【佐々木敦斗、後藤洋平】広島で被爆した子ども105人の作文を集め、原爆投下の6年後に出版された「原爆の子」(岩波書店)。子どもたちは戦後をどう生きたのか。うち37人が手記を寄せた「『原爆の子』その後」が今月中旬、出版される。平和な時代への感謝や放射線の恐怖、被爆者への差別に直面した思いがつづられている。
作文を書いた子どもたちの親睦会「『原爆の子』きょう竹会」の会長で広島市安佐南区の早志(はやし)百合子さん(77)が手記を集めた。1989年からメンバーに後日談を募り始めた。
きっかけは、ともに自宅で被爆した母政子さんの死だ。甲状腺がんが転移し、手術を7回繰り返した。それでも「ぜったいに生き抜くんじゃ」と語っていた母の人生を振り返り、「被爆者の『その後』を伝えたい」と思い始めた。
つらい思い出が多いのか、手記はなかなか集まらなかった。原爆の悲惨さや平和の大切さを将来に伝えたい――。早志さんは一人一人に手紙で思いを伝えると、少しずつ返事が寄せられるようになった。
「家族そろって一応の食事ができる幸せな日々を送っています」「孫もでき、幸せに暮らしている」。平穏な日常や、原爆症への不安がつづられていた。