気仙沼のサメ「ぬか炊き」に 北九州と被災地の名物コラボ [福岡県]
北九州市門司区の食品加工会社「山一(やまいち)物産」が、宮城県気仙沼産のサメを使い、北九州地方の家庭料理「ぬか炊き」の商品を開発した。その名も「ぬかだきジョーズ」。日本有数のサメの水揚げ量を誇る気仙沼市では、東日本大震災の影響で水揚げ量が大幅に減ったが、徐々に回復している。同市水産課は「特産の海産物を九州でもPRしてもらうことは復興につながる」と、遠く離れた九州からの協力を喜んでいる。
今回使用したサメは気仙沼産のモウカザメで、三陸地方では一般的な食材。ヒレは高級食材のフカヒレになり、肉は刺し身や練り物の原料になる。同社の井上攻(おさむ)社長(64)が昨年末、北九州市小倉北区の市場で販売されているのを見かけ、これを使った新商品の開発を発案。試験的に約100キロを購入した。
魚をぬかみそで炊き込む「ぬか炊き」の味を20年以上磨いてきた同社。「サメを本当に食べられるのか」。九州ではなじみが薄い食材の加工に、当初は戸惑いもあった。
一番の問題はサメ肉独特のアンモニア臭。酢を入れた水で炊き込んであくを抜き、煮汁を捨ててから、ぬかや砂糖、しょうゆなどを加えて炊くことで、臭いを除くのに成功した。完成した試作品を販売すると、「小骨がなく、身も軟らかくて食べやすいと好評だった」と井上社長。肉を新たに1トン仕入れて本格的に生産を始めた。北九州市から今月、中小企業の優れた新商品として認められ、販路開拓の支援を受けている。
気仙沼港(気仙沼市)のサメ類の水揚げ量は一時、震災前の2割程度まで落ち込んだが、昨年は7割程度に回復し、「九州からの応援を復興の糧としたい」と同市水産課。井上社長は「北九州の家庭の味と気仙沼のサメの魅力を全国にPRできれば」と意気込んでいる。
商品は、北九州市内の同社直営店などで販売している。150グラム525円。山一物産=093(372)7939。
=2013/06/22付 西日本新聞朝刊=