2013年、「盗んだバイクで走り出す若者」たちは炎上して社会的制裁を受ける

2013/08/07


例の炎上案件、色々な意見があって面白いです。これまで2本記事を書いているので、こちらもぜひお読みいただけると嬉しいです。

おバカな従業員は「安さ」の代償

冷蔵庫に入って炎上する「おバカな若者」たちは、「誰のせい」で現れた?


「盗んだバイクで走り出す若者」たちはどこへ行ったのか

頂いている意見の中で多いのは「昔からバカは一定数いた。それがツイッターによって可視化されているだけ。だから特段騒ぐことではない」というもの。

ぼくも基本的に同意します。ただし、「特段騒ぐことではない」というのは、酷な意見なのではないかと思います。


ヤンキー論の文脈では、「昔は、おバカな若者を社会に引きもどす構造が用意されていた」ことがすでに指摘されています。

・地域社会に抵抗し、逸脱した若者たちは、祭りという「バイパス」を通って、社会化される。まさしく「体制への反抗・地域への順応」である。若者が社会化され、大人になる道は「学校」というシステムを通してだけではない。(阿部)

・優二やT氏の言葉からわかるのは、「引退」後の生活に対する安心感である。最終的に地域社会に戻って、仕事をもって、家庭をつくる。そんな明確なライフプランがあるからこそ、暴走族という逸脱行為に青春を捧げることができるし、そこに戻るための祭りという「バイパス」も意味をもってくる。(阿部)

補足して説明を加えると、

・かつては逸脱した若者が「祭り」などの地域社会の仕組みによって、社会に引き戻されていった。
・暴走族OB/OGの話を注意深く聞くと、「最終的に地域社会に戻って、仕事をもって、家庭をつくる」ことが、逸脱行為の前提となっていた。

なんてところになるでしょう。要するに、「おバカな若者」たちに「出口」が用意されていたのです。


しかし、この「出口」は着実に狭まっています。人気ブロガーのコンビニ店長も、体験的な観点から、それについて指摘していますね。

同じ場所でけっこうな期間にわたって店をかまえていて、彼らが高校生のころから見てたりもするんだけど、昔だったら、男は肉体労働、女は水商売っていう上がりのかたちがあったはずなんだけど、受け皿のほうが少ないせいか「どうやって生活してんだろこいつら」と思うようなのが増えてる。

「うちら」の世界 – 24時間残念営業


失われた「モラトリアム」を求めて

おバカな若者たちは、一定数存在します。が、彼らを取り巻く環境は、変わりつつあります。

かつては、「おバカ」であることは「モラトリアム」の内部に属していました。現に暴走族たちは、「最終的に地域社会に戻って、仕事をもって、家庭をつくる」ことを自覚していたわけです。あくまで暴走行為は、一時の「ヤンチャ」だと。いずれ地域社会などの手で「社会化」され、「大人」になる存在だったのです。

かつての名曲でいえば、「盗んだバイクで走り出す」若者たちは、なんだかんだで地元で仕事が見つかったわけです。そして結婚して、幸せに暮らすと。


しかし、今は「おバカな若者」は「モラトリアム」の内部に存在しておらず、社会から「大人」として厳しい目に晒されます。

例の炎上アルバイトたちに対して「プロとしての自覚が足りないだけ」という意見も見受けられたのですが、これは象徴的です。彼らは未熟であることが許されないわけです。

さらに、彼らは逸脱行為について、厳しいペナルティも受けます。事実、今回の騒動に関しても「雇用契約書に損害賠償に関する記述を入れるべきだ」という意見を複数の方から頂きました。

この時代においては、「盗んだバイクで走り出す」若者たちは、ただちに社会から罰を受けます。その上、「出口」も狭まっています。まともな「出口」が用意されていなければ、それこそ彼らは、犯罪者になるしかない、ひきこもりになるしかない、自殺するしかない、なんて未来が待っているでしょう。


構造としては、テクノロジーがモラトリアムを消失させているとも取れますね。今回炎上したような「おバカな若者」は、今までなら黙認されていたところを、ツイッターやフェイスブックが可視化してしまった、と。

詩的に拡大解釈すれば、ああいう「おバカな若者」の頻出は、若者たちがモラトリアムを希求している証左なのかもしれません。


と、話が逸れてしまいました。

「バカな若者は自業自得だ」という意見も多いですが、彼らをそのように非難するのなら、背後にある「モラトリアムの消失」についても思慮すべきでしょう。

まぁ、「冷蔵庫に入って炎上する「おバカな若者」たちは、「誰のせい」で現れた?」でも書いた通り、ぼくは「自業自得」だとは思いませんけどね。


参考文献は以下の二冊。どちらも名著ですのでオススメです。


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