被爆:チェロ奏者、平和願う鳥の歌 体験語り演奏

毎日新聞 2013年08月05日 15時10分

原爆被害者の追悼式で鳥の歌を演奏する山崎さん(右)=奈良市で
原爆被害者の追悼式で鳥の歌を演奏する山崎さん(右)=奈良市で

 元大阪フィルハーモニー交響楽団のチェロ奏者、山崎隆さん(81)=奈良市=は約5年前から、広島での被爆体験を語り、スペインの世界的なチェロ奏者で平和活動家だったパブロ・カザルス(1876〜1973)が演奏し続けたカタルーニャ民謡「鳥の歌」を演奏している。「広島、長崎、全国の戦災……。『運が悪い時代だった』と終わらせてはならない」と語り、非戦の願いを込めた音色を奏でる。

 山崎さんは米軍が広島に原爆を投下した1945年8月6日、旧制中学2年で、爆心地から約4キロ離れた学徒動員先の工場にいた。衝撃で工場が揺れた。爆心地から約2キロの自宅に戻る途中、髪の毛が乱れ、やけどを負った人たちとすれ違った。国民学校5年生だった山崎さんの弟も犠牲になった。

 戦時中、童謡や唱歌をよく聴いた。戦後まもなく、写真館を営んでいた実家にあったバイオリンやギターを手に取り、高校卒業後にチェロを習い始めた。NHK広島放送局にあった管弦楽団で経験を積み、61年に大阪フィルに誘われて入団した。62歳まで所属し、欧米など海外でも公演した。

 広島を離れて久しく、被爆体験を人前で語る機会は無かった。5年ほど前、自宅近くの会場で開かれていた戦争に関する企画展に足を運んだ。原爆投下後の広島を撮った写真を見て、あの夏の惨状を思い出した。この企画展を機に、奈良県内の医療関係者でつくる団体から証言の依頼を受けた。

 体験を話すだけでなく、チェロ奏者として尊敬し、平和運動にも熱心だったカザルスの演奏曲を披露しようと思いついた。カザルスはスペイン内戦(1936〜39年)に抗議し、フランスに亡命。ファシズムに反対し、核実験禁止運動に参加するなど平和を訴え続けた。71年に米ニューヨークの国連本部で「故郷の鳥たちはピース、ピース(平和、平和)と鳴くのです」と演説し、「鳥の歌」を演奏して感動を呼んだ。

 山崎さんの証言は年に1、2回と多くはないが、請われたらチェロを持って演台に立つ。この夏は7月27日、奈良市の古刹(こさつ)・般若寺であった原爆犠牲者の追悼式に招かれた。体験を語り、鐘楼の下で「鳥の歌」を演奏した。「人前で話すのは少し苦手。その分、平和への祈りを込めた演奏を聴いてほしい」【宮本翔平】

最新写真特集

毎日新聞社のご案内

TAP-i

毎日スポニチTAP-i
ニュースを、さわろう。

毎日新聞Androidアプリ

毎日新聞Androidアプリ

MOTTAINAI

MOTTAINAIキャンペーン

まいまいクラブ

まいまいクラブ

毎日RT

毎日RT

毎日ウィークリー

毎日ウィークリー

Tポイントサービス

Tポイントサービス

毎日jp×Firefox

毎日jp×Firefox

毎日新聞のソーシャルアカウント

毎日新聞の
ソーシャルアカウント

毎日新聞社の本と雑誌

毎日新聞社の本と雑誌

サンデー毎日

サンデー毎日

週刊エコノミスト

週刊エコノミスト

毎日プレミアムモール(通販)

毎日プレミアムモール(通販)

毎日新聞のCM

毎日新聞のCM

環境の毎日

環境の毎日

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞を海外で読む

日報連

日報連