クローズアップ2013:バルサルタン臨床試験疑惑 責任追及に課題多く 有識者検討委、調査に強制力なし
毎日新聞 2013年08月10日 東京朝刊
関係者によると、日経BP社は2000年11月にバルサルタンが発売される前から、ノ社によるプロモーション戦略に参画。ノ社の社内資料によると、バルサルタンの広告は「日経メディカル」ともう一つの別の業界紙に集中し、東京慈恵会医大や京都府立医大の臨床試験の経過や成果を、大きく紹介してきた。疑惑の表面化後、日経メディカルなどでの一連の宣伝の過剰さを批判する声があり、ノ社は7月29日の記者会見で「真摯(しんし)に反省している」と謝罪した。
ある委員は「委員会の信頼性が疑われかねない」と懸念するが、日経BP社は「専門知識を買われ就任した。当社としても今回の問題については検証報道を続けており、就任に問題はないと認識している」とコメントしている。【八田浩輔】
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◇臨床試験疑惑に関する厚生労働省の検討委員
稲垣治 ・日本製薬工業協会医薬品評価委員長
桑島巌 ・NPO法人臨床研究適正評価教育機構理事長
曽根三郎・日本医学会利益相反委員長
竹内正弘・北里大教授
田島優子・弁護士
田代志門・昭和大講師
花井十伍・全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人
藤原康弘・国立がん研究センター企画戦略局長
宮田満 ・日経BP社特命編集委員
森下典子・国立病院機構大阪医療センター臨床研究推進室長
◎森嶌昭夫・名古屋大名誉教授
山本正幸・公益財団法人かずさDNA研究所長
◎は委員長
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■ことば
◇バルサルタン臨床試験疑惑
ノバルティスファーマの降圧剤バルサルタンに血圧を下げるだけでなく、脳卒中予防などの効果もあるかを調べた5大学の臨床試験に、ノ社の社員が参加していたことが3月末に発覚した。論文上の社員の所属は、非常勤講師を務めていた「大阪市立大」などとされ、社員の関与は外部から分からなくなっていた。ノ社が薬の宣伝に利用した東京慈恵会医大、京都府立医大の論文でデータ操作が見つかった。