製薬会社「ノバルティスファーマ」(東京)が販売する高血圧治療の降圧剤「ディオバン」(一般名・バルサルタン)をめぐる問題の経過=2000年11月~2013年7月30日【拡大】
製薬会社ノバルティスファーマが販売する高血圧治療の降圧剤「ディオバン」(一般名・バルサルタン)を使った臨床研究の論文で、相次いでデータの不正が発覚した。
問題の研究を行った京都府立医大や慈恵医大の研究班には、ノ社の社員=現在は退職=が身分を偽って加わっていた。元社員は血圧の値や患者の疾患などのデータ入力や解析を行い、そこにデータを操作した跡があった。研究はいずれも、ディオバンの血圧値抑制以外の効果を調べるもので、ノ社は論文を元に「ディオバンは脳卒中や狭心症も減らせる」と宣伝して販売につなげていたというから、悪質だ。
なぜこんなことが起きてしまったのか。東京慈恵医大が7月末に公表した調査委員会の中間報告では、研究班には元社員の他にデータの解析を行える人間がいなかったという。研究を率いたリーダーは「パソコンも使えない」そうで、もし本当なら日本の研究者のレベルは相当低い。不正を行ったのはノ社の元社員かもしれないが、ノ社の社員と知りながら、不正をするかもしれないと考える想像力の欠如に加え、データ入力や解析といった論文の根幹部分を外部の人間に任せてしまう意識の低さなど、研究者側も責められるべきだ。