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降圧剤データ不正問題、真の原因は「薬価統制」だ

THE PAGE 8月1日(木)10時5分配信

「日本の製薬市場はぬるま湯」

 この結果、我が国では、長年新薬を開発したこともない製薬メーカーが生き延びることができる。製薬企業に勤める知人は、「日本の製薬市場はぬるま湯」と言う。新薬を開発し続けないかぎり、市場から退場せざるを得ない米国市場とは対照的だ。

 世界の新薬が、我が国では使えないという、ドラッグ・ラグが社会問題となっているが、その理由は、政府による薬価統制だ。薬価を決めることで、厚労省や中医協は大きな権限を持つが、それが製薬業界に歪みをもたらしている。

 バルサルタン事件も、薬価統制の障害の一つと考えることが可能だ。製薬企業は株式会社である。利潤を最大にすべく、企業同士が競争する。バルサルタンを販売するノ社の場合も、同じような薬を販売する武田薬品、第一三共などと熾烈な競争を繰り広げていた。

 通常、企業間が競争する場合、コストを切り詰め、価格を下げようとする。最近のスマートフォンの価格破壊をみれば、明らかだろう。

接待がわりに大学に奨学寄付金

 ところが、医療用医薬品では、このような競争は出来ない。競争は必然的に顧客への営業合戦となる。製薬企業の場合、顧客は医師だ。必然的に医師への営業合戦となる。中心は医師への接待だ。ただ、この方法は、国公立病院の医師には通用しないし、近年、医師と製薬企業の癒着が指摘され、民間病院でも遠慮するところが増えてきた。

 その代わりに増えたのが、大学への奨学寄付金だ。製薬企業に務める知人は「国公立の病院の先生への接待費のようなものです。資金は営業経費から出ます」という。

 薬を売るには、営業しなければならない。その一つが奨学寄付金だ。おそらく、奨学寄付金のあり方を透明にしても無駄だ。前述の知人は「財団を経由した迂回寄附にします」という。

 この問題を解決するには、製薬企業が公正に競争できるよう、価格統制を緩和する必要がある。ただ、それには厚労省や業界関係者の反対が強い。

原発利権と似た構図

 接待と並ぶ、製薬企業の販促は広告だ。昨今は、世界的に有名な医学誌に掲載された臨床研究の結果を、著名な医師に解説してもらい、それを記事広告としてメディアが掲載することが多い。「座談会」という形式をとることもあれば、都内のホテルを借り切って、「講演会」というスタンスをとることもある。お金は、製薬企業からメディア、そして医師へと流れる。教授クラスになれば、一回で15万円程度の講演料を貰う。ちょっとした小遣い稼ぎだ。「講演会」の場合、ホテルや飲食店もおこぼれに預かる。

 国民が負担する薬剤費は年間約6兆円だから、その一割が使われたとしても、その金額は膨大だ。バルサルタン事件について、当初からノ社を批判したのが、毎日新聞、フライデーという医薬品の広告にありつけないメディアであったことは示唆に富む。製薬企業が、メディアを支配していることになる。

 役所による価格統制、ボロ儲けする企業、企業と専門家の不適切な関係、さらに広告によるメディア支配。実は、この構図は原発利権とそっくりだ。原発利権が、どうやって崩壊したか。それは、国民の怒りだ。今回の問題を解決するのに必要なのは、国民が真相をしり、怒ることだ。表層をなぞっただけでは、問題は解決しない。

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最終更新:8月5日(月)11時22分

THE PAGE

 

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