記者が先日会ったある脱北者は「脱北者たちの最近の大きな関心は、キム・グァンホさんに対する中国政府の対応に集中している。これは非常に深刻かつ重大な問題だ」とした上で「韓国に定着した2万5000人の脱北者全員にとっても決して他人事ではない」と話した。
脱北後、2009年に一度韓国に定住したキム・グァンホさんは、韓国国籍を持つ妻と娘を連れて昨年北朝鮮に戻った。その後、妻の弟と妹を連れて再び脱北したが、先月14日に中国公安(警察)に身柄を拘束され、今月6日で拘留から24日目となる。キムさんはこれまで「脱北>韓国定着>北朝鮮に密入国>再脱北」という過程を経てきたため、中国政府はキムさんの国籍を韓国とするか北朝鮮とするか判断を保留しているとの見方もある。脱北者らは「中国がキムさんとその家族を北朝鮮の人間と判断し、北朝鮮に強制送還した場合、脱北者社会全体が動揺する恐れがある」とみている。上記の脱北者は「キムさんとその家族が北朝鮮に強制送還された場合、これは脱北後に韓国籍を取得しても、中国はいつでも北朝鮮に送り返しかねないことを意味する」と指摘した。
事業のため中国を行き来する別の脱北者も「韓国籍を取得した後も、中国に行くときはいつ北朝鮮に送り返されるか分からないという漠然とした恐怖を感じている」「キムさんが北朝鮮に強制送還されれば、中国に行くのは本当に恐ろしくなるだろう」と話した。
キム・グァンホさん事件に対する脱北者たちの心配の度合いはそれぞれ異なる。しかし「韓国政府が何としても彼らを連れてくるべき」という結論は一致している。
北朝鮮に戻ってから再び脱北したキムさんのケースについて「すでに韓国籍を取得した一般の脱北者と同じと考えることはできない」との見方も一部にはある。ただし韓国籍を持つキムさんが判断を誤って北朝鮮に戻り、これが韓国政府にとって大きな頭痛の種になったことは明確な事実だ。
いずれにしてもキムさんは「太極模様(韓国国旗の中央に入っている模様)」が刻まれた旅券を持つ大韓民国の国民であることに変わりはない。たとえ海外で罪を犯した人間でも、それが自国民であれば支援の手を差し伸べるのは政府の責務だ。今回の事件が長期化した場合、脱北者社会全体が動揺するのはもちろん、朴槿恵(パク・クンヘ)政権による脱北者保護政策にも間違いなく疑いの目が向けられるだろう。