顧客や上司、ユーザーの場当たりな要望に対応しつづけると、どんなアプリもゴミアプリになる。たとえそれが理にかなった要望であっても。
なぜなら面積の限られたスマホでは「一画面の機能数とボタン数」が、使い易さと品質に深くリンクしているからです。
ということを、エラい人にプレゼンするのがお仕事の今日この頃。でも毎回毎回、同じことを説明するのがシンドイので資料をブログにまとめたいなぁと思うなど。
思考実験として、ここでは架空事例としてTwitterアプリを例に考えてみる。
何かの間違いで、日本の大手メーカーがTwitterを買収すると・・・UIデザイナーが体を張らないと99%ぐらいの確率でこうなるのです。
ここがオリジナル
Request1: ダイレクトメッセージをトップ階層に
ユーザーからの真っ当な要望。実際にはサービスの本質ではないのですが、要望はかなり多いはず。
ただTwitter社的にはmention, tweet, messageと似たもが並ぶので、隠しておきたかったのでしょう。しかしお客様の声は神の声、ここではタブに追加してみます。
ダメ度 + 0.1
Request2: 未読件数がわかるようにバッジが欲しい
アクティビティを増加させたいエラい人からの要望です。
消費の速いストリーム系のサービスでは、絶対にヤメた方がいいのですが・・・実際につけてみても、タイムラインやメンションに3000とかついても意味無さげ。微妙な提案ですが、「ユーザーに新たな操作が発生しない」ので、まぁ使いにくくはないだろう・・・とGOサインが出る。
この頃から、アプリ開発社業界でなんかTwitterのアプリやばくねぇ?みたいな声が聞こえ始めます。
ダメ度 + 5
Reques3: タイムラインから直接RTやFavができるようにして欲しい
「スワイプのジェスチャーは判りにくい」とか「webと操作を統一したいから」と言われました。
本来、ジェスチャーは「無くても大丈夫な親切機能をオマケで入れている」はずが、なぜか必須機能扱いに・・・タイムライン上の細かいナビがWebで成立するのは、ロールオーバーがあるから。スマホはロールオーバーがないので面積的に成立しないのです。Twitterの本質である呟きの表示面積が圧迫され、タイムラインが一気にカオス化します。
そろそろブログやタイムラインで、玄人にディスられはじめる。
ダメ度 + 5
Reques4: タイムラインからフォローできるようにして欲しい
「面白いRTとか流れ来たらフォローできるように!」というご意見が当然のように降って来て、タイムラインにフォローボタンも追加することに。
それぞれのリクエストはそこまで間違っていないはずなのに・・・プロジェクトが明らかに怪しくなってきます。
ダメ度 + 5
Reques4: タイムラインに最初から写真を表示して欲しい
画像が多いほうが楽しいとか、アクティビティがあがりそう!という直観のもとやってくるリクエスト。
iOSの面積問題と、文章をスムーズに読ませる為の写真なしなんですけどね・・・対応するとインスタグラムかよ!と突っ込みたくなる外見に。一画面に2〜3ツイートしか表示できずTwitterの本質が更に失われて行きます。
ダメ度 + 15
Reques5: Instagramみたいにさ、Tweetボタンをセンターに強調して欲しいんだよね
隣の芝生は青くみえちゃうもの。「競合サービスがやってるアレつけましょうよ!」は、クライアントの十八番です。
ところが無計画にダイレクトメッセージをタブにした弊害が、ここで呪いのように伸し掛かる!。タブは最大5個なのでもう追加できない。しょうがないのでセンターにツイートボタンを配置し、「ハッシュタグは検索と似てる」ということで、ヘッダーに強引に移動。さきほどつけたバッジがイイ感じに五月蝿いですが、一度つけた機能ははずせないので考えないことにします。
ディフォボタンを再移動したこの瞬間から、レビューに「使いにくくなった、クソアプリ!」などの発言が突然目立ち始めます。
上層部で揉めて、「一度つけた機能の移動は禁止」ルールが生まれます。
ダメ度 + 20
Reques6: Twitter Musicはじめたから、音楽もタイムラインから再生して欲しい
新サービスアピールにウィジェット表示しろとか、しかも目立たせろとか無理難題が降って来ます。
さようならTwitterアプリ。もはや普通のチームでは助けられない領域へ。
ダメ度 + 30
もうこの辺からは、あきらかにゴミアプリなので巻きでいきましょう。
タイムラインに、返信、RT、Favの件数を表示したい。
「ひっぱってリロード」がわからないユーザーもいるので、リロードボタンをつけたい。
1画面に表示されるツイートが少ないので、文字スペースを大きくしたい。
今後の拡張性を考えて、ドロワーを採用したい。
結果・・・どうみてもクソアプリです。本当にありがとうございました。
面白いのは、それぞれのリクエストは、多少の見当違いはあれどそれなりに真っ当な意見だったこと。おそらく個々を単体でABテストをすれば、アクティビティが確実に増加するような機能が大半です。
それなのに「妥当な苦情、妥当な改善案でも、数が増えると破綻する」というのは、ある意味不思議な現象です。
では、このような破綻は何故発生するのか? どうすれば防げるのか!?
・・・というところで、エントリーが長くなりすぎたので次回に続く。
おまけ
インターフェースが分かりにくいので高機能なヘルプが欲しい。
意味がわからない人はこちら