社説:「食品ロス」削減 社会全体で取り組もう

毎日新聞 2013年08月05日 02時30分

 食べられる食料を捨ててしまう「食品ロス」が、国内で年間500万〜800万トンあると推計されている。世界の食料援助量の約2倍に相当する。本当にもったいない。政府、メーカー、卸、小売業者が参加する「製・配・販連携協議会」がこの夏、お菓子や飲料の納品期限を延長してメーカーへの返品を減らし、廃棄されないようにする実証事業を始める。これを成功させ、さらに削減の取り組みを広げてほしい。

 お菓子や飲料は、製造日から賞味期限までの期間の3分の1を過ぎると小売店舗に納品できなくなる「3分の1ルール」という業者同士の商慣習がある。今回、これを「2分の1」に見直す。賞味期限が1年なら、納品日が製造後4カ月を一日でも過ぎると返品されていたが、半年まで納品を認める。4カ月とか半年は長いとは思うが、メーカーや卸業者は小売業者の注文にすぐに応じられるようにするため在庫を多めに持っており、期限を過ぎてしまうケースがあったという。

 納品期限切れが原因の返品は、大手卸業者の調査で、納品全体の0.3%ほど、金額では300億円程度という。事業には大手35社が参加する。返品が少なくなればコストも抑えられ、業者にもメリットがある。このルールを常態化し、参加する業者を増やしてほしい。

 ただ、店で発生する食品ロスは、お弁当やパン、総菜など「デーリー食品」と呼ばれる食材に多い。こちらは今回の事業対象にはなっていない。商品管理の徹底や、長持ちする包装材の開発などで個々に取り組んできたというが、業界で廃棄を減らす工夫を凝らしてほしい。

 消費者も意識すべきことがある。まずは外食時の食べ残しだ。レストランや居酒屋で、もったいないと思いながら料理を残す経験は多くの人にあるだろう。宴会や飲み会などでは店とよく相談して注文するようにしたい。衛生上問題のない食品の場合は持ち帰り容器も活用できる。

 また、食品ロスの半分近くが家庭で発生している。農林水産省によると、世帯での1人あたりの食品ロスは1日41グラムで食品使用量の3.7%を占める。京都市の調査によると、家庭の生ゴミの22%が手つかずの食品で、パンや菓子、調味料が多かった。

 国連食糧農業機関(FAO)は、2011年にまとめた報告書で「中・高所得国では、食料はかなりの割合が消費の段階で無駄にされる」と指摘し、「食料ロスの低減は、最も重要な優先事項である」と強調している。今回のメーカー、流通業者の取り組みをきっかけに、個人も含め、社会全体で食品ロスを削減する取り組みを拡大したい。

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