<夏の高校野球>尾藤スマイル絶やさず…名将の長男・強監督
毎日新聞 8月8日(木)21時24分配信
夏の甲子園第1日の8日、29年ぶり出場の箕島(和歌山)が登場。監督として春夏計4回の優勝を果たした名将、尾藤公(ただし)さん(故人)の長男で、今年3月からチームを率いる尾藤強監督(44)は、最後まであきらめない箕島野球を見せた。試合は日川(山梨)に敗れたが、父譲りの「尾藤スマイル」をみせ、スタンドを沸かせた。【竹内望、池田知広、重石岳史】
【試合の詳報と写真】
高校時代、公さんの下でエースを務めたが、甲子園の土は踏めなかった。周囲に「公さんの息子」と呼ばれ続け、箕島の監督に就任してからも父の采配と比較された。
尾藤監督は「新しい箕島野球」を目指した。「父は背中で引っ張るタイプ。私は違う」。選手一人一人との対話を重視した。権城秀胤(けんじょうひでつぐ)捕手(3年)は「目と目を合わせて話すことで、気持ちが伝わる」と話す。就任直後から全選手と「野球ノート」と呼ぶ交換日誌を続ける。野球への思いや心情をつづり、選手との信頼関係を深めた。
一方で、公さんの代名詞だった「尾藤スマイル」は継承した。ピンチでも笑顔を絶やさないことで、選手がのびのびとプレーし、持っている力を発揮できるよう心がけた。
今大会開幕前、父の墓前に「甲子園、行ってくるわ。見守ってください」と語りかけた。選手には「最高の舞台。思い切り楽しんでこい」と声をかけ、グラウンドに送り出した。試合は先行され、最後まで食らいついたが、追いつけなかった。
1979年の春夏連覇時の主将で会社員、上野山善久さん(52)=京都市=は「伝統の『のびのび野球』を見せてくれた。(公監督の)面影を感じた。重責もあると思うが、新たな伝統を作ってほしい」とエールを送った。
尾藤監督は試合中、公さんがスタンドのどこかにいるような気がしたという。試合後、「甲子園は温かくも厳しい場所。選手は最後まで諦めず、戦ってくれた」と話し、こらえていた涙を流した。
敗戦で、79年夏の大会で星稜(石川)と延長十八回を戦った伝説の試合の再現はならなかった。星稜の林和成監督(38)は「お互い勝ち上がり、対戦したかった」と悔しがった。
最終更新:8月8日(木)21時32分