クローズアップ2013:津波2年5カ月、宮城・大川小 進まない検証、不信増幅

毎日新聞 2013年08月05日 東京朝刊

「なぜ大川小だけ大勢が犠牲になったのか」。遺族らは宮城県石巻市教委や検証委員会に対し、事故の「核心」を究明するよう訴えた=同市成田の市河北総合センターで2013年8月4日午後1時42分、金森崇之撮影
「なぜ大川小だけ大勢が犠牲になったのか」。遺族らは宮城県石巻市教委や検証委員会に対し、事故の「核心」を究明するよう訴えた=同市成田の市河北総合センターで2013年8月4日午後1時42分、金森崇之撮影

 ◇情報小出し/避難状況、今も不明

 多くの犠牲者が出た場所で、東日本大震災が起きたとき何が生死を分けたのか。検証が不十分なために「避けられた死、ではなかったのか」との疑念を残す現場が被災地には少なくない。児童・教職員84人が津波で死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校では先月、第三者検証委員会がようやく「中間とりまとめ」を出した。市教育委員会のずさんな対応が、遺族の反発と検証の遅れを招いた。防災の教訓を引き出せず、遺族が前を向くこともできないまま、震災から2年5カ月を迎えようとしている。【近藤綾加】

 「なぜ核心に触れていないのか」「遺族の意見が反映されず、蚊帳の外だ」

 約9カ月ぶりに市教委が遺族説明会を予定していた4日。直前に宮城県沖で起きた震度5強の地震のため中止されたが、市内の会場に集まった遺族らは報道陣に、「中間とりまとめ」への不満や疑問点を次々と語った。地震から津波襲来まで約50分もあったのに、なぜ校庭にとどまり逃げられなかったのか−−。今も抱き続ける疑問の「核心」に触れておらず、遺族のいらだちをかきたてている。

 検証委は、防災専門家や大規模事故遺族ら10人でつくる第三者機関。当日の避難状況などを調べるため昨年12月に発足した。その最大の理由は、遺族の市教委に対する強い不信感だった。

       ◇

 大川小の裏に授業でシイタケ栽培をしていた山がある。「裏山に逃げて助かっているはずだ」と信じていた親らは、市教委に説明を求めた。震災1カ月後の最初の説明会で市教委は、生存教員の証言などから「倒木で山には避難できなかった」と釈明。遺族側は「一本も倒れていなかった」と反発した。

 続く第2回で市教委は「今後、説明会はない」と発言。6年生だった次女の佐藤みずほさん(当時12歳)を亡くした母かつらさん(47)は「目の前が真っ暗になった」と振り返る。遺族の要請で継続され、昨年10月までに計7回を数えたが、その度に不信感は増した。

 重要な事実が小出しにされたからだ。例えば、唯一の生存教員からの報告メールを校長が削除していたことは第5回で発覚。理由を遺族が尋ねても、市教委の回答は要領を得ない。別の回で「助かった児童の証言が報告書に反映されていない」と遺族が指摘すると、「聞き取りメモを廃棄した」ことを認めた。

 仕切り直しのため市教委は昨年3月、第三者機関の設置方針を表明。市議会は同12月、遺族との話し合いの継続などを条件に関連予算を可決した。だが「検証される当事者」であることを理由に、市教委は新たな説明会を一時拒んだ。

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