●古田雄介のプロフィール:
1977年生まれ。建設業界と葬祭業界を経て2002年にライターへ転職し、テクニカル系の記事執筆と死の周辺の実情調査を進める。ネット上の死の現状をまとめたルポ『死んでからも残り続ける「生の痕跡」』(新潮45eBooklet)を各種電子書籍サイトで販売中。ブログは「古田雄介のブログ」。
●A. 専用ソフトで見られたく部分だけ削除しよう
PCの中身を見られたくないなら、秘密のパスワードをかけたり指紋認証を利用したりして、自分以外の誰もログインできないようにするのが手っ取り早い。ただし、残された家族の立場からすると、PCは故人の重要なデータが詰まった貴重な情報源でもある。エンディングノートなどで遺品の存在や希望する処理の仕方が明らかにならないとき、その答えをPCに求めたくなるのは人情だ。その人情をHDD単位の暗号化でブロックする手もあるが、見られたくない部分だけ死後に削除する仕掛けを作るほうが、導入コストもかからないし家族にも親切だろう。
死後に指定したデータを削除するフリーソフトは、ゆき氏作の「死後の世界」と、C-LIS Crazy Lab.の「僕が死んだら…」が有名だ。削除日を指定したり、一定期間起動がないときに消去したりするならばタスクトレイ常駐型の「死後の世界」を、遺族にお別れ用のアイコンをクリックしてもらうことで作動する仕掛けなら「僕が死んだら…」を選ぼう。
●※注:あなたのPCにアクセスする人のスキルは、おそらく高め
どちらを使うにせよ、削除するファイルやフォルダが自由に指定できるので、見せたくないデータを思い思いに登録していけばいい。ただ、ここで忘れてはならないのは、日々のアクセス履歴の蓄積である「一時ファイル」の存在。あなたのPCにアクセスする人は、遺族や友人のなかでも高いスキルを持っている可能性が高い。大切なデータを探す過程で、直前の足取りが重要なヒントになると気付くのに時間はかからないだろう。徹底したいなら、Webブラウザの一時キャッシュを終了時に削除する設定にしたり、スタートメニューに並ぶ「最近開いたプログラム/項目」を表示しないようにするなどの手を打っておこう。
あとは、削除処理の際に表示するメッセージに、プロバイダーのアカウントや連絡すべきメールアドレスなど、残された人たちが必要とするような情報をまとめておけば完璧だ。相手のニーズを把握して提示することが、最大の“防御”になる。
[古田雄介,Business Media 誠]