在韓英国人が見た韓国社会

 タイトルでは「奇跡」と「喜び」が対になっているが、その後に続くのは片や「成し遂げた」、片や「失った」と正反対になっている。著者は2002年の国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップ(W杯)韓日大会で初めて韓国を訪れた英国人。そのまま韓国に滞在し、英語講師や証券会社の社員などを経て、現在は『エコノミスト』韓国特派員。著者は「韓国を貧困から救い、立ち上がらせた競争の力が、今日韓国人を苦しめている心理的要因」と診断した。

 本書は「韓国の顔をした資本主義」から始まる。著者は「独裁については両極端に意見が割れるが、朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領が経済に及ぼした影響を過小評価してはならない」とする一方で「権力と財閥が結託した韓国式資本主義は、辞書的な意味での資本主義とは異なっており、ある面では今も続いている」と批判した。太陽政策については「北朝鮮が『外套』を脱ぐどころか核開発を続けたという点で、惨憺たる失敗」と断定した。

 教育で世襲される「新・両班(ヤンパン=朝鮮王朝時代の貴族階級)」、幼年期を喪失した「勉強マシーン」、整形手術ブーム、体面インフレなど、韓国社会の急所を突いた部分は痛烈だ。韓国の民族主義は攻撃的ではなく防衛的、という解釈も興味深い。外部の脅威に鋭く反応する「防空壕(ごう)感情」がある一方、社会を団結させる接着剤の役割も果たしたという。454ページ、1万7000ウォン(約1500円)。

朴敦圭(パク・トンギュ)記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 【新刊】ダニエル・チューダー著、ノ・ジョンテ訳『奇跡を成し遂げた国、喜びを失った国』(文学トンネ社)

right

関連ニュース