戦後補償:問題置き去り…旧植民地関係者、救済漏れ

毎日新聞 2013年08月07日 12時21分(最終更新 08月07日 12時32分)

「立法」と書かれたノートを持ち歩き、外国籍の元BC級戦犯への補償立法を求める李鶴来さん=東京・永田町で2013年6月13日、青島顕撮影
「立法」と書かれたノートを持ち歩き、外国籍の元BC級戦犯への補償立法を求める李鶴来さん=東京・永田町で2013年6月13日、青島顕撮影

 今年も終戦記念日が近づいてきた。戦後68年がたとうとしているのに、国会では戦後補償の問題が置き去りにされたままだ。関係者の高齢化が進む中、早期解決を求める声が上がっている。

 「私たちも老い先短い。尊厳ある生活が安心してできるようにと切に願います」。中国残留孤児の妻栄子さん(68)の帰国に伴い、1987年に来日した赤沢江風(こうふう)さん(66)=岡山県総社市=は6月に国会内で開かれた集会で訴えた。中国では教職に就いていたが、日本では自動車会社で働いて4人の子を育てた後、退職した。

 2008年度から始まった残留孤児・婦人らへの新支援策は、困窮した孤児らの世帯に対し、生活支援給付(東京23区の60代単身で月約8万円)と、満額の老齢基礎年金(月約6万6000円)の併給を認めた。だが、孤児本人に先立たれた配偶者は生活支援給付のみになる。こうした配偶者は400人以上いるとみられ、さらに増えそうだ。当事者たちは議員立法による改善を望むが、実現の見通しは立っていない。

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 「経済大国が小さなカネを節約していると笑われる」。そう訴えるのは台湾出身の呉(ご)正男さん(85)=横浜市中区=だ。旧制中学に入学するため日本に移住し、16歳で陸軍に志願。戦後2年間にわたり旧ソ連・カザフスタンの収容所に抑留された。

 日本兵らが旧ソ連各地で強制労働などをさせられた「シベリア抑留」を巡っては、1人当たり25万〜150万円を支払うシベリア特別措置法が10年に成立した。しかし韓国、台湾、中国などの外国籍の旧日本兵は対象外。補償の拡大を懸念する国側の意向があったとされる。呉さんは「日本にとって不名誉なことだ。生存している外国籍の抑留経験者は数十人なのに」と話す。

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 旧植民地出身でありながら日本軍属・軍人として連合国の軍事裁判を受けた元BC級戦犯への補償問題も放置されている。99年の最高裁判決が立法解決を促したが、目立った動きはない。

 朝鮮半島出身で戦時中はタイなどで捕虜の監視をしていた李鶴来(イハンネ)さん(88)=西東京市=は6月、補償立法を求める要請書を安倍晋三首相あてに提出した。

 「巣鴨刑務所から釈放されて57年たつが、なお要請を続けなければならない。悲しみと憤りを感じる」と李さん。李さんが要請書を出した首相は安倍氏で29人目という。【遠藤拓、青島顕】

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