うな丼の危機 明日の一杯のために(3)「食べ尽くし」に警鐘
2013年8月4日
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7月初め。東京大農学生命科学研究科でウナギを研究する海部健三特任助教は、ロンドンにいた。国際自然保護連合(IUCN)がウナギの資源状況について検討するワークショップに参加するためだ。
IUCNは、絶滅危惧の指標となる「レッドリスト」を作成する。日本の環境省が指定する絶滅危惧種では国内レベルの警告にとどまるが、IUCNのレッドリストで絶滅危惧種になれば、「ワシントン条約で国際取引が規制される可能性が高い」と海部特任助教。今回はその判断のための、「はじめの一歩」だ。
会議中、「痛感したことがあった」という。それは、ニホンウナギに関する国内データの圧倒的な不足。「ヨーロッパ、アメリカウナギの研究者が持つデータ量とは、比べものにならなかった」。正確な資源の予測には多面的かつ大量のデータが必要だが、「日本は唯一持っている漁獲量のデータでさえ、(実態に近いか)怪しいのが現状」(海部特任助教)だ。
ウナギは海で生まれ、川で育ち、また海で産卵する回遊魚。その生活史は非常に広範だ。ニホンウナギは約3千キロ離れた太平洋・グアム諸島沖で産卵し、再び海流に乗って日本、中国、台湾、韓国の各河川にたどり着き、成長する。
各国の研究者や業界関係者は1998年に「東アジア鰻資源協議会」を設立し、保護政策などを話し合ってきた。水産庁も非公式に中国、台湾などと協議を重ねてはいる。だが資源の減少は止まらず、国を超えた連携も具体策を講じるまでには至っていない。
水産庁の宮原正典次長は「国内の対策も進めるが、中韓台と歩調をそろえなければ効果は薄い。だが台湾とは公式協議を持つことさえ難しく、非常に難易度が高い課題だ」と話す。
こうした中、新たな代替種としてインドネシアなどに生息する「バイカラ」などを流通させる動きが、国内にある。価格高騰が抑えられると歓迎する流通業者もいるが、研究者らは一斉に警鐘を鳴らす。
というのも、「日本人がヨーロッパウナギを食べ尽くした」という苦い過去があるからだ。中国が養殖し、そのほとんどを日本が消費したヨーロッパウナギは現在、資源の95~99%が枯渇。IUCNにはジャイアントパンダなどよりも絶滅に近い、極めて絶滅の恐れが高い「近絶滅種」に指定されている。
北里大海洋生命科学部の吉永龍起講師によると、バイカラの生息域は30カ国に及ぶ。生息域が日中韓台に限られるニホンウナギですら、保護に向け歩調が合わない現状で、「より広範囲にまたがる種の資源管理ができるとは思えない」。他種の混獲も避けられず、吉永講師は「資源へのダメージが予測できない」と強調する。
ウナギ研究の大家である日本大の塚本勝巳教授も警告する。「ヨーロッパウナギを食べ尽くしたら、次はバイカラ。日本の消費態度はまるでイナゴの大群だ。経済よりも道義や品格を優先し、異種ウナギには手をつけないことが賢明だ」
IUCNは、絶滅危惧の指標となる「レッドリスト」を作成する。日本の環境省が指定する絶滅危惧種では国内レベルの警告にとどまるが、IUCNのレッドリストで絶滅危惧種になれば、「ワシントン条約で国際取引が規制される可能性が高い」と海部特任助教。今回はその判断のための、「はじめの一歩」だ。
会議中、「痛感したことがあった」という。それは、ニホンウナギに関する国内データの圧倒的な不足。「ヨーロッパ、アメリカウナギの研究者が持つデータ量とは、比べものにならなかった」。正確な資源の予測には多面的かつ大量のデータが必要だが、「日本は唯一持っている漁獲量のデータでさえ、(実態に近いか)怪しいのが現状」(海部特任助教)だ。
ウナギは海で生まれ、川で育ち、また海で産卵する回遊魚。その生活史は非常に広範だ。ニホンウナギは約3千キロ離れた太平洋・グアム諸島沖で産卵し、再び海流に乗って日本、中国、台湾、韓国の各河川にたどり着き、成長する。
各国の研究者や業界関係者は1998年に「東アジア鰻資源協議会」を設立し、保護政策などを話し合ってきた。水産庁も非公式に中国、台湾などと協議を重ねてはいる。だが資源の減少は止まらず、国を超えた連携も具体策を講じるまでには至っていない。
水産庁の宮原正典次長は「国内の対策も進めるが、中韓台と歩調をそろえなければ効果は薄い。だが台湾とは公式協議を持つことさえ難しく、非常に難易度が高い課題だ」と話す。
こうした中、新たな代替種としてインドネシアなどに生息する「バイカラ」などを流通させる動きが、国内にある。価格高騰が抑えられると歓迎する流通業者もいるが、研究者らは一斉に警鐘を鳴らす。
というのも、「日本人がヨーロッパウナギを食べ尽くした」という苦い過去があるからだ。中国が養殖し、そのほとんどを日本が消費したヨーロッパウナギは現在、資源の95~99%が枯渇。IUCNにはジャイアントパンダなどよりも絶滅に近い、極めて絶滅の恐れが高い「近絶滅種」に指定されている。
北里大海洋生命科学部の吉永龍起講師によると、バイカラの生息域は30カ国に及ぶ。生息域が日中韓台に限られるニホンウナギですら、保護に向け歩調が合わない現状で、「より広範囲にまたがる種の資源管理ができるとは思えない」。他種の混獲も避けられず、吉永講師は「資源へのダメージが予測できない」と強調する。
ウナギ研究の大家である日本大の塚本勝巳教授も警告する。「ヨーロッパウナギを食べ尽くしたら、次はバイカラ。日本の消費態度はまるでイナゴの大群だ。経済よりも道義や品格を優先し、異種ウナギには手をつけないことが賢明だ」
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