東京電力福島第一原発の汚染水問題で、政府が国費を投入して対策に乗り出す。1日300トンの汚染水が海に流出している可能性があるという。対応が後手に回り続けている状況を見れ[記事全文]
東京都調布市の小学校で、乳製品にアレルギーのある5年生の女児が給食を食べた後に死亡した事故で、市の検討委員会が再発防止策をまとめた。学校は注意していなかったわけではない[記事全文]
東京電力福島第一原発の汚染水問題で、政府が国費を投入して対策に乗り出す。
1日300トンの汚染水が海に流出している可能性があるという。対応が後手に回り続けている状況を見れば、東電に当事者能力がないのは明らかだ。
国が前面に出るのは当然だろう。遅すぎるぐらいだ。
もちろん、政府が主導すれば解決するという単純な話ではない。経験のない作業は、今後も困難を伴うはずだ。不測の事態も起こりうる。
あらゆる知恵とできる限りの技術を投入し、事態の深刻化を食い止める必要がある。
それには、現場で把握された情報が関係者の間で速やかに共有される体制が不可欠だ。
政府は実際の作業も東電任せにせず、状況を常に監視・把握し、関係機関や地元自治体などと連絡を密にしながら、必要な決断がくだせる仕組みを構築しなければならない。
もうひとつ、早急に取り組むべきは、東電の経営再建計画の抜本的な見直しである。
政府は汚染水対策の費用を来年度予算に盛り込むが、これは東電にのしかかる巨額の費用の一端にすぎず、その場しのぎの手当てでしかない。
事故処理、被災者への賠償・生活支援、除染、今後の廃炉にかかる費用をすべて東電に負担させる現在の枠組みは、とっくに行き詰まっている。
東電は、現行の経営再建計画に沿って、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働まで申請しようとしている。福島の現状を考えれば論外だ。そんな余裕がどこにあるのか。
東電の責任は決して軽減されるべきものではない。ただ、能力をはるかに超えた負担を放置しておけば、かえって被災地の再建や首都圏の電力供給に支障が出かねない。
現行計画のどこに無理があるのか。今後どのような費用がどれぐらいかかり、誰がどう負担すべきか。現実を直視し、情報を公開しながら改めて議論し直すときだ。
いずれにせよ税金の追加投入は避けられないだろう。そうである以上、東電の破綻(はたん)処理という議論の原点に立ち返り、貸手である金融機関の責任などを問う必要がある。
あらためて、原発事故が国民生活に与える負担の大きさを思う。その厳然たる事実を踏まえれば、安倍政権が対処すべきことは明らかだ。
原発推進の姿勢を改め、原発を減らしていく道筋をはっきりと示すことである。
東京都調布市の小学校で、乳製品にアレルギーのある5年生の女児が給食を食べた後に死亡した事故で、市の検討委員会が再発防止策をまとめた。
学校は注意していなかったわけではない。女児用にはアレルギーの原因食材を除いた「除去食」を出しており、この日も粉チーズ入りのチヂミを、チーズ抜きで用意した。
ところが女児がおかわりを希望し、担任は、おかわりさせてはいけない献立の表をチェックせずにチーズ入りのチヂミを渡してしまった。女児は重いアレルギー症状を起こし、体調が急変。担任も養護教諭もとっさに対応できず、ショックを和らげる注射薬を打つのが遅れた。
検討委は、関係者が食物アレルギーの怖さを十分認識しておらず、組織的な備えも足りなかったと指摘した。
食物アレルギーのある子どもは増えている。文科省の調査(2007年発表)では、公立学校の生徒の2・6%が食物アレルギーを持っていた。
どんな特徴を持つ子も、安心して学校に通う権利がある。
検討委は、事故につながる「おかわり」の禁止、緊急時を想定した訓練の実施などを求めた。他の自治体でも、教員に注射薬の打ち方を教えたりする動きが広がる。
命にかかわる問題だ。時の経過とともに対策が形だけになってはならない。どの学校も工夫を重ねて欲しい。
調布市の報告で注目したいのが、アレルギーのある子について、クラスのみんなが正しく理解し、配慮した行動ができるよう指導するとしたことだ。
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