汚染地下水 東電に対策前倒し求める8月3日 5時7分
福島第一原子力発電所で放射性物質を含む地下水が海に流出している問題を受けて、国の原子力規制委員会で対策を検討する作業部会が初めて開かれ、東京電力は、地下水が流出しないよう敷地内で集める設備を新たに設置する計画を示しました。
専門家からは示した計画より前倒して対策をとるよう意見が出されました。
福島第一原発では、放射性物質を含む地下水が今も海に流出していることが明らかになり、原子力規制委員会は、専門家などでつくる作業部会を立ち上げ、2日、初会合を開きました。
この中で東京電力は、海への流出を防ぐため護岸沿いの地盤を固める工事を進めた結果、地下水の水位が上昇し、すでに固めた地盤を乗り越えているおそれがあると認めました。
そのうえで対策として、原発の海側に流れてくる地下水を集める「集水ます」という設備を新たに設置し、今月末からくみ上げを始める計画などを示しました。
専門家からは、事態が切迫しているため計画より前倒して対策をとるよう求める意見や、地下水の流れを詳細に解析すべきだといった意見が出されました。
原子力規制委員会では、引き続き、具体的な対策を検討するほか海に流れ出た放射性物質の広がり方や環境への影響を把握するため、今後別の作業部会を立ち上げて議論することにしています。
一方、東京電力は、おととし5月から先月にかけて地下水と共に海に流出した放射性物質のトリチウムの量が推定で、合わせて20兆から40兆ベクレルに上ると発表しました。
これは通常運転中の福島第一原発の年間の排出基準と同じ程度だということです。
セシウムやストロンチウムについては地中の動きの分析が難しく、試算に時間がかかるとしています。
汚染地下水の問題とは
放射性物質を含む地下水が問題になっているのは、福島第一原発の1号機から4号機のあるエリアです。
北から南へ1号機、2号機、3号機、4号機と並んでいます。
それぞれ山側から海側に向かって原子炉建屋、タービン建屋とあって、港までの地中には海水を取り込む配管やケーブルが通っているトレンチというトンネルが枝分かれしながら何本もあります。
高い濃度の放射性物質を含む汚染水は、主にこのタービン建屋の地下やトレンチにたまっているほか、周辺の地中にしみ込んでいるとみられます。
▽津波で侵入した海水や▽メルトダウンした燃料を直接冷やした水、▽山側から流れ込んだ地下水。
これらが事故で放出された放射性物質を含んで、大量の汚染水となっているのです。
今回の問題のきっかけは、ことし5月、2号機の海側にある観測用の井戸の地下水から、高い濃度の放射性物質が検出されたことでした。
特にトリチウムの濃度が去年の末に行った調査より10倍以上、高くなっていました。
トリチウムの濃度は港の海水でも上昇していました。
先月(7月)には、この井戸の地下水がことし4月以降、海の潮位と連動して上下していることがわかり、東京電力は汚染された地下水が海に流出していることを認めました。
地下水の汚染について、東京電力や原子力規制委員会はいくつかの見方を示しています。
まず、事故直後のおととし4月、汚染水が2号機の取水口付近から海に流出した際、一部が地中に広がって、地下水から検出されている可能性があります。
タービン建屋と港の間にあるトレンチなどが流出経路になっていたため、東京電力はトレンチの山側と海側を遮断して、海への流出を防ぐ対策をとりました。
次に、そのトレンチにたまった高濃度の汚染水が、地震で壊れた部分から水を通しやすい砂利の層を通じて広がった可能性が指摘されています。
トレンチには2万トン近くにのぼる汚染水がたまっていることは事故直後からわかっていましたが、浄化や除去といった抜本的な対策はとってきませんでした。
さらにタービン建屋にたまっている大量の汚染水がいまもこのトレンチなどを通して漏れ出しているおそれも指摘されています。
今回の問題をめぐっては、東京電力の対応が厳しく批判されています。
地下水の海への流出を認めるまでに1か月。
東京電力は「風評被害を懸念し、リスクを積極的に伝える姿勢より、最終的な根拠となるデータが出るまで判断を保留することが優先された」と対応のまずさを認めました。
「最悪の事態を想定して対策を重ねる」という事故の教訓は生かされませんでした。
[関連ニュース] 自動検索 |
・ 福島第一 地下水位上昇で流出対策検討 (8月1日 4時16分) ・ 東電決算 経常赤字294億円 (7月31日 22時34分) |
[関連リンク] |
|