抗議乗車、非協力乗車、任意確認乗車
同志であるマスターさんが、「男性が女性専用車両(という名の一般旅客車両)に乗車すること」の呼称について、問題提起をされています(「マスターの部屋」 「非協力乗車」という名称の是非 http://blogs.yahoo.co.jp/biomass1620energy/63235940.html)。
そこでも触れられていますが、そもそもは、「抗議乗車」と呼ばれていました。しかし、「抗議乗車」と言うと、「電車内で抗議行動をする」という意味にもなり、「示威行為」と言われかねない、という指摘があり(注:鉄道警察隊からの指摘もあったのかも知れないが、この指摘を最初にしたのは、私・ドクター差別であったように記憶する)、私は(「差別ネットワーク」としては)、この時、すでに、「任意確認乗車(=任意性が担保されているかどうかを確認するために女性専用車両という名の一般旅客車両に乗車すること)」という言葉を使い始めていました。
そして、現在、「差別ネットワーク」と協力関係にある「女性専用車両に反対する会」は、「何か、いい呼び名はないか?」ということで、「抗議乗車」の意志を受け継ぎながら、「示威行為」と指摘されないための呼称として「非協力乗車」をいう言葉を使うようになりました。「理不尽なこと(=女性優遇、男性排除、男性差別)に協力しない」という意味では、もっともなネーミングです。しかし、その一方で、「協力すべきことに協力しない」という意味にも受け取られかねない呼称、誤解されかねない呼称でもありました。
と言うことで、「差別ネットワーク」としては、反対派が行う「同じ行動を違う名称で呼ぶ」という統一性のなさにあえて目をつぶり、その後ずっと、「任意確認乗車」という呼び名を使い続けています。今は、「男性差別を許さない市民の会」も、「任意確認乗車」という呼称を使っています。
そこで、今回、マスターさんから、新しい観点からの指摘がありました。私は、これまで、「非協力乗車」は、前述通り、「協力すべきことに協力しない」と受け取られかねないことを危惧していたのですが、マスターさんに言わせると、「協力しないのではない。私らは協力している」というわけです。たしかに、私らは、鉄道会社が「任意」だと言うから、「男性も乗れる」と言うから、乗っている、つまり、私らは、鉄道会社の言っていることに「協力している」のです。なら、「非協力乗車」という呼称は、「おかしい」となるわけです。
これは、逆に言えば、鉄道会社から、「乗るな」と言われれば、乗らない、ということでもあります。マスターさんには、この「協力する」という思いが強い、だからこそ、JR東の本社に行った際に、「JR東が、『あけぼの』の女性専用車両に乗るな、というなら乗りません。協力します」と言っていたのです。その際は、「あれっ? こうもアッサリ、乗らない、協力する、って言ってしまっていいのかな?」と思いましたが、真意は、ここにあった、「乗れる」と言うから、乗る、「乗るな」と言うなら、乗らない、ということだったのです。
「女性専用車両」は、「任意」、「男性も乗れる」のですから、男性が乗るのは「非協力乗車」ではなく、むしろ、「協力乗車」です。「非協力乗車」という呼び名がピッタリなのは、「あけぼの」の「女性専用車両」のように、鉄道会社が「乗れない」と言っている「女性専用車両」に乗る場合です。この場合は、たしかに、鉄道会社の言っていることに協力しない、すなわち、「非協力乗車」となります。
とは言え、誰がどんな名称で呼ぼうが、それは自由です。決めるのは、他人ではなく、本人(当事者)です。あくまで、参考意見です。
ところで、「あけぼの」の「女性専用車両」ですが、本当に、「男性が乗れない」なら、それこそ大問題です。①運送約款に書かれていない、②どの表記・表示が「本当」で、どの表記・表示が「ウソ」なのか、統一性が全くない、③乗れる女性の定義が曖昧である、などの問題点以前に、憲法違反に問われる大問題です。さてさて、男性という理由で「一般旅客車両」にすぎない女性専用車両に乗せない、男性を差別する、これに対して、鉄道会社は、どういう合理的理由をつけるのでしょうか?(注:JR東本社の社員は、「差別ではない」などとトンチンカンなことを言っていたが、そんなことを言っているようでは論外、「差別」は「差別」だが、どういう理由で「不当ではない」のか、その合理的理由が問われるケースである)
ただし、「協力」していては、憲法違反に問うことはできません。憲法違反に問うためには、「非協力乗車」をしなければなりません。なぜなら、憲法違反を問うには、訴訟を起こさなければならない、訴訟を起こすには、実際に、「あけぼの」の「女性専用車両」に乗り込み、強制排除(=強制移動)させられた、という事実がなければならない、からです。さてさて、どうしましょうか?
ちなみに、JR東としては、「性同一性障害の人」は、見かけにかかわらず、「乗車可能」とのことです。しかも、これは「自己申告でOK」だそうですから(注:たしかに、いちいち、「医者の診断書を見せろ」とは言えないだろう)、かなり、あやふやな基準です。今後、「私は性同一性障害です」という人が増える可能性がありますが、JR東は、どう対処するのでしょうか、興味あるところです。
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北斗星1号様
もちろん、こちらに「抗議」の意図があるとしても、それを公言しなければ、何の問題もありません。先方が「抗議の意図があるはずだ」などと言っても、無意味です。
しかし、公言すれば、つまり、「抗議乗車」などと公言している場合は、こちらが何か微妙な行動をすれば、先方から「抗議だ」、「示威行為だ」などと「揚げ足」を取られかねません(もちろん、「揚げ足」を取られかねないことを一切しなければ、「抗議乗車」と公言したところで問題はありませんが)。
また、「抗議ではない」と明言することで、こちらの行動の合法性や正当性が強調される、という利点もあります。
2011/5/23(月) 午前 1:54
実は、この問題についても、小樽の公衆浴場の(外国人入浴拒否)事件が参考になります。
他にもたくさん浴場はあるのに、原告は小樽の「その浴場」にわざわざ押しかけて来た。これは、被告(浴場経営者)から見れば「(『嫌がらせ』『営業妨害』という意味に近い)抗議」以外の何物でもない。当然ながら、被告は裁判で「原告の行為はけしからん」と非難しました。
この点について、札幌地裁は
「確かに、人種差別に対する抗議や人権運動のアピールという側面はある」
と認めつつも、
「しかし、その浴場に入浴したい客として来店し、しかも他の客に迷惑を掛ける恐れは無かったのだから、本件入浴拒否は不当な人種差別であり、(民法上の不法行為という)被告の行為の違法性がなくなる訳ではない。」
としています。
これを「女性専用車に(わざわざ)乗車する男性客」に応用したらどうなるか、「抗議」の意図を公言したら、本当に「先方」から「揚げ足を取られる」のか‥?というところです。
2011/5/23(月) 午後 6:01 [ 北斗星1号 ]
北斗星1号様
>「抗議」の意図を公言したら、本当に「先方」から「揚げ足を取られる」のか‥?
「再臨界する可能性はゼロではない」という表現と同じで、「揚げ足を取られる可能性はゼロではない」ということです。
まあ、確率は誰も確かなことは言えませんが、予防策を講じるのは、「間違いではない」、「悪いことではない」、もし確率が高いなら、むしろ、「賢明な策」となるでしょう。
2011/5/23(月) 午後 6:51
>>ただし、「協力」していては、憲法違反に問うことはできません。憲法違反に問うためには、「非協力乗車」をしなければなりません。なぜなら、憲法違反を問うには、訴訟を起こさなければならない、訴訟を起こすには、実際に、「あけぼの」の「女性専用車両」に乗り込み、強制排除(=強制移動)させられた、という事実がなければならない、からです。
あけぼのは、一度乗車拒否に遭ってるでしょう?訴訟を起こすには、あれで十分ですよ。仮に法律上及び契約上あけぼのの当該座席に乗車できるとすれば、JR東の行為は明らかに不法行為です。
一度乗車拒否にあっているし、窓口で発券拒否に遭っているのですから、「料金と引き換えに乗車券を売れ」という形の訴訟さえ可能です。こちらはJR東に法律上売る義務が肯定できるならですが。
JR東の行動には法的に見て矛盾があります。乗車契約が発券時に成立するなら最初の乗車拒否は違法(債務不履行)ですし、乗車契約が乗車時に初めて成立するなら、発券拒否の理由がありません。
2011/5/24(火) 午後 8:26 [ キンメル ]
キンメルさんは、誰を相手に裁判ができる、と言われているのでしょうか? 駅員相手ですか? 窓口相手ですか? もしそうなら、(私は当事者ではありませんが)当事者なら、今でも裁判は可能でしょう。
しかし、この場合、もし、JR東が、「現場が勝手に判断してしたこと」と言ったら、どうしますか? 実際、本社も現場も、言い分が2転、3転していました。
「本丸」は、JR東本社です。なら、JR東本社が「(「あけぼの」の「女性専用車両」は)任意ではない」と明言した5月13日以降、裁判をするのがスジでしょう。「任意ではない」と言われても、男性が乗車し、「強制排除(強制移動)」が行われた場合、どちらが裁判を起こすにせよ、裁判になる可能性は高いでしょう。
2011/5/24(火) 午後 10:44
ドクター差別さんがあけぼのの当事者であると、誤解していました。その点は申し訳ありません。
訴訟の相手は当然JR東でしょう。あけぼので乗車拒否された当事者が、使用者責任ではなく、組織としてのJR東の不法行為責任を追及すればいいです。あの状態は、明らかに会社の組織的な活動です。現場の勝手うんぬんで会社を免責してしまうほど裁判官は馬鹿ではありません。
2011/5/24(火) 午後 11:11 [ キンメル ]
>あの状態は、明らかに会社の組織的な活動です。
もちろん、私もそう思いますが、少なくとも、5月13日以前は、JR東本社としては、「任意ではない」とは明言していないので、言い逃れる可能性はゼロではないでしょう。
>現場の勝手うんぬんで会社を免責してしまうほど裁判官は馬鹿ではありません。
「馬鹿」とは言いませんが、そうとうトンチンカンな場合がありますよ、裁判官の判断には。何しろ、目的の正当性と手段の正当性を一緒にしたり、 社会で認知されていることを正当性の理由の1つに挙げたり、非合理的なことを当たり前のように言いますから。
2011/5/25(水) 午前 0:41
現代日本に於いて、正しく白黒付ける為に裁判をというのであれば、昨今の様々な事例をみる限り疑問符をつけざるを得ません。
我々一般人は司法というと絶対的なもののように思いがちですが、足利事件や布川事件等をみただけでも解る通り現代の司法官は、調べる側(検事)判断する側(裁判官)どちらも法を預かる番人なのだという本分を忘れ去っています。本来ならば司法の大原則である「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の利益」を適用すべきところを、疑わしきを罰するどころか明らかに「犯罪者は作り出すもの」とさえ成り下がっております。
司法官全てそうだとまで言いたくはありませんが、そのての連中ですら平然と法の番人ヅラしているような伏魔殿で、公平・公正な裁判が望めるとはとても思えません。しかも今度は舞鶴事件のように、物的証拠が乏しくとも彼等が怪しいと一言いえば「状況証拠」だけで有罪とする事まで可能なのです。
この国の司法に過度の期待をするのは危険です。
2011/5/25(水) 午後 3:01 [ 隣接法律職受験生 ]
隣接法律職受験生様
おっしゃる通りです。
裁判官は「絶対正義」ではありませんし、法律も、憲法でさえ「絶対正義」でもありません。不当なことが、必ずしも、違法になるとは言えない、その点は、法律の専門家でなくても、法律の専門家ならなおさら、肝に銘じておく必要があります。
なお、ご指摘のように、「疑わしきは罰せず」が守られていないどころか、「目的と手段の正当性の混同」、「多数決絶対主義」など、論理自体に問題がある場合が多々あります。あるいは、「差別」についての判断を下さねばならないのに、「差別とは何か?」すら知らない裁判官がいるのですから、何をかいわんや、です。
2011/5/25(水) 午後 5:18
ドクター差別様
法に携わる人間=即ち公平・公正な判断力、見識、良識が求められる
=『差別についての正しい知識が必用』
という事を、法律についてほんのさわりの部分を噛じった初学者の身ではありますが、本当に噛じれば噛じる程益々強く感じます。
昨今のデタラメとしか思えない不当な判決の数々をみると、現代の司法官には決定的にこの差別に対する認識・知識が欠けているが為、司法そのものがおかしくなっている元凶だと思います。
私は法に携わる者の本分としては、弁護士バッヂに表されるように本来どんな法律、学問よりも差別に関する正しい知識を学ぶべきではないのか?そう思うようになりました。その大切な事を気付かせて下さったドクター差別様には本当に感謝しております。
2011/5/25(水) 午後 9:03 [ 隣接法律職受験生 ]
隣接法律職受験生様
その通りです。法律家たる者、知識よりも良識(=識見)が大事なのですが、そういう試験になっているのか、資格になっているのか、法曹界に関係のない私でさえ、疑問を抱いています。
まあ、これは、政治家についても言えるんですが・・・。本来、何かの専門家であるべき政治家が、若さや容姿、知名度、世襲など、院内では何の役にも立たない要素で選ばれる、というのは、全くもってナンセンスの極みです。
いずれにせよ、そういう本来、資格を持つべきでない人たちが資格を手にするとなると、その権力の横暴が危惧されるのは当然でしょう。困ったものです。
2011/5/25(水) 午後 11:14