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うな丼の危機 明日の一杯のために(2)産地明記も種は不明

2013年8月4日

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 響きのいい「国産うなぎ」。だが、それが昔から日本で食べられてきた「ニホンウナギ」かどうかは、厳密には分からない。外国産として最も出回っている「中国産」でも、種はニホンウナギなのか、国際取引が規制されているヨーロッパウナギなのか。それすら知ることができないのが現状だ。

 理由は二つある。一つは、ウナギの「産地」は養殖された国を指し、どんな種であれ日本国内で養殖すれば「国産」とされる表示方法。もう一つは、天然の稚魚(シラスウナギ)の種の見分けが、専門家でもできないことだ。

 水産庁は今年5月、標準和名の変更に伴い、ニホンウナギを使った加工品には「ニホンウナギ」と明記するよう通達した。だが、標準和名のないヨーロッパウナギなどは対象になっていない。

 北里大学海洋生命科学部でウナギの生態を研究する吉永龍起講師は、こうした「秘匿性」が“闇流通”の温床になっていると指摘する。

 例えば、香港から輸入されているシラスウナギ。ある年には10トンもの量が流入したが、「香港のシラスウナギ漁なんて聞いたことがない」と吉永講師。「種が分からないシラスウナギが、あまり関係ない国を経由して輸入され、国内で養殖されれば『国産』として流通する。まるで“ウナギ・ロンダリング”だ」

 吉永講師の研究室には時折、業者からDNA鑑定の依頼が舞い込む。「怪しい業者から仕入れたシラスウナギを養殖したら、変な模様が出てきたなんて話は、いくらでもある」

 シラスウナギ漁は網一つで可能な上、少量でも高値がつく。そのため国外に限らず国内でも闇流通が横行しているといい、宮崎県ではかつて、正規の漁業者や取引業者による流通量が全体のわずか10%という時代もあった。

 水産庁も闇流通の存在を認識しているが、有効策は打ち出せていない。同庁の宮原正典次長は今年5月に行われたニホンウナギの資源保護を考える非公式協議で、中国の水産当局担当者にこう言われたという。

 「海のように広大な中国の河川で、網一つで漁をしている人を探し、捕った量や卸先を報告しろなんて、無理に決まっている」

 世界には19種のウナギが生息し、うち7種が食用とされる。世界で流通する量の約7割を消費している日本人が、どの種を食べているかも分からない。

 危機感を募らせる宮原次長は「資源保護には(量を調整する)『蛇口』が必要だが、まだない。ぬるいと言われようが、できることからやっていくほかない」と話す。

 研究者らはその一つとして、せめて産地とともに、種の表示を義務づけるべきだと主張する。吉永講師は「空港や港で抜き打ち検査をしても面白い。まずは出口で、出回ってはいけないものだけでも取り締まるべきだ」と訴えている。 

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