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(2時間53分前に更新) |
恐れていたことが現実になった。米軍機による連日の訓練で住民の暮らしが日常的に脅かされている沖縄のこの現実を、日本中の人々が直視してほしい。
嘉手納基地所属の救難用ヘリHH60が5日午後、訓練中にキャンプ・ハンセン内の宜野座村側山中に墜落し、炎上した。
樹木をなぎ倒し、機体が黒煙を上げて燃え続ける様子は、テレビ局の上空からの撮影でも確認された。
防衛省、県警の間で乗員数の発表が食い違うなど情報がさくそう。基地内での事故の事実把握の難しさを露呈した。けが人が出たとの情報もある。
昼夜の別なくオスプレイの訓練が実施されている宜野座村城原は、事故現場からそれほど遠くない。異なる機種とはいえ、墜落事故が発生したことで、住民の不安がいっそう高まるのは確実だ。
今年5月には、嘉手納基地所属のF15戦闘機が国頭村安田の東南東約60キロの海上に墜落したばかり。嘉手納基地のF15は、2002年に本島の南約100キロの海上に墜落、06年にも国頭村安波の東約54キロの海上に墜落した。
普天間飛行場所属のCH53ヘリが04年8月、沖縄国際大学構内に墜落し、炎上した事故は今も記憶に新しい。
事故が発生すると、政府は「原因究明」と「再発防止」を真っ先に口にするが、これだけ米軍機が集中し、日々、激しい訓練を続けていれば、事故は必ず起きる。もはや通り一遍の再発防止策でお茶を濁す段階ではない。
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米軍普天間飛行場には3日、オスプレイ2機が追加配備され、5日には、残る10機が山口県岩国基地から移動してくる予定だった。
追加配備予定のまさにその日に、HH60の墜落事故が起きたのである。
「沖縄県軍用地転用促進・基地問題協議会」はこの日、予定通り政府にオスプレイの配備中止を要請することを決めた。
県民が最も懸念しているのは、住宅密集地のど真ん中にある普天間飛行場に、欠陥機の疑いのあるオスプレイを配備することによって、取り返しのつかない事態を招くことである。HH60の墜落事故で、その不安が現実味を帯びたというべきだろう。
圧倒的多数の住民が反対しているにもかかわらず、政府は、オスプレイの「安全宣言」を発し、配備を強行した。今回の墜落事故を踏まえ、配備計画を早急に見直すべきである。
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米軍機による事故発生の蓋然(がいぜん)性が全国のどの地域よりも高い沖縄の現実を放置することは、県民の生命・財産を危険にさらすようなものである。
事故発生で政府が素早い反応を示したのは、オスプレイ配備への政治的影響を懸念したからだ。
だが、これは倒錯した考え方である。政府が何よりも優先すべきなのは、住民の安全だ。
本土自治体がいやだというのを沖縄に押しつけてはならない。