社説
元検事不起訴 こんな幕引き許されぬ(8月5日)
市民で構成する検察審査会が突き付けた疑問に答えたとは言い難い。これで捜査が終結され、真相が闇に葬られるのであれば憤りを覚える。
生活の党の小沢一郎代表(71)=元民主党代表=が強制起訴され、無罪が確定した陸山会事件に関する虚偽捜査報告書問題で最高検は田代政弘元東京地検特捜部検事(46)を再び、不起訴(嫌疑不十分)とした。
元検事は虚偽有印公文書作成容疑などで市民団体から刑事告発され、最高検は昨年6月、不起訴とした。
今回の処分は、東京第1検察審査会が4月に「不起訴不当」と議決したのを受けた再捜査の結論である。
最高検は「捜査を尽くしても虚偽の記載をするという故意が元検事にあったと認めるのは困難」とした。
しかし、どのように「尽くした」のか、具体的な説明はない。
だれを聴取し、どんな供述を得たか。その裏付けにどういった資料を集めたか。最高検は捜査の具体的内容を国民に説明する責任がある。
その上で、処分が適切だったか、厳しく検証されるべきだ。
このままでは検察審が「捜査が不十分か、不起訴にするために故意がないとしているとさえみられる」と議決で呈した疑念は深まる一方だ。
捜査報告書は小沢氏の元秘書の石川知裕前衆院議員(40)に対する任意聴取の概要をまとめた。
実際はないやりとりが記載され、それ以前に石川氏を取り調べた際の供述調書の信用性を高める内容だ。小沢氏の起訴議決をした別の検察審に提出され、判断に影響を与えた。
検察史に残る不祥事なのに、最高検は捜査を任意で行った。「記憶が混同した」との元検事の主張をそのまま認めた。
一方、大阪地検特捜部の証拠改ざん隠蔽(いんぺい)事件で最高検は担当検事らを逮捕した。対応の差に検察内からも「バランスを欠く」との疑問が出ているというが、当然だ。最高検は重く受け止めなければならない。
検察審の在り方も考えたい。
4月の議決は最高検の捜査を厳しく批判しつつ、結論はなぜか、強制起訴の道を残す「起訴相当」とはならなかった。どんな捜査資料が出されたのか、検察の誘導がなかったかなど審査過程を明らかにすべきだ。
弁護士会の推薦で委嘱されたとはいえ、審査員に法律的助言をした審査補助員の弁護士は検察OBだったことも思い出す必要がある。
起訴権限の行使に民意を反映させるという検察審を十分に機能させるには独立性と透明性を確保しなければならない。そのために、どんな仕組みをつくればいいか。今回の問題を契機に国民的論議が欠かせない。
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