会社に見限られた職場は死んだよう
「拷問研修」で心を病んだ社員も
高田さんらアウトバンド二十数人は、午前10時から午後5時頃までの間に、お客さんの自宅に電話を入れ、自社で扱う化粧品などを案内し、契約に漕ぎ着ける。
オペレーターはその大半が契約社員で、期間は半年ごとが多い。3月末、定年(65歳)で3人が退職した。
定年退職以外にも、2人が辞めた。1人は63歳の高田さんで、もう1人はいじめに近い「研修」を受け、うつ病になり、依願退職した。現在は心療内科に週1回、通っているという。会社は、この5人の代わりに新たな人を雇うことはしていない。
高田さんは、依頼退職した女性を気遣う。「拷問のような研修を受けさせられたの。あれで、精神がおかしくなったのだと思う。5キロくらい痩せたみたい。当初は『がんになったのかな』と言っていた。診療内科に行くことは、抵抗感があったようだった」
会社の社員数は正社員・非正社員を含め、60人ほど。親会社は正社員が約150人で、地方に工場も持つ。グループ会社は10社ほどで、全体としては業績がよく、必要に迫られたリストラは行っていない。
2011年の秋頃から、高田さんが籍を置く部署は仕事が大幅に減った。不況の影響や、インターネットなどの化粧品販売が浸透し、顧客を奪われたことが背景にある。最近は、1日60軒くらい電話をしないと営業成績を維持できないほどに、顧客数が落ち込んでいた。リストは管理部門から与えられる。
会社も、この部門にかつてのようには力を入れなくなった。人員や予算などは縮小傾向にあった。ここ1~2年、職場は活気をなくし、高田さんいわく「死んだような雰囲気だった」という。