだけ正確な情報をお話しするかということなんですが。結局それは説明する人の能力の問題というのはかなりあるんですよね。能力といいますか知識といいますか、例えば晩期合併症のこともやはり余りご存じでない方も結構多い。
馬上委員は脳腫瘍の関連なのでそういうお話ししますと。例えばどれぐらいの放射線がどこに当たったら将来どうなるんだとかそういうこと。あるいはお腹に関して言うと、お腹にどれぐらいの放射線が当たったら不妊になるとか、そういった辺りの知識がやはり不十分なケースが多いんじゃないかなと思うんですよ。
だから、結局やはり質の担保なんですよね、拠点病院の。だから、拠点病院というふうに持っていって質を担保していけば、そういった問題はかなり馬上委員のおっしゃる懸案というのはかなりそれだけでも解消してくるはずではあるんですね。と同時に、専門医制度で医師側のレベルを上げていくことで、それは大分改善はされていくであろうと。
あともう一つは、どういう治療法を提案するかということですけれども、これはやはりガイドラインというふうになってくるんだろうと思います。がん治療学会が今中心になってやっているガイドラインですけれども、小児固形がんのほうも何とかかんとかできあがるところまできていますけれども。脳腫瘍のほうがまだ、脳腫瘍学会のほうで今作成をされているとは思います。そういった辺りの充実が必要かなと。
あと、小俣委員がおっしゃることに関して言うと、いわゆる第三者的な方ということだと思うんですね、心理士だとか専門看護師だとか、そういう方が一緒に入って我々の説明をサポートしていく。どこまで理解できたかということを確認していただきながら話を進めていくという、そういう第三者の方が参加していただくということが、これも当然必要なことだろうと思います。
○檜山委員長
よろしいでしょうか。大体この辺りはきちっとした正しいガイドラインに基づいた治療が提供できるということと、それに対して第三者が入るなどのきちっとした説明体制、セカンドオピニオンももちろんなんですが、ができる施設であるべきだということで大体まとめさせていただければと思うんですが。よろしいでしょうか。
では、1−3の治療を行う際の問題点のほうに少し論点を移したいと思いますが。この辺りについてご意見をいただければと思います。
馬上委員、どうぞ。
○馬上専門委員
うちは小児脳腫瘍なので脳神経外科なんですけれども、脳神経外科とか整形外科といった成人診療科だけで子供のがんが診療されているという実態があります。つまり、成人の入院施設の中、大人の中にポツンと子供が一人だけ入院しているということがありまして。先ほど増子先生がおっしゃっていた、子供の権利が侵されているということがあります。あと、結局そうしますと、小児科との集学的治療が十分にされていなかったり、子供のための環境が整っていなかったりということになっています。ですので、ぜひ患児家族を含めた関係診療科全員のチームのカンファレンスによって治療を進めてもらいたいというふうに思っております。
○檜山委員長
ありがとうございます。
今のご指摘非常に重要なんですけれども。牧本委員のほうから、いわゆるフルスペックというような言葉が資料のほうに出ているんですが、そういういわゆる複数診療科による正しい医療チームをやはり構成すべきだというふうにお考えということでよろしいかというところの議論を少ししていただけたらと思うんですけれども。
牧本委員、何かございますか。
○牧本専門委員
私の出した資料というのは資料4の19ページのところを指していると思うんですが。?@、?A、?Bとあって。フルスペックというのは何を指すかというと、つまりは1−3に書いてある(1)から(6)まで、対処できるような医師の集団あるいは看護集団、あと支援者の集団をきっちり持てるかどうか。はっきり申し上げると、国立がんセンターの現状でもそんなフルスペックではないし、恐らくどこのほかの病院もフルスペックとは言いにくいと思います。
僕は、現状一番このフルスペックにするのに難しいなと考えているのは、外科治療ですね。小児がんと一くくりにした場合には、もう本当に成人がんのがんセンターが持っている外科医が全部必要なんですね、それとプラス小児科を専門とする小児外科医が必要になるので、かなりこのフルスペックという点を構成するのは難しい現状にあると思います。特に、先ほど原委員の話の中に脳腫瘍の生検を脳血管外科の人がするとちょっとまずいという話がありましたけれども、必ずしも小児病院にいらっしゃる耳鼻咽喉科医とか整形外科医が腫瘍を切り慣れているわけではなくて。だから、そういう意味ではやはり悪性腫瘍を経験の豊富な、そしてかつ小児の体も手術できるような医師ということになると、ものすごい希少な集団、日本の中の希少な集団を、拠点化するのであればその拠点に集めないといけないというものすごい難しいことをしていかないといけないんですけれども。
一気に本当にそれを厚生労働省主導でやっていただくということが本当は望ましいのかもしれないと思いながら、いきなりいけない場合に、やはり小児腫瘍というものをある程度専門、クラスターに分けてしまうということも一つあるかなとは思っています。だから、どこかの施設は小児脳腫瘍を重点にやる病院であるという旗揚げをして、脳神経外科とかあるいは小児神経内科医、がん以外の神経症状をちゃんと見ていただけてクオリティコントロールをしていただける医者とか。あと心理士の比重も大きく必要になるとか。あと、逆に言えば、お腹を開ける医者がしっかりと存在する、肝臓にできようが後腹膜にできようが、婦人科系統であろうがちゃんとできるような施設。一方では四肢、骨とか手足にできた場合には整形外科医が重視されるし。そういうようなところで。
僕自身は抗がん剤の使用に関してはやはり割と共通したところがあって、これは恐らく委員の先生方は全て専門家であられるので。別にこの化学療法に関してはストレスはないとおっしゃると思うんですね。恐らく特に臓器あるいは部位別のそういう局所療法を行う外科医との交渉あるいは連携、それこそ手術日の設定、スケジューリングとかそういうのも含めてのチームワークがとれるかどうかということは多分すごく重要になってきて。
だから、そこのところのフルスペックというのはすごく難しいことで、すごく難しいけれども書いたという状況です。ただ、やはり理想論を一応議論しておかないと、何をしたらいいのか分からないので、今理想論を申し上げると同時に、一応のソリューションとしてそういうクラスターに分けるということを申し上げました。
○檜山委員長
天野委員、どうぞ。
○天野委員
今牧本委員のご指摘いただいたフルスペックチームということで、理想論をおっしゃっていただいたということだと思うんですが。まず質問1点したいのは、仮にこういったチームが可能であるとするならば、日本の中でどの程度の医療機関、こういったチームがあれば望ましいというふうにお考えなのかなというのをまずちょっと聞きたいというのが1点です。
もう一つ、患児や家族の立場からすれば、自分の小児がんをどこに行けば高い確率で治していただける、もしくは専門家が見ていただけるのかということが恐らく非常に重要になってくると考えていて。そうしてくると、例えばこれはフルスペックチームとは違うんですが、例えばフルスペックの要は診療科がある拠点病院というのが必要なのか、それとも個別の小児がんの疾病ごとにこの小児がんであれば対応できますとか、この種類であれば対応できるというふうに登録がはっきり見える化されているほうがいいのかというのはちょっと議論は必要かなというふうに、患者としてはちょっと感じるところですけれども。その辺りはどのようにお考えなのかということについてお願いできますでしょうか。
○牧本専門委員
まさに、フルスペックの中にも多分質と機能の豊富さとかの段階があると思うので、先ほどの多田羅先生の緩和ケア施設の話もあったんですけれども、本当の本当のフルスペックで、すごく例えば手術が難しい患者ですね、標準的よりもむしろ難治例に入るような患者さんを手術するとかいう場合に行くような施設というのは日本にそれほどたくさんは必要ないと思っていて。実際には多くても数施設、五、六の間じゃないかなと思います。ただ、そうなってくると、じゃあ移動とか滞在施設はどうするのかとかそういうふうなものが出てきますけれども。やはりこれは役割分担だと思っていて。
そこは本当に、私申し上げたのは、外科医が問題なので、周術期のみといえばのみになるんですね。ですから、そこのところはやはり連携を地域の先生方ととって、どこまでをというか、やはりそういうところがあれば、何も慣れない手術を地域で行ってより悪い結果を導くようなことはないわけなので。そういう象徴的なフルスペックチームは日本に幾つかあることは非常に全体として底上げにつながってくると思いますので。
1番目の質問に関しては、そういうふうな意味合いで五、六、あるいはもう本当に二つとかでもいいとは思いますけれども、政策によってちょっと変わるかなと思っています。
2番目の質問がまさに私が言ったクラスターということでありまして、そこを見える化したほうがいいのか、フルスペックの病院を例えばちょっと質の低いと言ったら悪いんですけれども、一応のフルスペックチームを例えば10個とか持っているということが大事なのかということなんですけれども。これはさっき申し上げたことにつながるんですけれども、例えばフルスペックチームが二、三あれば、すごく質が高いのがあれば、後のところは役割分担でクラスター分けで、私たちの施設は整形外科の先生がいますので肉腫を担当しましょうとか、私たちの施設は脳腫瘍を主に見ましょうとかいう分けがあってもいいかなとも思っています。そうすることで、結局やはり全部が全部フルスペックの施設に患者さんが行くわけではありませんし、それを極端に進めることは私も現実的ではないと思っていますが。やはりフルスペックチームがあることで、そこに研修に行って学ぶとか、あるいは困った患者さんが駆け込むというか、そういうふうなことができるようになるので、やはりそれは必要だろうなとは思います。
いかに見える化して情報開示をして今の例えば力で我々が協力し合ってやったとしても、それはもう既に僕らは割と協力し合っていると思っているんですね。小児のがんを担当している医師はいつも割と疲弊しながら本当に命をかけて、患者さんは命かけてますから我々も命かけてやっているつもりなので、そこに何か引き上げる力があるとすれば、やはりそういう理想的な病院というものは我々にとっても力になるんじゃないかなと思っています。
○原専門委員
フルスペックということなんですが、それをスペックにする、あるいはフルスペックを維持をしていくというためには、やはり集約化しないことには維持もできないですよね。できもしないし、維持もできない。だから、例えばアメリカなんかだったら、神経芽腫の手術ばっかりしてるというそういう小児外科医がいたりするわけですけれども。日本の小児外科医というのは、例えば神経芽腫もやれば肝臓の腫瘍もやるし肺の腫瘍もやるという、そういう何でもこいこいという状況なんですが。それは悪いわけでは全然ないんですけれどもね。
だから、何をもって外科医のフルスペックというのかというところが非常に難しい。我々にとっても、外科手術というのは、いつも外科の先生に言うんですけれども、ブラックボックスだと。あと一息のところで取りきれなかったといったときに、それはだれのせいなのか。腫瘍のせいなのか、外科医のせいなのかも分からない。
それから、例えばこれは手術できませんといったときに、それは一般的な話なのか、その外科医にとってなのか。手術の内容に関して言うと、もっと判断が我々にできないんですね。だから、外科医の評価といった場合に、どの外科医であれば安心してお任せできるのか、我々もよく分からないんですよね。だから、例えばプロフェッショナルに取り上げられた外科医がそうなのかも分からない。だから、そこをどうにかしてやはり外的な評価をしていかないと難しいかなと思います。特に外科医というのは腕一つでかなりのところが違ってくるので、そこはやはり何とかしていただきたいなと。
それから、フルスペックを維持する、能力を維持するためには集約化がないとこれはやはり無理だろうと思います。
○檜山委員長
五大がんですら外科医を集約化しようというような話がもう出ている状況ですから、恐らく小児がんにとってはやはり外科医もきちっとしたところでやるべきということは異論はないんじゃないかなというふうに思うんですけれども。
森委員、どうぞ。
○森専門委員
外科医、それから放射線科医の集約化に関してはリソースが余りにも限られているということ。それから、一口に外科と言っても様々な領域があることから、牧本委員がおっしゃったように、一つは国の取組としてセンター的な施設に、そこは何でもできる。それは取組を示すということ、それから教育研修という観点でも必要じゃないか。それ以外に関しては現実的に対応できる経験を持つ技能を持つ人材の数も限られますし、地域性を考えると、疾患に特化した拠点というのができてくることは、それを経ていくことが重要ではないかというふうに思っています。
もう一つ、フルスペックという中で問題になるのが、例えば1年間のがん治療をする中で、手術は1日、周術期入れても一月、放射線一月、二月。仮に例えば脳腫瘍だとすると、最初から最後までずっと内分泌の管理が必要。特にニホウショウだとかそういった問題に関しては化学療法を併用していく上ではかなり大変な管理が必要になってくる。けいれんを生じる人、様々な問題がある。
こっちに関しては、1年闘病すると1年じゅう横にいてほしい役割になるんですね。晩期合併症の観点も含めて、初期からその患者さんがどのような臓器の状態、知能も含めた、体の状態にあって、それがどの時点でどうだった、治療をやめるときにどうだった、そういうことが評価できる必要があるんじゃないか、それが望ましいんじゃないかというふうに思っています。ですから、そのフルスペックの中には小児科医機能の充実ということは非常に含まれるんじゃないのかなというふうに思っています。
抗がん剤の使用に関しては、先ほど話があったように、恐らくここに出てくるメンバーは余りストレスがない、同じような考え方で動けると思うんですが。我々が内分泌の調節、神経の調節、循環器の評価、性的な成熟の評価、そういったところまでかけ持ちしてやるのがいいのか。やはりそこに特化したトレーニングをした人たちがサポートできる環境がいいのか。特にだから、拠点施設にはそういったことまで求められれば望ましいのではないかというふうに、フルスペックの中にですね、考える次第です。
○檜山委員長
重要な指摘だと思うんですけれども。
堀部委員、どうぞ。
○堀部専門委員
そのフルスペックという意味があるがん疾患に対して、その疾患の周りにトータルケアも含めて、それから診断治療する上での全ての領域をという意味と、あらゆるがん種みたいな形と2通りになっていて、かえって誤解を招かないかなという。先生が言われた五大がんの集約化にしても、五大がんをみんな見れる施設をというのではなく、それぞれの多分疾患について集約化ということだと思うんですね。それを考えると、例えば小児がん領域で余りにもがん種が様々であり、そこに関わる局所療法の違いというのは大きいので、それを一施設にまとめることのメリットは小児があるがゆえに必要なトータルな部分を共有できるという意味で非常に効率がよくなるとは思うので、そういう意味では医療の効率化という意味では望ましい部分があるとは思いますけれども。本当にその疾患に、患者さんにとって分かりやすい形で拠点という意味では必ずこれはクラスター、疾患単位というほうが分かりやすいし、その疾患が一つの施設に集まっていれば、それはそれで完全なフルになるとは思うんですけれども。
全がん種というスタンスよりは、やはりどの種の疾患に対してもきちっと全てトータルなケアができるような仕組みを持つというそういう体制が整備されているということが一番重要じゃないかなというふうに思いますけれどもね。
例えばフルといったら、小児がんでがん科の網膜芽腫を入れたら、これはもうどこの施設もなんていう必然性は、今ですらもう完全に集約化されちゃっている状況なので、そこが入る施設なんていうことはあり得ない、ある意味ではそこまで広げる必要もないわけであって。そういったやはり非常に特化された疾患というのはあると思いますので。そういう意味ではやはり疾患単位ということできちっと明確になるほうが患者さんにとっても分かりやすいんじゃないかなと思います。
○檜山委員長
どうぞ、馬上委員。
○馬上専門委員
がん種別に特化していただくのは患児家族にとってもとても分かりやすいんですね。ただ、さっきおっしゃっていた、外科医の技術とか、小児科医の科学療法の技術というのもそこで特化されて、非常に専門性が高まっているところに患児家族は行きたいというふうに思っているので。さっきおっしゃっていた外科医の、特に脳神経外科なんですけれども、腫瘍別に専門があるみたいで、それについて患児家族はどういう技術を先生方が持ってらっしゃるのかというのが全く見えない状態なので。例えば手術件数とか、そういったものも公開していただきたいなというふうに思っています。
○檜山委員長
診療情報の開示というのは必須条件だと思いますが。
牧本委員。
○牧本専門委員
ちょっと忘れちゃった、二つあったんですけれども。一つは、だから堀部先生の言われたことというのは僕が言った、本当に最初から言ってる二つのことでいいんです。やはり層別があって、私と森委員は恐らくそれぞれがんセンター、成育医療センターという立場からものを言っていて、我々の施設は自省も含めてやはりフルスペックセンターであるべきだと。それでもって国民に我々はフルスペックを提供できますと言いたい、私が言ってもしょうがなくて、理事長まで上げないといけないんですけれども。そういうふうなところを担保していくべき病院だろうと思っています。だから、本当に二、三とか言ってたんですけれども。
一方で、堀部先生は名古屋医療センターでやはり地域のがんを推進されている立場からは、名古屋医療センターがそうなのかどうかは別として、やはりできることというか、現状から実現可能なところということを探っていった際に、やはりクラスターを明示して、フルスペック病院があるかどうかは別として、その連携の中で全てを解決するという立場に立たれているので。僕は全然合意をしております。
もう一つすごく広い話なんですけれども。ぜひ患者さん代表、馬上さんと小俣さんにもお聞きしたいんですけれども。はっきり言うと、患者さんが来てくだされば病院は成長するというか、もちろん教育の面でもですね、医療技術の面でも成長するので、ある程度我々が医師側、医療者側が施設を整備していくことは当然必要なんですけれども。もしやはり拠点病院というふうに言った場合に、施設の集約化、医師の集約化ができたときに、やはり患者が集約化していけるのか。つまり、今の場合だと患者さんに選んでいただかないといけないので、患者さんがどちらかというと多くなっていった病院が医者も増えて診療体制が整備されていっていい病院と言われるようになるという流れなんですが。逆に行政からそういうふうに規定したときに、患者さんというのは流れるもんなんだろうかということをちょっと聞きたいですね。
○檜山委員長
それは非常に重要な観点で、このまとめにも、今医療側の話ばっかり出てるんですが、患者さんが例えば遠隔地から国立がん研究センターのほうに行ったときには、じゃあどこへ泊まるのかという問題から始まって、そこがどういう施設が本当に拠点として。今先生が言っているフルスペックという意味の中にはもう少し広い意味のいろいろな意見が、施設とか人も含めてですけれども、必要ではないかと思ってるんですけれども。その辺のご意見を、馬上委員、ありますかね。
○馬上専門委員
患児家族はそこが経験と実績がある専門病院であるということが分かれば、そこに行きたいと思うんですね。そして、子供ですので、もし遠方からの治療の場合はやはり宿泊施設とかそういう子供にとって、家族にとっての療養環境、あと社会的、心理的ケアというのがちゃんと整っていること、そういった専門の体制が整っているところがやはり行きやすいところなので集まっていくと思います。そのためには情報開示をしっかりしていただくことというのが大事だと思います。
あともう1点ですけれども、結局集約化することになりますと、今でさえ遠方治療を余儀なくされている医療過疎地の方とか地域の方がいまして、そういう方々はやはり遠方治療のために経済的に非常に負担がかかって、二重生活を強いられてお父様が職を失ってしまったりとか、あと家庭崩壊に陥って離婚が非常に多く聞かれているとか、非常に問題が今でさえ多いので、集約化になりますとそれがさらに大きな問題というふうになってくると思うんですね。それに対する相談とか相談支援とか、あと実際の療養費助成とか、そして先ほどから言われている宿泊施設ですね、そういったものというのは全体的な体制というのはすごく必要だと思います。
○檜山委員長
原委員、どうぞ。
○原専門委員
ちょっと議論がややこしくなっているように思うんですけれども。私が書いたのは、この辺りのことに関しては、現在のがん拠点病院の要件ですよね。それでかなりいろいろなことを網羅していると思うんですよ。相談窓口だとか緩和ケアだとか、当然診療技術もありますね。だから、そういう何をフルスペックかという先ほどの議論もちょっとそこでややこしくなるんですけれども、そういうがん拠点の要件が基本にあって、その中でさらに小児がんに特化した、あるいは小児がんに向いてない部分もあると思うんですけれども。そこらを整理して、それを拠点の要件とすると。
もう一つは、利便性ですよね、地域性のこともあるので、その拠点病院というものの希少性、希少性というのは変な言い方ですけれども、非常にハードルを高くするのか、高くすれば日本に3カ所みたいな話になっちゃうわけで、それをどこへ持っていくかによって地域性というか移動距離も変わってくる。
もう一つは、先ほどの多田羅参考人のレベル3、レベル2、レベル1とある。だから、そういう感じで小児がんの診療をする医療施設もレベルを幾つか置く。レベル2のところはレベル3に相談しながらやるとか。だから、その辺りの議論はちょっと別途にしたほうがいいのかなと。ですから、とりあえず拠点病院というものはどれだけのものを要求するのか、イメージ的にはどれぐらいのものを置くのか。その中でさらに脳腫瘍も対応できる施設を何箇所置くのか、骨軟部肉腫に対応できる施設を何施設置くのかという、そんなイメージなのかなと思うんですけれども。
だから、その中でそういうサテライトを置いて、それでさらに患者さんたちのあるいは患者家族の支援ですよね、経済的な支援も含めてどう考えていくのかという話になってくるのかなと思うんですが。
もしよかったら、ちょっと英国の例なんかを聞いてみたいと思うんですけれども。その辺りはどうしてるんですかね。
○檜山委員長
多田羅参考人、もしあれば。
○多田羅参考人
私も短い時間ですけれども、英国で小児がんといいますか緩和ケアに関わってくる機会があったので、その範囲で今の原委員のご質問にお答えするとすれば。一つは、もちろん今おっしゃったように、フルスペックというのをイギリスでは例えば22施設に小児がん治療施設というのが限られていますけれども、人口が大体半分ぐらいです。小児の人口はイギリスのほうが少し多いので、割合でいうと日本が1.5倍ぐらいになるかと思うんですけれども。その中でどういうふうにさらにクラスターしているかといいますと、骨髄移植をできる施設はさらに少ないです。22施設の中で子供といっても10歳未満の子供たちのようなチルドレンを見ている施設が17施設で、ティーンエイジャーを見ている施設が例えば7施設。両方、完全なフルスペックで例えば脳腫瘍も骨髄移植もティーンエイジャーもチルドレンも全部見れるところというのは数施設しかないんですね。全国で多分2施設か3施設だと思うんですけれども。それぐらい、22施設がレベル2という表現をするとすれば、さらにフルスペックで全てのティーンエイジャーも見れば難治性の固形腫瘍も脳腫瘍も全ての年代から疾患、病種も含めてというのが全国に2施設か3施設程度あると。それが一つの形になっています。
緩和ケアについても、そこのフルスペックのところには大きな緩和ケアチームがありますけれども、レベル2レベルのところにはナース主体の緩和ケアチームを置いていて、困ったときにはナショナルセンターの幾つかのところと相談しながらやっていくというような段階的な仕組みになっていると理解しています。
○檜山委員長
ありがとうございます。
先生の言われる、皆さんまたクラスターという言葉を使っておられるので非常に分かりにくいと思うんですが、いわゆる脳腫瘍のクラスターというのはあるかなと思うんですが、それが例えば先生言われるフルスペックの中には脳腫瘍もいわゆる普通の造血器腫瘍も全て見れるというのをいわゆるフルスペックと言っているというふうに理解していいですか。それでよろしいですか。
○牧本専門委員
私がフルスペックという場合には、全国に数施設と言ったフルスペックの場合には脳腫瘍も含めて。つまり、我が国のがん医療をリードするという立場に立てる病院という意味で、脳腫瘍ができない病院ということはちょっとまずいかなと思っております。
○檜山委員長
今のフルスペックでないというところは、ある意味で一つのある疾患、いわゆる造血器なら造血器だけに特化した施設という形をイメージするのか。それとももう少し医療レベルが違うのか、ちょっとそこが皆さん誤解があると困るので、そこだけ統一していただけますか。
○原専門委員
提案なんですけれども、フルスペックという言葉は使わないほうがいいと思うんですよ。誤解を招いているので。ですから、例えばほとんどのがん種は見れるけれども、網膜芽腫だけ見れない、だからフルスペックじゃないと。だから、網膜芽腫まで見れることがさほど重要じゃないので、ちょっと議論が、フルスペックは非常に重要な意味を持つと思うんですけれども、それを基に議論すると何かぐちゃぐちゃになっているような気がします。
ですから、基本的には小児がんを見れるというのは大半のがん種が見れる。その中で特殊なものだけはうちは見れませんよという話になるんだと思うんです。特殊なものはというのは、先ほど申し上げたように、脳腫瘍だとか骨軟部だとか網膜芽腫、ほとんどこの三つじゃないかと思います。だから、それ以外のがん種は全部見れるんだよというのが普通の形じゃないかな、一般的な小児がん拠点というのを設ければそういうものが該当すると。プラスその三つが見れるか見れないかという話だと思います。
○檜山委員長
今原委員の言われた、いわゆる小児がん、今の例外を除いて見れるというところはレベル2なのか3なのか、先生。
○原専門委員
3だと思います。
○檜山委員長
レベル3ですか。牧本委員のお話とちょっと違うと思うんですが。
○原専門委員
レベル3なら、例えば網膜芽腫が見れないからレベル2かという話にはならないので。ですから、レベル3というのはレベルの高い小児がん診療をしているという、そういう意味ですよね。だから、緩和ケア医もいるし、内分泌科医もいるし、心理士もいるし、それから病理医もいるし、放射線治療医もいるしと、そういう意味でのフルスペック、レベル3だと思います。だから、がん種の多さをもってレベルが上がるわけではなくて、という意味だと思うんですけれども。
○檜山委員長
そういう理解で、多田羅さんもそれで。そういう形で、だから、緩和もいわゆる専門の緩和のチームがあればレベル3だし、一般の緩和チームであればレベル2という形。
○多田羅参考人
そうですね、専門の医師がいて、しかも精神科とかサブスペシャリティの人たちが多数いるところがレベル3だというふうに理解しています。小児がん治療についても、イギリスでは例えば骨髄移植までしてティーンエイジャーも見て脳腫瘍も見てというようなのが全てがそろっていれば大体そうなっている、同じように全てがそろっていますので。ということだと思いますけれども。
○檜山委員長
どうぞ、馬上委員。
○馬上専門委員
そういうところが小児がん全体をリードしているところなんですか。
○多田羅参考人
そうですね。
○馬上専門委員
リードしているというか、長期的計画を立てたりとかそういうことをしているところなんですか。
○多田羅参考人
長期的計画はナショナルに決められていく部分が多いんですけれども、教育面だとかリサーチの面では推進していくところになりますね。例えば専攻医のポストというのが向こうは国で決めるんですけれども、そういったところにポストに専攻医がきますので、4年間の小児がん治療の専攻医がそこに集約されてきて、そこで学んだものが全国にまた行くという格好になりますので、結果的に治療の標準化というのは専攻医をポストで集約させることによって集約させているという方法論をイギリスはとっていると思います。
○檜山委員長
堀部委員、どうぞ。
○堀部専門委員
多田羅参考人にちょっと確認をしたいんですが。そういう施設では診療科は独立しているんでしょうか。つまり、その小児の血液腫瘍なり小児がんに特化した診療科として、医療体制の中でですね。
○多田羅参考人
ヘマトロジー、オンコロジーの部門のユニットです。
○堀部専門委員
きちっと部門として。
○多田羅参考人
はい、そうです。部門だったらその部門です。
○堀部専門委員
病棟だけじゃなくて、医療者というか医師もですね。
○多田羅参考人
完全に分かれています。
○堀部専門委員
完全にですね。そこが日本の場合一番問題だというふうに思います。すなわち、これ拠点病院を考えていくときに、地域で中核になっているのは大学病院というところが結構多いんですね。大学病院の中の診療科単位は小児科1講座というところがほとんどですので、結局教授がリードしているところはいいかもしれないけれども、教授の専門が変わってしまったら拠点病院に認定してもそれが体質が変わるかもしれない。きちっとその診療を担保するという意味では専門医がいるだけではなくて、きちっとやはりその診療科としてそこが機能しているなり何かそこの裏付けをとるぐらいのことをしていかないと続かないんじゃないかなと。質を継続させるという意味では組織としてきちっとその体制が位置付けられると、これはかなり大きな問題で、本当に隣の文部科学省の話にもいってしまうかもしれないんですが。
とりわけ大学病院というところはいろいろな意味で先進医療が集約されている地域というのは多いと思いますし、いろいろな機器等も含めて、それから医療スタッフにしても。そういうところが担っていくべきだとは思うんですが、残念ながらそれが小児がん分野、小児血液腫瘍分野に関してきちっと体制として位置付けられていないので、やはりそこも平行してこの拠点病院を考える上では議論が必要になると思います。
○檜山委員長
今の既存のシステムをいろいろ考えて組み合わせるというものも必要なことかもしれません。今日のディスカッションは小児のがんを見る診療体制は何が必要かというディスカッションをまずさせていただきたいと思うので。それに大学病院が本当に適合しているのかどうかというのは非常に問題があるところでありますけれども。
皆さんのご意見をちょっと今聞くと、いわゆる言葉を使ってはいけないのかもしれませんけれども、フルスペックというふうに最初に言ったものは、いわゆるそういう小児がん全体、一部のものは例外としても大体の小児がんは診療が可能であって、さっき言われたように専門の緩和チームがあって、いろいろな施設が整っていて、いわゆる医療関係の、医者以外のいろいろな人材がきちっとそろっている施設と、これは必要だということで。この数の問題はまだしませんけれども、必要だということではよろしいですか。
もう一つは、だから、議論していただきたいのは、その下にあるいわゆるレベル2という、言葉はまた使っていいかどうか分かりませんけれども、レベル2というふうに皆さんが理解されているところのある程度のがん種は見れるとか、そういうある程度のチームはそろっているけれども、かなり難しい症例に関してはレベル3と連携しながらやらないといけないというような施設はあるべきであるかどうかというところなんですけれども。それはあるべきだというふうにお考えでよろしいですか。
小俣委員、何かその辺のご意見ありますかね。
○小俣専門委員
ごめんなさい、もう一度質問をよろしいですか。
○檜山委員長
非常に小児がんが大体全て見れると、人材もきちっとそろっている、それで施設もそろっている、これいい施設という、レベル3と言っていいと思うんですが。そういう施設は必要だと。日本に何カ所、1カ所か2カ所かもしれませんけれども、必要だということで今いいと思うんです。そうではなくて、いわゆる極端に言えば造血器腫瘍だけ見ますよと、ある程度の緩和チームもそろっていますというような施設がある程度あってもいい、あるべきだというふうにお考えか。集約のやり方という方向で患者側あるいはそういう家族側のご意見をちょっと聞いてみたいなと思うんですけれども。
○小俣専門委員
すみません、ありがとうございます。フルスペックという言葉は使ってはいけないんですよね。だけれども、そういう施設が二、三施設あってということはまず必要だと、馬上委員もおっしゃっていましたが、そう思います。
ただ、例えばどこでしょうね、東京と大阪とどこかというふうに三つ全国にあるとかとなると、患者や家族からしてみると、やはり療養する環境を考えたときに、それからその後長期に入院をし治療した後、地域に帰って行くときのことを考えたりすると、拠点病院というのか分かりませんけれども、ある程度のレベル2なんでしょうか、そういう病院が幾つかあったほうがいいということと。その場合には、全てそろっている、医療のところだけではなくて、療養に関する専門職ですね、サポートというのが各地域、ほかのあるところにも完備されているということが条件として必要かなというふうにはもちろん思うんですけれども、必要だと思います。
○檜山委員長
もう一つ聞きたいのは、今原委員から言われましたが、今の成人のがん診療連携拠点病院ではどうかというご意見が今あったと思うんですね。それに対して何かご意見あれば。
○小俣専門委員
成人のがん診療拠点病院を活用するということですよね。話が最初からずっと一緒なんですけれども、療養環境を担保されるというか質の担保があるのであれば、それは当然あるものを活用していくということは大事なことだということと。それから、治るようになってきましたので、私たちこのように成人になっていきます。そうすると、場合によっては成人科に移行するということもありますので、例えば二次がんができたときには、もしかしたら二次がんが発症したときにはということも考えますと、成人の拠点病院を活用するということは多いに意味があることだと考えます。
○檜山委員長
馬上委員、どうぞ。
○馬上専門委員
小俣さんと同じような意見なんですけれども、結局質が担保されるのであれば、その成人のがん拠点病院はベースがあるので、その上に上乗せて要件を乗せて、患児家族が専門的な治療を受けれることであれば、体制が整っていれば私はいいんじゃないかというふうに思います。
○檜山委員長
堀部委員。
○堀部専門委員
ちょっとレベルの議論で、やはりちょっと気になるのはがん種と医療を支える質の問題と、そこがやはりちょっと交錯している気がして。やはり中核的な治療と療養環境がきちっと全部条件を満たしているのが一番レベル3として高くて、やはりそこで何らか欠けているのはレベル2というふうにしていかないと。がん種がそろうそろわないというのはまた別の議論にしたほうがいいんじゃないかなと思いますけれども。なっていればいいんです。
○檜山委員長
そういうつもりで言ったんですけれども、必ずしも全てがそろってないけれども、ある程度の造血に関してはここの……
○堀部専門委員
いや、そこで造血器というふうに言われるとやはりがん種、そういう意味ではないんじゃないかなと思ったんですね。造血器は見れるけれどもほかは見れないとかそういうことではなくて、やはりがんの患者さんを治療する上で必要な診療科、診療体制と、それからいろいろなそういう療養環境に対してのサポート、療養を支援するスタッフなり設備等のそういう体制がきちっとそろっている、一番ハイレベルでそろっているのがそのレベル3と。それは教育的な意味も含めてそういう要素も含めれば一番高くすれば、そこは基準はまたディスカッションすればいいと思うんですけれども。それが要はがん種が全部でなくてもレベル3があっていいんじゃないかなという認識があったので、そういう意味で言ったんですけれどもね。
○檜山委員長
どうぞ、原委員。
○原専門委員
レベル3、レベル2をどうするかということなんですが、結局、私はがん拠点病院の病院そのままと言ったつもりではなくて、拠点病院の要件をそのまま活用したらどうかなという、ひょっとしたら意味は同じなのかもしれませんけれども。結局、そのレベルをどこに設定するかで全国で何施設かというのが自動的に決まってきますよね。それはちょっとやってみないと分からないわけで。非常に高い要件を設定すると密になるし、それをぐっと幅を広げると40カ所になるだろうしという話になってくるので。ですから、それによってレベル2の施設がいるのかいらないのか、あるいはどれぐらいいるのかというのがちょっと議論が変わってくるのかなと思います。ですから、全国で例えば5カ所であれば、これはもう絶対レベル2の病院は嫌でもいります。ということだと思うんですよね。
○檜山委員長
どうぞ、天野委員。
○天野委員
診療の質と医療の質を上げる、維持向上するという点では、集約化というのはこれはもう流れとしては避けられないというのはこの議論としてあると思うんですね。ただ一方、患児や家族からすれば、先ほど馬上委員からもあったように、集約化というのは実際のところ痛みを伴うというのはこれはもう明らかだというふうに思っていますし。地方の方からは本当に今でも厳しいのに、これ以上進めるのかといったご意見もあるということは十分に留意しなければいけないというふうには思っています。
そういった痛みを伴うのであれば、やはり集約化というものは医療を、もちろん今現状でも厳しいので、現状を維持するだけでも集約化をしなければいけないということも言えるかもしれませんが、やはり集約化をする以上は質を上げていくということにつながらないといけないので、若干ある程度高めのものを設定していくことによって診療の質を維持するのみならず向上していくという恐らく方向性がいいのではないかというふうに私は感じています。
○檜山委員長
森委員、どうぞ。
○森専門委員
今考えてみると、ここで子供病院は私だけだったんですね。いわゆる成人の拠点施設要件というのはあくまでも成人がんを念頭に置いて組まれたものというふうに認識しております。今日の議論の中でも、いわゆる子供病院の利点、例えば学校の問題にしてもそうですし、療養環境の問題。子供病院の利点というのはあると思いますし、それから先日原委員や堀部委員が示された資料の中でも、現実的に子供病院がかなりの役割を担っている状況で。いわゆる成人のものをそのまま持ってくると、子供病院というのはほとんどそこに適合しない要素というのはすごく多いことになる。だから、何らかの基準は必要で、それは子供病院だから、大学病院だから、公的病院だからという議論ではないと思うんですけれども、その議論のスタートの仕方として、成人に当てはめたものをそのままそれをたたき台にしてそれに○×をつけていって、新しいものを加える、減らすというやり方が効率的なのかどうか。現状として子供のがんの医療のかなりの部分を小児病院が担っているというようなこと。それから、患者さん、ご家族の立場から療養環境、それから子供の権利というような観点での学校だとか面会だとかの問題を考えると、やはり子供独自の基準というのがあるべきなんじゃないのかなというふうには思っているところです。
ちょっと話がそれるんですが、疾患別の拠点にした場合に、大事なことだと思うんですが、では例えば年間に50例、60例しかいない発症しない特殊な手術をするお医者さんをどこの病院がお金払って何人雇いますかということになってきてしまうと思うんですね。1年に何回手術するだけみたいなことになりかねない、非常に難しい問題のように思います。
患者さんの数が多くない、その疾患の例えば拠点施設だとして、お医者さん一人だけでは恐らくやっていけない、何人かのスタッフが必要だ。でも、年間に来る患者さんは20人しかいない。当然そのためだけに仕事をするわけにはいかない。ですので、そういう観点ではやはりある程度大きなところに集めていくという方向性もとらざるを得ないのかなというふうには感じます。私、経営に関しては余りよく分からないので、イメージでのお話ですけれども。
○檜山委員長
今のご意見。
○堀部専門委員
疾患別というか、要はやはり牧本委員が言われたように、やはり外科というか局所療法の領域別みたいな形にはなると思うんですね。脳外科領域なり整形なり骨軟部、脳腫瘍という言い方でもいいのかもしれませんけれども。やはりきちっとそこの領域の腫瘍に関して見れるよと、小児がんの拠点だから全てが見れるというふうに一般には映ってしまうので、患者さんから見てこの分野のことの領域の拠点だということがかえって分かるほうが、そういう示し方のほうが親切じゃないかなと。だから、その領域を幾つか、フルスペックはいけないんだ、全ての領域ならそれを並べればいいかなと。
○檜山委員長
原委員、どうぞ。
○原専門委員
13ページに私の意見を書いているんですが。がん拠点ということで、小児病院に関しては若干のモディフィケーションが必要だろうと思いますが、基本的には同じような要件を満たしていただいたらいいのかなと。がん拠点病院の要件を幾つか引っ張り出して小児用に若干モディファイしたものを一応書いてみたんですが。これって小児病院でも実現可能だろうと思うんですね。だから、やはりこういうことができる病院を拠点として、あるいは保険制度上も何らかのインセンティブをつけてやっていくと。
1−3−(3)に小児脳外科医、整形外科医、小児腫瘍の経験豊富な脳外科医、整形外科医が勤務している、あるいはしていないでどれだけの腫瘍が見れるかというのは決まってくる話なんですよね。だから、そういう要件を条件をちゃんと外へ出しておけば、ああ、ここは脳外科医がいないんだなとか、整形外科医がいないんだなということで話は済んでくるだろうと思います。
あと、診療のレベルというのをどうであれば担保できるのかと、そこはなかなか難しいところで。例えば、小児腫瘍を年間100例以上診療しているという要件をつけたとしますよね。そうするとゼロです、日本では。それを50だとする、そうすると二つぐらい。それを30ぐらいまで持っていくと多分、どれぐらいになるのかな、10か20ぐらいになってくる。というような感じなんです。ですから、どれぐらいであれば技術的に担保できる数なのかというところを、これは各論になってくると思うんですが、そこを考えた上で話が決まってくるのかなと。
ですから、現状ではそうなんです。だから、例えば50で決めてもいいかもしれません。そうすると30ぐらいのところに、やはり駄目か、やはり30ぐらいのところまで入れておくとだんだんふえてきて、30のところは50の症例になってくる。そうすると次は50で切るというそんな感じになっていくのかなと、イメージ的にはね、思うんですけれども。
○鈴木がん対策推進室長
成人のほうのがん拠点の話がちょっと出ましたので、参考資料2のほうに付けさせていただいておりますが、ちょっとご覧いただきたいんですけれども。実は成人のほうのがん診療連携拠点病院というのは診療の部分と連携の部分と、それから地域できちんと周りのほかのがんの病院をサポートするという、そういう三つの役割があるというのがまず前提です。
それで、基準の中もやはり2ページにあるような、診療体制で規定しているもの、それからその次、5ページですと医療施設全体の箱もので指定しているもの、それからあと情報提供ということで相談支援なり、それからあと院内がん登録、その他研修というものということで。こういった病院を拠点病院としているということで。診療レベルだけで言うと、実は今の都道府県、地域拠点もそうなんですけれども、これ以上の病院はまだたくさんあります。ただ、その中でもここは拠点としているのは、そういったほかの付属機能も含めて拠点という言い方をしているというところをちょっとご紹介させていただこうかと思います。
○檜山委員長
貴重なご指摘だと思います。ですから、ちょっと今のお話をまとめさせていただくと、私の資料で申しわけないですけれども、3ページのところに一番下に書いてあるんですが、一応今の小児がんを見れる、ある程度の包括できる医者とそれから医療関係者という診療レベルのものと、それから施設というものと、それからもう一つは連携ということ、それから教育ということも含めて、そういうものを一応拠点とすべきだということで、皆さんそれは問題ないですね。
○森専門委員
賛成なんですが。一つ、今室長がおっしゃった、例えば連携という観点で、成人がんというのは国民の数人に一人は発症する病気であって、これを国の医療で担おうとしたときの連携の必要性。それから、小児がんは1万人に一人の頻度のものを連携する必要性、その仕組み、これが同じかどうかというのはやはりよく考えなければいけないんじゃないか。その意味での子供用のモディフィケーションというかそういうことは、子供にもっと必要なこと、これは大人にはもっと必要なことというのが、恐らくかなり色分けが出てくるんだと考えています。
○檜山委員長
先生が言われるのは確か、各論にそういう細かい、これ全て当てはめようという話ではないので、そういう連携というものがある意味で必要だという、子供は子供なりの連携が必要だということに理解していただければいいと思うんですが。
必要だということでよろしいですか。
それが、あと3ページの下に書いてあるように、造血腫瘍とか脳腫瘍とか整形外科腫瘍について、全てを包括するというのはある意味で現実味がないので、そういう臓器別あるいはがん種別の拠点ということもあってもいいのではないかということで。
異論ございますでしょうか。
○原専門委員
ちょっと妙なことになっちゃうと思うんですね。例えば骨軟部腫瘍だけというのも本当にそれがいろいろなことを担保できるのか、多分できないと思うんですよ。確かに手術はできる……
○檜山委員長
各論なので、どれをどうするかという議論は今はしていなくて、そういうものもあってもいいのではないかという。
○原専門委員
疾患ごとというよりも、小児がん全体が見れて、かつこれも見れる、あれも見れる、これも見れる、あれも見れないというそういう切り分けじゃないかなと思うんですが。疾患ごとというのはそういう意味かなと理解するんですけれども。一つのがん種だけというのはどうかなと思います。
○檜山委員長
馬上委員、いいですか、それ。
○馬上専門委員
やはりかなり高い専門性というが求められると思うので、あれもこれもじゃなくて、やはりこの専門ですと言っていただけると、患児家族はすごく分かりやすい、それを標榜していただくと、ああ、そこなんだというふうに分かるんですけれども。ちょっとそこのところは。
○原専門委員
それも標榜したらいいと思うんですね。ただ、例えば骨軟部だ、あるいは脳腫瘍だという場合、多くの場合、それだけだと例えば緩和ケア医がいるとか、ほかのいろいろなところを全部満たすというところが少なくなってくるのかなと。もちろんそれが満たされておればいいとは思うんですけれども。そういう意味なんです。
それと、ほかの病気が見れないとそれもぐあいが悪いわけですよね。脳腫瘍は見れるけれども内分泌見れないとか、そういうことになってもぐあいが悪いと、そういう意味です。
○檜山委員長
どうぞ。
○馬上専門委員
そういう必要な体制ですよね、それが整っているということですね。それは本当に必要だと思います。
○檜山委員長
皆さん思われていることは大体同じ方向だと思うんです。ですから、拠点も一応検討すべきであるということなので、どういう形で置くかということは皆さんがんの、どういうものを、例えば造血器だけというのはあってもいいのかなと僕は個人的には思いますが。そういうものはあってもいいのかなと思いますが、先生言われるように、骨軟部腫瘍だけで成り立つのかというのはやはり検討課題だというふうに理解していただければと思うんですけれども。
大体予定の時間がきて、まだもう少し積み残しがあるんですけれども、最後にフォローアップのところの項目を少しディスカッションを始めておきたいと思うんですが。このところはやはりフォローアップに対してはいわゆる今の拠点と言われている病院が同じところがフォローアップすべきなのか、フォローアップ体制は別に考えるべきなのかというのは、少しだけ議論していただいて、また次のいわゆるフォローアップと患者支援のほうに一応次回に持ち越したいとは思うんですが。ちょっとその辺のご意見もしあれば、今いただければと思うんですけれども。
馬上委員、どうぞ。
○馬上専門委員
患児家族としては、やはり診断治療していただいたところでフォローアップしていただくのはすごい安心感があるんですけれども、地方の方はやはり集約化されたところに来て、また元に戻らないといけないので、そうしたしっかりした連携病院で長期のフォローアップをしていただけるというのがとてもありがたいと思います。
○檜山委員長
ですから、フォローアップはもう少し別の形で考えるべきだというご意見ですか。
○馬上専門委員
ただ、小児がんの知識が全くない病院で長期フォローアップというのはできないと思うんですね。
○檜山委員長
それはもちろんそうなんですが。今我々が拠点と言う、どういうふうに診療体制あるべきかというふうに考えた診療施設で全てフォローアップをすべきなのか、そうではなくてフォローアップをする形というのはフォローアップ、いわゆるフォローアップあるいはサバイバーを支援する支援事業というような形で少し違う形のものを考えたほうがいいのかというところは皆さん少しずつ思いが違うのではないかなというので、ちょっとご意見だけいただきたいなと思ったんです。
小俣委員、どうぞ。
○小俣専門委員
檜山委員長の資料にもありますが、フォローアップセンターという構想は堀部委員の研究などでも聞いているんですが。成人をした場合には、例えば慢性的な疾患になった場合というのは、その拠点病院で、小児の病院で成人した私たちが受診をするというのはちょっとどうかなというふうに考えます。適切なところで診療を受けていくということはまず必要かなと思うんですが。何をフォローするのかというところで。一つ、疾患ということについては今申し上げたように、適切な診療科につなげていただくということが一つあると思うんですが、社会的な問題を抱えていた場合というのは、それは拠点病院で継続して相談をしていたかもしれませんが、やはりもしフォローアップセンターというところがあるのであれば、拠点というかそういう相談の場所があるということは、小児がんを経験したものにとっては周知されやすいことでもありますし、相談しやすいところです。ですので、そういうセンターというものがもしできるのであれば、それはさっきの全部がそろっているような病院の中にセンターがあるのか、それはちょっとどういう形かというのは今申し上げられませんけれども、そういうセンターをつくっていただきたいということは一つ提案させていただきます。
○原専門委員
全国に1個みたいなイメージですか。
○小俣専門委員
はい、そうですね。全国に1個、あるいはさっき二、三施設あったらいいというような全てそろっているような病院にもし付属してあるのであれば、そこに付属施設としてつけていただきたいなというふうに考えます。
○檜山委員長
ありがとうございます。
ですから、今の小俣委員の考え方では、フォローアップとしてはいわゆる今の診療とは少し別の観点から考えたほうがいいのではないかなというご意見だと思いますが。その辺りを次の課題のほうに送らせていただいて、次回は長期フォローアップと家族、それから患者支援ということで少しフォーカスを変えて皆さんにご議論いただこうかと思います。
本日いただいたお話については、一応私のほうでとりまとめをさせていただいて、皆様に一応お送りして、文書として確認していただきたいというふうに思いますので、その辺をご了解いただいてということで、一応今回の議論のご意見等は私に一任していただければと思いますが、よろしいでしょうか。
どうぞ。
○堀部専門委員
1分だけ、申しわけない。せっかく資料を用意して皆さんにご紹介しなかったので、ちょっと時間がなくて申しわけないんですけれども。
○檜山委員長
どうぞ。
○堀部専門委員
参考資料3で、小児血液学会と小児がん学会が今度統一されて小児血液・がん学会になるに当たりまして、専門医制度を用意していまして、そこでこの小児血液・がんの臨床力のある人を専門医として認定して、そして質の高い専門医療を提供しようということで始めます。
そこには小児血液・がん専門医、これは小児科医を対象にした専門医制度です。外科医を対象に認定外科医ということで、一つの学会で専門医制度を二つつくるのは現段階では難しいということで、認定外科医という形で小児科医と小児外科医をそれぞれ認定していくという制度であります。
細かいことを説明する時間はありませんけれども、13ページ目の第13条のところにこの専門医の要件というのがあります。それなりの研修を経た人を専門医として認定をするという要件になっています。
それを当然指導する側の人が必要ですので、次の4ページの23条のところにそれを指導すべき役割の人の認定要件がありますし。5ページの32条、今申し上げる条のところだけ後でご確認いただければいいと思いますが。ここに小児がん認定外科医の認定要件があります。
一番大事なのが7ページの第40条のところで、そういった専門医を育て教育するのに専門医の研修施設というのが必要になりますので、ここに施設要件が挙がっていまして12項目、現段階で、天野委員が言われているように、現状認識だけじゃなく、少しやはりハードルを高くして、だけれども理想をあげすぎると現状の臨床と乖離してしまって、逆に診療に支障が来たすだろうということで、少し高いレベルでもって理想とするものをここに掲げています。
40条の最後にあるように、暫定認定要件ということで、最後のページにこれをさらに緩める形で認定を始めて、5年ごとに見直して、ここで議論しているような集約化、それぞれの専門施設というのがより明確化になっていけるようなシステムにしたいというふうに学会側も考えていますので、また一度お目通しをいただければというふうに思います。
それから、細則のほうに細かい規定がありまして、一つだけ見ておいてほしいのは、12ページの第8条のところに13ページにわたって、専門医が経験すべき症例数等が載せてあります。これも本当にこの数だけで十分かどうかというのは今後また検証していかないといけないことかと思いますけれども、これまでの臨床経験、それから現実的に経験できる経験数から可能な症例数から設定していますし。
15ページの20条、22条のところには、今度その施設の要件としてどのぐらいの診療実績のある施設を認定していくかと。これも現実なところわずか3年間で10例のそれぞれの初発例を経験し、合計30例以上ということで。そういう意味では欧米に比べればまだまだその辺の専門性という意味では低いレベルかもしれませんけれども、今後これを踏み台にして、5年ごとに見直す形で、ここの議論にあるような専門性の高い施設というものを患者さんたちに明示できればというように考えています。
以上です。
○檜山委員長
ありがとうございます。
どうぞ、馬上委員。
○馬上専門委員
これですと、脳腫瘍とか骨軟部腫瘍は1例を経験すればいいという。
○堀部専門委員
そうですね、専門医の人には30例のうち15例は各分野幅広く経験を確認をするということで、最低1例ずつということを要件にしているんですね。
○馬上専門委員
分かりました。そうすると、脳腫瘍は1例で専門医というふうに言われてしまうということなんですね。
○堀部専門委員
そういうことです。この記載をしないと、逆にごく偏った疾患だけ見てて小児がん専門医、血液がん専門医ということになりますので、幅広い知識と経験を持ってもらうという、最低1例という規定であります。
○馬上専門委員
今後その疾病別の専門医制度というのはできないんでしょうか。
○堀部専門委員
まだ議論にはなっていませんが、当然次のステップ、さらにその次の次のステップというところでそういう議論にはなるかと思いますけれども。現段階ではこういう血液がん領域の小児科の専門医というものがない状態ですので、そこをまず社会に明らかにするということで、このような基準にさせていただいています。
○檜山委員長
ありがとうございます。今のは学会側からの検討内容、ご報告ということで。
○堀部専門委員
そうです。
○檜山委員長
あと、馬上専門委員等から資料をいただいているのは、患者さん側のアンケート資料等もいただいておりますので、あとがんの子供を守る会をはじめいろいろな調査をしていただいていろいろな資料をいただいていますので、その辺りは十分に参考にして、我々の意見出しにさせていただきたいというふうに考えております。
本日は時間が過ぎてしまって、司会の不手際で申しわけありません。
あとは次回のことについて少しお願いしたいと思います。テーマは一応先ほども申しましたが、患者・家族への支援と長期フォローアップというふうにさせていただきますので、また意見出しを2週間ぐらい前までにお願いするようになると思います。
期日ですが、先ほど各委員の少しご都合をお聞きして、一応候補としてまた室長のほうでご検討いただきたいんですけれども。3月17日ということが皆さんの、17日、木曜日の午後ということで、一応皆さんのご都合が、馬上委員には申しわけないですけれども、何とか都合をあわせていただいて、何とか皆さんがご出席可能な日は3月であれば3月17日ということなので、その辺りを一応押さえておいていただいて、あとは対推室のほうと検討させてご連絡させていただくということにさせていただきます。
それから、本日もお二人の参考人の先生、どうもありがとうございました。非常に貴重なプレゼンテーションをしていただいて、皆さん非常に参考になったんじゃないかと思います。
次回ももし必要であれば、お二人程度の参考人をお呼びしたいと思うんですが。この場でもし何かあればご提案していただいてもいいですし、その後もしあれば、私と鈴木室長のほうに連絡していただいて、また検討させていただくということになりますが。もし今何かあればご提案されても構いませんけれども。
どうぞ、小俣委員。
○小俣専門委員
長期フォローアップに関しては、いつもご指導というかご指示をいただいたりしているので、堀部先生ももちろん研究班でおられるので、イシダヤスシ先生にお出でいただけたらいいかなと思うんですが、堀部先生、いかがでしょうか。
○堀部専門委員
イシダ先生、この分野についてはずっとリーダーシップをとってやってきていただいていますので、一度皆さんにその経緯も含めてお話しいただくのがいいと思います。
○檜山委員長
そういうご意見を伺っておくということで、また対策推進室とご相談させていただいて検討させていただくということで。
もしまだ参考人の方でご推薦とかこの方という方があればまたご連絡いただければ検討させていただくということになると思います。
最後に、事務局から何か連絡事項等ありましたらよろしくお願いします。
○鈴木がん対策推進室長
それでは、次回、第3回につきましては、3月17日を最有力候補として日程、場所等を調整させていただきますので、また正式に場所が決まり次第、ご連絡をさせていただきます。
また、一応意見出しということで、2週間前ということになりますので、3月17日ですので、2週間前だと3月3日までということでまたご意見をいただくことになると思いますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。
○檜山委員長
では、本日はこれにて第2回の小児がん専門委員会を終了させていただきます。
どうもありがとうございました。
<照会先>
健康局総務課がん対策推進室
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