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(19時間34分前に更新) |
国防問題ばかりを追っていると心が渇いてくる。取材の内容が兵器の開発や軍事戦略ばかりで、住民の存在がみえてこないからだ。
米軍普天間飛行場の移設問題をめぐり、県民の存在抜きで日米両政府が議論を重ねていく様子をはがゆく思いながら、もしヘーゲル国防長官が沖縄を視察する機会があれば、普天間問題は果たしてどう動くだろうと考えることがある。
「沿道の人々の抗議が自分に向けられたものとは思わなかった」。2003年の訪沖の印象をそう話してくれたのはラムズフェルド元国防長官だ。
1969年当時、下院議員だった同氏はニクソン大統領に書簡を送り「戦後24年間、米国は日本人と沖縄人への配慮を欠いたまま沖縄を軍事基地として機能させてきた」と述べ、「軍部に沖縄基地の重要性を強調しないよう指示し、主要機能の移転を命ずるべきだ。もはや沖縄問題を交渉ゲームに利用する状況ではない」と訴えた。
それから時はめぐり2003年。稲嶺恵一知事(当時)との会談の印象を「表敬訪問のつもりだったがメディアも同席し、一方的に基地問題の改善を要請された」と声を荒げて語り、会談直後に部下に在沖米軍基地の役割の再検証を命じたことを明かした。
ラムズフェルド氏は視察の結果を米戦略にどう反映させようとしていたのか。
同氏が公的に語ることはまだないが、氏の右腕として訪沖に同行したデュボア元国防副次官は昨年1月、フェデラル・タイムズ紙への寄稿で「基地の存在が2国間の緊張を高め、同盟関係の弱体化や国内の政治情勢を悪化させる例もある」と普天間閉鎖と在沖海兵隊の役割再考をオバマ政権に促した。
沖縄が何度も上げる抗議の声に対し、政府は「丁寧に理解を求める」と繰り返す。そんな視界不良の日米両政府に、沖縄は単なる軍事拠点ではなく、人々が住む島なのだという単純な事実を突きつけたのが昨年の住民による普天間封鎖だった。
基地問題を解決するために、両政府に沖縄の顔が見える状況をつくり出すにはどうすればいいのか。緊急事態に備える空き地すらない普天間に、再びオスプレイはやってきた。(平安名純代・米国特約記者)