太田川ジャブジャブ大作戦

〜 市民自身の手による太田川の浄化作戦 〜

NPO法人 広島EM普及協会

太田川ジャブジャブ大作戦とは?

太田川ジャブジャブ大作戦は、広島市内を流れる一級河川・太田川を市民ボランティアの力で浄化しようと続けている活動です。自然界の環境を整える作用がある有用な微生物(EM菌)を使用し、拡大培養した液(EM活性液)および、これらの菌を土で練り固めた資材(EM団子)を投入することで、ヘドロの分解と悪臭の除去、生態系・漁獲量の回復を狙っています。

EM菌を用いた水質の浄化は全国で数多くの成果を挙げており、近年では大阪の道頓堀・淀川では深さ最大50cmのヘドロの減少・シジミの漁獲量の大幅回復を実現。

広島県内でも、1998年より福山市内海町では、良心あるたった一人の海苔養殖業者が、幅1m・高さ70cm・奥行き500mに渡って水路に堆積していたヘドロを消してしまいました。(浚渫費用は1000万円に相当するといわれる)さらに、周辺海域ではもう穫れないと言われていたトリ貝が大繁殖し、他にもホンダワラ・カタクチイワシ・海老・タコ・アサリなどの収量も劇的に向上しました。

こうした各地での取り組みの成果を受けて、この我々の太田川を市民自身の力で浄化できる可能性に賭けて始めた実践活動。それが「太田川ジャブジャブ大作戦」です。

経緯

太田川はその特性上、都市の景観の大部分を形づくり、そこに住む人々の生活と切っても切り離せない川です。また、淡水と海水が入り交じるこの川は、シジミをはじめとして多様な魚介類の産地でもあります。

        

しかし、1980年以降の高度経済成長に伴って流入した汚水・化学物質の影響で、ヘドロが堆積し、悪臭を放ち、シジミの漁獲量も1995年をピークに右肩下がりで減少していきました。現在は下水道の整備も進み、汚染源は減少しましたが、依然として漁獲量の減少・堆積したヘドロの生活環境への影響は深刻な問題となっています。

     

京橋川でシジミ漁を営む内水面漁業組合員の河野さんも、シジミの減少で収入が激減。借金もかさみ、先の生活を憂いていました。私たちが日々家庭から流す合成洗剤などの汚染源が生態系を破壊し、それが廻り回って地元の漁師の方が苦しんでいるというこの事実。私たちは自分たちの日々の生活が他の生命にどのような影響を与えているのか、考え直す時がきています。

     

河野さんは、瀬戸内海周辺で漁獲量や様々な生き物が復活している事例を聞いて望みを寄せ、ここにNPO法人 広島EM普及協会のボランティアスタッフも加わって京橋川の浄化作戦チームが結成されました。

活動内容

EMの投入活動は京橋川・常葉橋付近の下流側を平成17年はじめまで集中して行ってきました。以降、下流の上柳橋(京橋川・猿猴川の分かれ)神田橋付近と場所を変えながら現在に至ります。

EM活性液(有用微生物 拡大培養液)の投入

        

月に2回のペースで、1回につき 2t のEM活性液(有用微生物 拡大培養液)をポンプでヘドロの上に散布しています。これが定期的な活動です。

EM団子の投入

        

熊野町阿戸の作業場で、山土・米ぬかボカシ・EM活性液を練り合わせて丸め、乾燥熟成させたEM団子を作製。

イベントなどの機会に、不定期に1回に1000〜2000個を投入しています。

他団体イベントへの参画と市民への啓蒙

        

これまで、猿猴川かっぱまつり阿戸の花祭りエコまつり 環ッハッハ in よしじまなどのイベントにブース出展して、一般の皆さんにEMによる家庭からの環境浄化・生ごみの減量リサイクルを普及する啓蒙活動を行ってきました。今後もイベントでの出展を通して、一人一人の家庭からの環境浄化運動の輪を拡げて行きたいと考えています。

視察の受け入れ

     

この太田川の活動はEM関係者の間でも広く知られるようになってきました。全国から商工会や市民ボランティアなどの各種団体、また海外ではEU諸国(イギリス・ドイツ・ベルギー・ポーランド・クロアチアなど)から視察に訪れたこともあります。そうした方々にこの活動の紹介をするのも、重要な活動のひとつです。

環境教育の実施

     

地域の子ども会、幼稚園、学校の「総合的な学習の時間」などで、EM団子づくりを子どもたちと共に行います。体験を通して、環境を守ること・自然と共に生きることの大切さを伝えていく努力を続けています。

活動の成果

ヘドロの減少

当初よりの活動現場である常葉橋付近下流側の西岸では、ヘドロの深度を計測しています。ここでは三年間で37cmのヘドロの減少を確認しました。


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※平成17年5月8日から11月2日の間に13cmという大幅な減少を見せているのは、9月に来襲した大雨台風の影響でヘドロが削られたためと見られます。

悪臭の改善

活動以前・開始直後は、夏季になると大変な悪臭を発していた活動現場では今ではほとんど悪臭がしません。

漁獲量の復活

シジミの漁獲量は活動開始時は夏季でも20kg/日まで落ち込んでいたのに対し、平成17年夏には50kg/日まで回復しました。(現在は台風の影響で少し減少している) 数値面以外ではシジミが死ななくなったということで、漁師の河野さんが何よりも喜んでいます。また川が綺麗になってきていること、小魚が増えていること、ヘドロの質の変化を毎日の漁作業の中で実感しておられます。

投入量の累計(資材コスト)

平成18年8月18日現在、累計投入量はEM活性液116t、EM団子 12,300個。

資材コストは、EM活性液は1回の投入(2t)につき約6,000円強として、34万8千円。EM団子は1個約10円として、12万3千円。(実際にはこれに加え、ガソリン代・電気代・運搬費などさまざまな経費が関わってきます。)

活動の意義と今後の展望

活動現場でのヘドロの減少量、悪臭問題の改善、そしてシジミ漁獲量の回復という経済効果を考慮に入れると、大きな効果を生み出していると思われます。

ヘドロ除去の方法は浚渫が一般的ですが、市民自身の手を介さずにお金で解決してしまうことになります。それでは人任せになってしまい、困ったら誰かがきれいにしてくれるものという枠の意識から抜けることができません。これではいくら綺麗にしても汚染が増えるばかりです。

私たちの生活の行為は、生活環境の悪化という結果となってすべて私たちに返ってくるということを、一人一人が意識し、悪循環を断ち切ることが大切と考えます。EMによる浄化活動は市民ボランティアが積極的に関わることができ、市民への環境保全の意識啓発へ繋げることできます。

今後も、自然の中に生かされる者として、自身の責任で行動する市民の輪を拡げるべく、活動を継続し多くの人に伝えていきたいと願っています。