降圧剤:臨床試験 ノバルティスファーマ社ぐるみで支援

毎日新聞 2013年08月07日 02時30分

疑惑をめぐる構図
疑惑をめぐる構図

 降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、製薬会社ノバルティスファーマの多くの人間が臨床試験を支援していた実態が浮かび上がっている。厚生労働省は9日に大臣直轄の検討委員会をスタートさせてデータ解析に関わったノ社の社員(5月に退職)から事情を聴く意向だが、真相に切り込むには他の社員たちからの聴取も欠かせない。【八田浩輔、河内敏康】

 ・社名伏せ データ解析の社員紹介

 ・大学寄付金「上層部の了承が必要」

 ◆「統計の専門家」

 「大阪市立大の非常勤講師という名刺を渡された。社員と名乗らなかった」。2002年に試験を始めた東京慈恵会医大の望月正武元教授(72)は、元社員との出会いを大学側にこう証言した。

 元社員を「統計の専門家」として望月氏に引き合わせたのは、ノ社のマーケティング担当者だ。大阪市大によれば、元社員は02〜12年度に非常勤講師だったが、勤務実態は事実上なかった。慈恵医大によると、4種類の名刺を使い分け、社名が一切書かれていないものもあったという。

 ◇販売戦略の一環

 ノ社の社内資料によれば、00年11月に発売した直後のバルサルタンの年間の売り上げ目標は最大で500億円だったが、他社も含めた同種の降圧剤市場が急拡大するのに伴って上方修正。02年に1000億円を目指す社内プロジェクトがスタートした。関係者は「PRのための予算も増えた」と言う。「降圧を超える効果」が臨床試験で証明されることを期待し、各地の大学に試験が提案されていった。

 結局5大学の試験に参加した元社員は、09年に社長賞を受賞している。当時社長だった三谷宏幸最高顧問は「疑義のある論文という認識が無かった。今となっては反省する」と釈明している。

 元社員は循環器マーケティング部門に所属していて、当時の上司の多くは既に退社している。ノ社は「調査したが、元社員によるデータ操作や上司が操作を指示したことを示す事実は認められない」と不正への関与を否定するが、退社した当時の上司らからは「強制力がなく難しい」と聞き取りしていない。

◆宣伝記事で援護 慈恵医大の論文は07年に一流医学誌ランセットに掲載された。発表直後から試験の信頼性などを疑問視する意見が国内外の専門家から上がったが、ある関係者は「疑念を打ち消すために、国内外の高血圧分野の権威を招いた座談会形式の宣伝記事を専門誌に掲載した」と明かす。

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