【萬物相】朝鮮族の涙

【萬物相】朝鮮族の涙

 2008年1月、京畿道利川市の冷凍倉庫建設現場で火災が発生して40人が死亡した。断熱材の発泡ウレタンをかぶせる作業をしていた際に火が出て冷媒などの化学物質に燃え移り、有毒ガスが発生したものだった。犠牲者の中には「いい暮らしがしたい」という夢を抱いて韓国に来た中国の朝鮮族12人がいた。60代の朝鮮族とその息子、おい夫婦の一家7人が悲劇に見舞われたケースもあった。中国外務省や胡錦濤主席(当時)も哀悼の意を示し、韓国政府に「必要措置」を求めた。

 毎朝、出勤途中のエレベーターで60代前半の朝鮮族の女性を見かける。女性は近所の共働き夫婦の家に住み込み、5歳の女の子をマンション敷地内の幼稚園に連れていく。最近、ソウルをはじめとする大都市では朝鮮族の家政婦やベビーシッターのいる家が珍しくない。法務部(省に相当)は住み込みで家政婦・ベビーシッターをする朝鮮族の女性を約3万人と見ている。大卒のベビーシッターは人気がありすぎてなかなか見つからないそうだ。子どもたちに中国語を教えてもらえるというメリットがあるからだ。

 朝鮮族は1992年の韓中国交正常化以来、せきを切ったようにあふれ、今や韓国社会になくてはならない働き手になっている。建設現場や工場、飲食店だけでなく、農場・漁場・廃棄物処理場で働く朝鮮族は約45万人。老人福祉施設で認知症患者の世話をしたり、公衆浴場であかすりをしたりと、韓国人が嫌がる仕事もいとわない。劣悪な環境や偏見の中でも黙々と汗を流し、韓国社会を下から支えている。

 ソウル・鷺梁津で先月15日、上水道管が水没する事故が発生して朝鮮族3人が犠牲になったが、30日にはソウル・傍花大橋で鉄製構造物が崩壊して2人が死亡した。規模の大きさを問わず、工事現場で事故が起こると必ず朝鮮族という言葉を耳にする。韓国に来ている朝鮮族男性の56%が肉体労働に従事しているためだ。そのほとんどは滞在期間が5年間の「訪問就業(H-2)ビザ」で韓国に滞在している。5年間にできるだけお金をためようと、家族を連れず一人で狭い部屋に住み、きつい仕事も引き受ける。

 米国や日本の韓国系の人々は、本人または親・祖父母のうち誰か一人が韓国人なら永住権とほぼ同じ「在外同胞(F-4)ビザ」をすぐに発給される。だが、中国・ロシア・東欧の韓国系の人々にとってこのビザは高根の花だ。朝鮮族がF-4ビザを取得するには、法人代表または売上高10万ドル(約980万円)以上の個人事業者でなければならない。国家公認技術資格があればビザを取れるが、工事現場を転々とする中で技術を習得するのは容易でない。韓国にいる朝鮮族が韓国で血の涙を流せば、中国にいる200万人の朝鮮族が韓国に背を向けることになる。朝鮮族の働く場にさらに細心の注意を払い、温かい目で見守っていくべきだろう。

池海範(チ・ヘボム)論説委員
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