「自閉症者の奇妙な振る舞い」を笑ってしまうことについて

2013/08/05


自閉症の作家、東田直樹さんと精神科医の山登敬之さんの対談イベントに参加してきました。


自閉症者を笑うということ


(東田さんが文字盤で対談している様子)


東田直樹さんは重度の自閉症の作家です。日常的な会話は難しく、また、奇声を発することもあれば、突然跳ね回ることもあります。イベント中にも、何度か席を飛び出して歌を歌っていました。


こうした寄行について、東田さんは「好きでやっているわけではない」と語ります。「自閉症者は自分の脳で自分をコントロールすることができない。壊れたロボットの中にいるようだ」とご本人。

さらに被せて、対談相手となった精神科医の山登さん。こうした奇妙な振る舞いを前にして、思わず笑ってしまうことの是非についてテーマを持っていきます。


そうなんです、悪気はなくても、思わず笑ってしまうんです。

東田さんは文字盤を使って会話をするのですが、ごく真面目な文章(たとえば障害者として生きることについて)を読み上げている際に、突然「今日の晩御飯は何?」と横にいるお母様に質問したり、「おはようニッポン!」とつぶやきだしたりします。

笑っちゃいけない感じもしますが、「晩御飯は何?」が飛び出した瞬間、会場は笑いにつつまれました。その他、山登さんが質問しているのに席を飛び出してしまうなど、イベント中には微笑ましいシーンがたびたび。


山登さん自身も臨床の場で、しばしば自閉症者の振る舞いを前にして、思わず笑ってしまうことがあるそうです。もちろんそこに悪気や、バカにする気持ちはありません。

さて、こうしてぼくら健常者が、自閉症者の奇妙な振る舞いを笑うことは、善いことなのでしょうか、悪いことなのでしょうか?


この種の問題について、以前、山登さんは東田さんのお母様に「やっぱりああいう振る舞いを笑われると、本人は傷つくんでしょうかね?」と訊ねたところ、「本人は自分が芸人になった気がして嬉しい、と話していますよ」というお答えだったそうな。

会場では改めて山登さんから、「東田君、そこんところは本当はどうなの?」とご質問。東田さんは文字盤を使いながら「そうです。僕は笑ってもらった方が、気が楽になるのです」と回答してくださいました。


とはいえ、笑われることについてどう思うかは、個々人の自閉症者によって判断が分かれます。東田さんに「とはいえ、笑われて気が楽になるかどうかは、人によりますね」と釘を刺された山登さんは、それ以来笑わないように気をつけているとか…笑


山登さんは「基本的に、自閉症の人たちを前にして、ぼくらが笑ってしまうということは、好意的なことだと思う。それは東田君にも伝わっている。自閉症の人の特性が笑いを誘うのは健康的です」とも語っておられました。

そんなわけで、相手との関係性に次第ですが、思わず笑ってしまうことに罪悪感を感じることはないのでしょう。そう考えておけば、自閉症の方々とも幾分うまく付き合えるような気がします。


東田さんはこれまで15冊の著書を出版しています。こちらの「自閉症の僕が跳びはねる理由」は、なんと英訳されて世界で販売されています。

この方の存在はもっともっと多くの人に知ってもらいたいので、本ブログでも取り上げていこうと思います。本場のTEDに出演してもらいたい人物です。


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