高架下に大量に置かれたホームレス定住防止用のフェンス=名古屋市中区で
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名古屋市が二〇〇三年にスタートした路上生活者(ホームレス)への自立支援計画が、成果を上げる一方で新たな課題に直面している。導入から十一年目で、市の把握する市内のホームレス数は当初の千七百八十八人から三百五人となり、八割以上減った。その一方で、短期間の非正規雇用で働きながら友人宅を渡り歩き、経済状況によってはホームレスになりかねない“予備軍”が増えているという。
中区の高速道路下にキャンプ用テントやベニヤ板製の小屋が点々と並ぶ。すぐそばには「小屋がけ禁止」の看板と工事用フェンス。八年前からアルミ缶回収で暮らす男性(64)は「新たに小屋を作れんし、住む人は年々減っとる」と漏らした。
市はホームレス対策として緊急一時宿泊施設(シェルター)を設置してきた。利用者は延べ千二百人以上。公園を占拠している、との市民の苦情に配慮し、ロープやフェンスでの排除も進めた。
市の計画では、社会福祉事務所の相談員が巡回して面談するほか、住宅専門の相談窓口も設置。入居時の身元保証事業も導入した。市保護課の担当者は「十年間で支援制度の内容はホームレスに周知されたと思う」と実績を強調する。
中区にある定員二百人の名城シェルターでは現在、七十五人が暮らすが、市保護課の担当者は「河川敷などには、相談員がまだ接触できない人がいる。継続的に自立を呼びかけるしかない」と話す。
市担当者によると、ホームレスの人数が減った半面、各区役所の生活保護の窓口ではここ数年、友人宅を転々としながら、非正規の雇用形態で短期間だけ働く若者からの相談が増えているという。
こうした若者たちは窓口に来ても「手続きが面倒」との理由から受給申請を見送る例が目立っており、正確な人数は市側も把握できていない。
市担当者は「経済状況の変化で短期や臨時の仕事に就きにくくなれば友人宅に居づらくなり、いつでも路上生活になりうる」と指摘。新たな若年層のホームレス増加を不安視している。
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