高齢者ら大阪市の金銭管理サービスに殺到 7割が生活保護受給者
産経新聞 8月5日(月)16時22分配信
生活保護受給率が全国の都市で最も高い大阪市で、認知症の高齢者や知的障害者など判断能力が十分ではない人を対象に、金銭管理や支払い手続きを代行する公的サービスの利用者が増えている。5月末の利用者数は10年前の9倍近い約2600人。高齢化に加え、無料でサービスを利用できる生活保護受給者の申し込みが殺到しているという。一方、市の補助金だけでは活動資金が賄えず、利用者をサポートする人材の不足が深刻化しており、500人超の希望者が順番待ちの状態。サービスの停滞を懸念する声も強まっている。
大阪市社会福祉協議会(市社協)では「あんしんさぽーと事業」と名付け、支援を展開。市内全24区の在宅サービスセンターで通帳や印鑑を保管し、非常勤で雇用した生活支援員157人が、利用者宅と関係機関を行き来しながら金銭管理などにあたっている。
市社協によると、平成14年度末に295人だった利用者は増え続け、今年5月末現在で2584人に。約7割を生活保護受給者が占める。判断力が低下した受給者を「貧困ビジネス」を展開する悪質業者から守ろうと、ケースワーカーやケアマネジャーが利用を勧めるケースも少なくない。
利用料は訪問1回につき400〜800円だが、生活保護受給者は無料だ。民間にも同様のサービスはあるが、社協のサービスは低料金で、受給者は負担がないため希望者が多い。
一方で、現場の人手不足は深刻だ。生活保護受給者が区民のほぼ4人に1人に相当する西成区では、476人の利用者に対し、支援員は23人。独居の利用者が現金の置き場所を忘れて「食べ物が買えない」と連絡してくるなど、突発的に訪問を求められるケースも多く、支援員の一人は「これ以上利用者が増えるとフォローできない」と話す。
受給者の場合、保護費が口座に振り込まれる月末には、保護費を引き出して家賃や公共料金を支払う必要があるが、支援員がかかりきりになっても1日では対応しきれないという。
市社協は市から年約5億円の補助金を受けているが、利用料収入を得られない受給者の割合が多いため人件費を捻出できず、これ以上の支援員増員は難しい。このため、大阪市内では5月末現在で533人が新たに利用を希望しながらも、正式契約まで最大で半年間待たざるを得ない状況になっている。
最近は、高齢者向け賃貸マンションの事業者が一度に数十人分申し込むケースもあり、契約に要する時間は今後も長期化するとみられる。市社協幹部は「サービスを円滑に行うための抜本的な対策がないのが現状。どのように制度を維持すべきか議論が必要だ」と話している。
■金銭管理などの公的生活支援サービス 社会福祉法に基づき、認知症や精神障害、知的障害で判断能力が不十分な人を対象に、全国の都道府県と政令市の社会福祉協議会などが実施するサービス。金銭管理や消費契約手続きの代行、預貯金通帳や有価証券の保管、福祉サービスの利用手続きの援助などを行う。大阪市では希望者の申し込み後、複数回にわたって本人と面談し、判断能力などを審査。病状や障害が重いケースなど、成年後見制度の適用対象となった人の利用は認められない。
最終更新:8月5日(月)16時27分