日本の男性育休取得率は、明らかに低すぎです。なんでこんな現状なんでしょう。
東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長の渥美由喜さんによる、すばらしい記事が日経に掲載されているのでご紹介です。
男性育休取得率は1.89%、しかも短期間
男性の育児休業取得率がガクンと低下した。2012年度の男性の育児休業取得率はわずか1.89%で、前年度の2.63%から0.74ポイント減少。安倍晋三首相は「『女性が働き続けられる社会』を目指すのであれば、男性の子育て参加が重要」と成長戦略の中で打ち出しているが、これに逆行するかのような動きだ。
ただでさえ少ない育休取得率だというのに、なんとここに来て減少してしまったそうです。
さらに、その期間も酷い。これは育休って言わないでしょう。
たとえ育休を取ったとしても、期間は短い。「1~5日」が4割、「5日~2週間」が2割と2週間未満が6割を占める。育休取得者の割合はここ10年微増しているものの、その大半が1カ月未満という短期の取得者だ。
(中略)つまり、男性の大半が数日から数週間の「なんちゃって育休派」なのだ。
お子さんをお持ちの方であれば、「1~5日」の休みが、どれほど役に立たないものかは、よくご存知でしょう。これ、取得の時期も知りたいですね。もしも「1~5日」の休みが産後直後だとしたら、母子はまだ入院中でしょうから、父親は手みやげをもって病院に行くくらいしかできません。母子の退院と同時に、仕事が始まる流れになってしまいます。
東京都が行った別の調査では、育休の取得を希望する男性の割合は68.9%だと報告されています。単純に比較すれば、65%以上の男性が育休の取得を「我慢」していることになります。
子育てというのは、自分の大切な人生の一部です。そんな貴重な時間を「我慢」せざるを得ないなんて、なんて非人間的な労働環境なのでしょう。
「パタハラ」の問題も
さらに、記事中では「パタハラ」の問題も指摘されています。
上司: 「なんで、男のおまえが育休なんて取るんだ。キャリアに傷がつくぞ」
Aさん: 「たかだか4カ月のブランクでキャリアに傷がつくとしたら、僕がそれまでの人間だったということです」
上司: 「子どもの教育費は何千万円もかかるんだぞ。いっぱい残業して金を稼ぐ。これが家長としてのあるべき姿だ!」
Aさん: 「うちの場合、妻の方が給料も高いので妻を世帯主にしているんです。僕は家長ではありません…」
上司: 「そういう問題じゃない!バカモノ」
もはやマンガみたいな世界ですが、現実にあるのでしょう。ぼくの知人にも、ここまでひどくありませんが、「育休1年取りたいんですが…」と言ったら周囲から嫌な顔をされて、結局諦めることにした、という経験をした方がいます。その会社では、育休はもちろん制度として用意されています。
具体的な解決策
記事中で、渥美さんは次の三つの解決策を提案しています。いずれも強く共感します。
1. 男性の育児参加に先進的な取り組みをする企業の助成・表彰
2. 育児のための短時間勤務に対する所得補償の導入
3. 育児休業中のテレワーク(在宅勤務を含む)の認可・推進
あえて付け加えることがあるとすれば、これらの解決策を実現するためには、何よりぼくら市民の意識を変える必要があります。
市民の意識は古くさいとしか言いようがありません。先日も紹介した「少子社会に関する国際意識調査報告書」によれば、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に賛成する人の割合はトップを走っています(男性65%、女性56.8%)。
この価値観に反対する人の割合も、国際的に見て圧倒的に低いです。スウェーデン男性は74.5%が反対しているのに対し、日本ではなんと8.2%。
国によって価値観が違うのは認めますが、共働きがデフォルトのこの時代、いくらなんでも現実と乖離しすぎているでしょう。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」って、戦前の価値観ですか。それじゃワーキングプアになりますよ。うちはもちろん共働きです。
最後に、わが家にはもうすぐ9ヶ月になる子どもがいるのですが、いまは育児に時間を割くことができて本当に幸せです。会社を辞めて、よかった。
と、ぼくはたまたま恵まれていましたが、世の中には会社を辞めることができない人が大半です。男性育休取得率が1.89%、かつ大半は数日から数週間、さらにパタハラの問題もある…こんな狂った状況は、一刻も早く変えましょうよ。ホントに。