以前、知り合った中国の留学生が、「魯迅の時代の方がましだった。魯迅は著作でものを言うことができたが、今はこれですから」と突き出した指を頭に向けてみせた。だが、現在の日本が中国よりもましなのだろうか。魯迅が「吶喊」の序で「鉄の部屋で熟睡して焼け死ぬのを待っている人間がおおぜいいる。起こして苦しませるよりはこのまま臨終を迎えさせた方が親切だろう」という自身の疑問に、「一人でも二人でも起き上がって叩き続ければ壊れる可能性も無いわけではない」と作品を書き始めた気持ちを述べている。いかに無力でも権力と癒合した犯罪を許すことはできない。