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ノンフィクション

祖父倫 3

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セブンスターの臭いは嫌ではなかった。ソフト協会のいわば強制的なかけ声で、本日の会合は始まっていた。
その休憩時間、佐藤は広いベランダに出ていた。横には知り合ったばかりの土市が居た。
プカプカと考え深げにセブンスターを吸っていた。佐藤にとって後に美少女ゲーム業界の運営で欠かすことのできない人物との出会いであった。
梅村「でっ、ガナイロックさんの説明では宮崎県では大変だと・・・」
土市「それって、そんなに権限があるんですか?」
沢田「当社としては、断固戦うまでです」
赤沢「そうです。申し訳ないですが、我々が皆さんとご一緒だと迷惑をかけるかも知れません」
沢田「赤沢君、ありがとう。そうなんです。我々は最高裁まで戦うつもりです」
梅村「そうですかぁ、皆さんこのような雑談形式も良いですが、そろそろ議長を決めませんか?」
佐藤「やっぱり、ガナイロックさんでしょう。凄いし・・・」
佐藤はファンであった。
沢田「いやーっ、皆さんに迷惑を掛けると思いますし、この会合からも離脱したいくらいですから・・・」
土市「プリンセスブレイブでユーザー受けしているガイナロックさんにやって欲しかったなあ。でもできないとなると・・・」
梅村「皆さんどうですか?」
倉石「あのっ、ディーオーの佐藤さんにお願いしませんか・・・」
倉石は佐藤の経営していたディーオーの独占販売をやっているTSKの番頭格であった。それなりの思惑をもって佐藤を推したのだった。
土市(小声で)「やりますか?」
隣にいる土市は佐藤の顔を覗き込んだ。
佐藤「・・・・・・」
梅村「皆さん、倉石さんからのご推挙はいかがですか?」
井村「異議なーしっ」
一同「異議なーしっ」
土市「良いと思います。佐藤さんどうですか?」
佐藤「うーん、議長をやる理由がわからないです。ゲーム創りたいだけですからね・・・」
佐藤「梅村さんこそ流通もやられているし、業界のことに精通されているでしょう。私なんかゲームが好きで、自分で創りたいと思っただけの人間ですから・・・、そもそも堅いの好きじゃあないですよ」
梅村は北陸を中心にゲームソフトの問屋をしていた。販売店も経営し、自社ビルにはゲームソフトを創るスタッフも抱えていた。
梅村「逃げるわけではないですが、確かに流通やっているし、逆にそこが私の場合は難しいんですよ。メーカー代表にはなれないです」
井岡「売れているメーカーがやれば良いじゃない」
一同「・・・・・・」
井岡は、京都事件後にその会社の社長になった人物である。当然、一同は検挙された会社を知っていた。
皆、無言であった。
土市「佐藤さん、メーカーとして、ゲーム好きとしてやりましょうよ。僕、良いと思います」
突然土市が言い放った。
吉岡「佐藤さん、今日初めて会いますけど、私大阪から来た吉岡です。店もやっていましてね、本当に店も困っているんですよ。ドキドキしながら売るのは正直怖くて、メーカーとして何かやっていかないと・・・」
佐藤には、不思議なところがあった。佐藤は元来、人に頼られたり頼まれると断れない質であった。
経営者たるもの専ら、己のリスクを考えるのは本能のようなもので、頼られると断れないという資質はもしかすると経営者として弱点であったかも知れない。
高校時代は部活では応援団に入っていたのも、そのような性格が由来しているかも知れない。
佐藤の出身校はガリ勉ばかりで、九州をあげての進学校で野球部などは50年に一度甲子園に顔を出すような弱小野球部であったが、佐藤は他の仲間とこまめに応援団を率いて頑張っていた。
佐藤「仕方ないので議長はやりましょう」
梅村「おうっ。ではあちらの席でお願いします」
議長席というか、会議室の一番奥に座り直した佐藤からは40人もいた出席者がよく見えた。
佐藤「早速ですが、私から訊きたいのですが、皆さんどうですかぁ?うちのスタッフはいつも絵のことで悩んでいて、訊かれますねぇ。仕方ないので捕まる時は俺が捕まるから心配しないで創ろうと言っています」
吉岡「店やりながら、ソフトハウスもやっているんですが、ボカシとか難しいですね。正直ドキドキもんですわ」
大阪日本橋でゲームソフトの販売店を経営していた吉岡は人気ゲームブランドも率いていた。
土市「うーん。僕はシナリオ書くんですけどぉ、シチュエーションとか、題材とかで迷うことが多いですね。心配ですし・・・」
京都の事件は衝撃的であった。8ビットのパソコンが世に出て数年、大ヒットしたNECの98シリーズが世間を賑合わせていた頃、それまではわずかなカットでちょっとしたシャレで創っていたアダルトチックなゲームも結構本格的な絵を入れたストーリーもしっかりしたものになっていた。
そんな中、マスコミを駆り立てた衝撃的な事件が京都で起きた。
ある中学生がパソコンショップで万引きし、盗んだものがパソコンゲームであった。
府警担当官は大した理由もなく、証拠の押収物をパソコンで調べていた時、とんでもない画像が現れたのだ。
それを見つけた担当官は、単なる中学生の万引きではなく、列記とした刑法上の犯罪の臭いを嗅ぎ分けたのであった。
続いて数ヶ月後、宮崎の事件が起きたのであった。
書籍の自動販売機は県条例下で許可されたものであった。
ガナイロックの「電脳学校」が未成年が買えると言うことで県条例に引っかかったのであった。
県知事の強制撤去命令を食らったガナイロックは、不服申し立てをしていた。
ソフトハウスの仲間にもその圧倒的存在感を持っていたガナイロックは芸大出身者が創ったアニメ会社でクリエイター集団であった。
ソフトハウスの面々の中にはその行動を尊敬し、支持するものすらいた。
佐藤「取りあえず、本日の皆さんのお考えを整理して、次回はどのように組織を作るか整理してきます。次の会合はいつにしますか?」
散会となった。





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