復興庁密議:被災者無視の時間稼ぎ「責任押し付け合い」

2013年08月01日

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子ども・被災者生活支援法を巡る経過

 「懸案が一つ解決。白黒つけずに曖昧なままにしておくことに関係者が同意」。復興庁元参事官のツイート(書き込み)通り、同庁は「子ども・被災者生活支援法」の土台をなす放射線量基準の線引き作業に、いまだ着手すらしていない。短文投稿サイト「ツイッター」で繰り返された暴言は、一官僚の見識にとどまらず、庁全体として原発事故の被災者支援に後ろ向きな姿勢を浮かび上がらせた。【日野行介、袴田貴行】

 暴言ツイッター問題発覚後の7月3日、元参事官の上司に当たる伊藤仁統括官が、支援法の基本方針を早期に決めるよう求めてきた市民団体と面談した。団体が3月7日に開いた集会に出席した元参事官は「左翼のクソどもから罵声」とツイートしていた。面談では次のようなやり取りがあった。

 団体 復興庁の回答にある「複数の省庁にまたがるある施策」とは何か。

 伊藤氏 回答にある通りで、支援策を先送りするという意味ではない。具体的な施策について特定するのは差し控える。

 団体 元参事官の話だと「(基本方針は)線量基準ができないとどうにもならない。それは原子力規制委員会待ちだ」ということだった。

 伊藤氏 線量は支援法だけでなくいろんなものがあり、それについて(規制委に)検討をお願いしているところだ。

 伊藤統括官は団体に謝罪し、問題のツイートについて元参事官への事情聴取を基に説明した。だが「懸案」の具体的内容には言及せず、一貫して元参事官の個人の問題だと強調。庁として線量基準の検討を主導する姿勢も示さなかった。

 国の関係者によると、実際、復興庁は2月に線量基準作りを原子力規制委に打診して紛糾。どこが検討を主導するのか曖昧にしたまま、近づく参院選に配慮して先送りした可能性が高い。

 一方で、同庁は3月15日、支援法の基本方針とは別に「被災者支援施策パッケージ」を公表した。だが「自主避難者を対象とする高速道路無料化」のほかはこれまでの施策を並べただけだとして、支援法の推進を求める国会議員や被災者らから「骨抜きだ」と批判を受けた。パッケージ公表の背景について、国の関係者は「復興庁は6月で支援法成立1年を迎えるのを気にしていた」と指摘する。

 7月3日の面談に同席した島薗進・上智大神学部教授(宗教学)は「復興庁は、暴言ツイッター問題を元参事官個人の問題に矮小(わいしょう)化していたが、庁全体の消極姿勢が鮮明に表れた」と厳しく指摘する。福島県富岡町から東京都江東区に避難している元同町職員、小貫和洋さん(65)は「福島県内外で、避難者が先の見えない不安を覚えながら暮らしている。法律に沿って一日も早く支援の手を差し伸べてほしいのに、省庁の責任の押し付け合いに時間が浪費されていたとは許せない」と無念そうに話した。

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