原爆投下から68年を迎えた広島。安倍晋三首相は6日、6年ぶりとなる平和記念式典でのあいさつに臨んだ。核兵器廃絶や平和実現への意欲を強調したが、集団的自衛権の憲法解釈の変更や改憲に傾く政権の姿勢を懸念する声もある。被爆者らは「広島演説」をどう聞いたのか。
核といのちを考える「改憲の動きとの矛盾を感じるが、全世界の前で訴えた言葉は信じたい」
埼玉県所沢市の坂下紀子さん(70)は県遺族代表として、6日の平和記念式典に出席した。安倍首相があいさつで、歴代首相と同様に「核廃絶」や「非核三原則の堅持」を語ったことに安心した。
4月の核不拡散条約(NPT)再検討会議準備委員会で、核兵器の非人道性を訴える共同声明に政府が署名しなかったことに疑問が募った。今年は「首相が非核三原則に触れないかも」と耳を傾けた。「首相の言葉は重く感じた。その通り実行してほしい」
広島市で母や兄とともに被爆。母は「あの地獄絵は絶対に繰り返してはいけない」と言い続けた。子どもの頃、式典への参加は家族にとって1年で一番大切な行事だった。
結婚後に広島を離れ、今年、四十数年ぶりに式典に臨んだ。「いくら核廃絶を訴えても、憲法9条を変えたら世界から疑われてしまう。改憲の動きがある中で平和の大切さを確認したい」と思ったからだ。
「戦後の日本を築いた先人たちが平和と繁栄の祖国を作り、与えてくれた」
首相のこの言葉に広島市の田坂キヨカさん(85)は憤りを感じた。「先人がした最も大きなことは戦争をしないと誓った憲法を守り続けたことではないか」