記者の目:脱法ハウス=加藤隆寛(東京社会部)

毎日新聞 2013年08月06日 02時00分

 国土交通省は公式には「脱法ハウス」ではなく「違法貸しルーム」との名称を使う。だが明確に違法と言えない施設が多いからこそ問題が広がったのであり、「明らかなクロ」だけ取り締まっても根本解決にならない。それでは、「グレーゾーン」の危険施設を見逃すことになる。

 逆に、現行法を拡大解釈して規制を強めれば、相応の広さを確保し、住み心地も追求する「白に近いグレー」のハウスも「一戸建てから共同住宅や寄宿舎に用途変更していない」などの理由で排除される可能性がある。いずれも利用者にとって不幸な事態だ。

 一方、締め付けでこぼれ落ちる人々の受け皿は用意されていない。既存の住宅支援政策は、失職者が次の仕事を得るまでのステップとして用意されたものや、生活保護の受給とセットになったものばかり。「頑張って働くが収入は少なく、普通のアパートに入るのが難しい人」のための施策は皆無だ。当然、受け皿を設けてから規制するのが筋だが、実際に整備するとなると財源問題が立ちはだかる。

 そうであれば、「安全なシェアハウスとはどのようなものか」を法令で明示し、その普及を促進していく方向にかじを切るしかない。採光や換気、一定の広さなど最低限の「人間らしい居住空間」を備え、火災時の避難経路も確保したハウスが増えれば、空き家対策にもつながる。求められるのは、やみくもな「規制」ではなく、むしろ新たなルールによる「規制緩和」だ。

 5日朝刊(東京紙面)で、「脱法ハウスは必要」と訴える声も取り上げた。脱法業者を持ち上げようというのではない。利用者には業者が「恩人」のように映っているという現実を直視し、国の関係者にも少なからぬ焦りや怒りを覚えてほしい。脱法ハウスの内情を見てきて、いつ大きな火事が起きてもおかしくないと実感している。法令改正に向けた具体的議論をすぐにも始めるべきだ。時間の猶予はない。

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