日銀の黒田東彦総裁は8日、金融政策決定会合後の記者会見で、消費税率を来春に引き上げても「成長が続く」と強調した。政府の財政規律が緩めば「金融緩和の効果に悪影響がある」とも指摘。政府内でくすぶる来春の消費税率上げの先延ばし論をけん制した。安倍晋三首相は同日、増税が景気に及ぼす影響を慎重に検証するよう関係閣僚に指示。10月上旬までに増税を最終判断する見通しだ。
消費税率は昨年8月に成立した社会保障・税一体改革関連法に基づき、2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げられる予定。ただ政府内では増税が景気を腰折れさせる懸念があるとして、先送りや増税ペースの見直しなどの議論が浮上している。
黒田総裁は記者会見で、予定通りに来春から2段階で増税しても、14年度、15年度ともに1%台の実質経済成長率を保てるとの見方を披露。「脱デフレと消費増税は両立する」と語った。
日銀は14年度の実質成長率が1.3%、15年度が1.5%とみる。消費税率上げ直前には住宅や大型の耐久消費財の駆け込み需要が生じやすく、14年度はその反動が出る。それでも日銀が0.5%程度とみる潜在成長率を上回る成長を維持し、デフレ脱却へ前進を続けるとの見立てだ。
一方、日本経済研究センターが8日まとめた民間エコノミスト約40人の予測平均では、14年度の実質成長率は0.56%まで落ち込んだ。民間予測に比べ、日銀は消費税率上げが景気に及ぼす押し下げ圧力は小さいとみている格好だ。
黒田総裁は日銀が「2年で2%」の物価上昇率目標の達成に向けて進める巨額の長期国債の買い入れは「政府の財政再建と関連している」とも指摘した。
消費税率上げを巡る論議が混迷するなどして、「財政規律の緩みや財政ファイナンス(穴埋め)などが懸念されると、長期金利にはね返り、せっかくの金融緩和の効果が減殺される」との懸念を表明。政府が予定通りに消費税率を上げることへの期待をにじませた。
安倍首相は8日朝、閣議後の閣僚懇談会で、甘利明経済財政・再生相らに「消費税率の引き上げについて、この道筋が確かなものかきっちりと判断する必要がある」と指示。「デフレ脱却は安倍政権の最重要課題だ」として、増税が脱デフレを阻む恐れがないか慎重な検証を求めた。
首相指示を受け、政府は経済財政諮問会議のもとで数回、有識者から意見を聞く「今後の経済財政動向についての集中点検会合」を開く。ヒアリングを通じ、予定通り税率を上げた場合や、増税の時期・幅を見直した場合に、どんな影響が出るかを分析する。
首相は閣僚懇で、消費税率上げを判断する時期について、「あらゆる知見を吸収したうえで、この秋にはデフレ脱却、経済成長と財政再建の両方の観点から内閣の責任において私が最終判断したい」と強調した。
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