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【転載歓迎】「JAPANデビュー第4回」全内容-Part.4

★ドイツ連邦軍事アーカイブ

一方ドイツには、ドイツ側の思惑を窺わせる記録が残されていました。

★ドイツ海軍作成 日本視察団関係史料

報告書の中で、ドイツ海軍は、同盟を理由に様々な要望を出してくる日本を、厳しい目で見ていました。これは日本海軍が提出した要望のリストです。潜水艦の部品から、暗号機まで、様々な物品の入手や、情報の提供を申し入れていました。

「日本は三国同盟を満たすために必要、という理由によって、ドイツに知的資産の大売出しを要求出来ると信じているが、それは間違いとして拒否しなければならない」

ドイツとの同盟に多くを期待した日本海軍。しかし、レーダーについて視察団が手にした成果は、限られたものでした。

波長10センチのレーダーの実用化に向けて、歩みを速めるのがイギリスです。イギリスの選択は、アメリカとの提携でした。ドイツとの戦争が続く中、チャーチル政権は、自国でのさらなるレーダー開発は、困難と判断したのです。アメリカとの提携を探る視察を命じられたのが、科学者のアーチボルド・ヒルです。36歳の時にノーベル生理学賞を受賞。その後、イギリスの空軍省でレーダーの開発に協力していました。

1940年3月。渡米したヒルは、イギリス大使館を拠点に、波長10センチのレーダーに関するアメリカの研究の進捗状況を探ります。そして、たとえイギリスの機密情報を渡すことになっても、アメリカの大学や企業の力を利用することは、イギリスの国益に叶うという結論に達しました。帰国後、ヒルはこう提言しています。

「いま我々に必要なのはアメリカの全面的な協力である。彼らは必ず我々の側につく。いま我々が持つべきは、古くさい優越感ではなく、率直であることだ」

自らの国力を冷静に分析したイギリスは、ルーズベルト大統領にこう伝えました。

ルーズベルト大統領宛・駐米大使電報:
「貴国が関心を持つあらゆる装置についての完全な詳細を、一切包み隠さず供与したい」

極秘の派遣団によって、イギリスから運ばれたマグネトロンは、先ずマサチューセッツ工科大学に持ち込まれます。ここには終戦までに、最大4000人の科学者が全米から結集。レーダー開発に必要な、あらゆる部品の設計と基礎実験が行われます。およそ一年で、実用化の目途が付けられました。

それを大量生産するシステムを作りあげたのが、レイセオン社です。現在、年2兆円の売り上げを誇る世界有数の軍需企業です。イラク戦争などで使われたパトリオットミサイルや、トマホークの製造元です。

マグネトロンの量産化には、安定した電波発生のために、この部品の精密加工が必要でした。レイセオン社は薄い円盤状の部品を貼り合わせて作る工法を開発します。そして、熟練工を必要としない、マグネトロンの大量生産を実現させました。

この頃までに世界の情勢は、チャーチルが望んだように、動いていました。アメリカが第二次世界大戦に本格参戦。太平洋における日本との戦争を引き受けていました。1942年、ガダルカナル島を巡る「ソロモン諸島の戦い」に、波長10センチのレーダーが初めて実戦投入されます。戦艦「ワシントン」にも、完成したばかりのレーダーが搭載されました。これがその送受信アンテナです。ワシントンと同じ型のこの戦艦には、第二次世界大戦中に開発された波長10センチのレーダーが残されています。

★ワシントンと同型艦・戦艦「ノースカロライナ」

ジェリー・ジョンソンさん、82歳。第二次世界大戦中、この戦艦でレーダーの操作を担当していました。レイセオン社製のレーダーのモニターです。情報は、緑色の二つの画面に映し出されました。

元レーダー担当 ジェリー・ジョンソン(82)さん(英語:NHKによる翻訳):
「とても頼りになりました。回転するアンテナが前方の敵艦を探知すると、それが画面に表示されました」

PPIスコープ。回転するアンテナと連動する画面で、敵が何処にいるか、一目瞭然です。

★PPIスコープ(全周囲レーダー表示器)

こちらの画面では、敵艦の位置を示す突起に、波形の窪みを合わせると、距離が分かります。1942年11月14日、深夜のガダルカナル島沖。4隻の日本の軍艦が、島影から現れた瞬間を、戦艦「ワシントン」のレーダーが探知。一斉砲撃を始めます。この時、ワシントンの存在にさえ気付いていなかった戦艦「霧島」。いきなり砲弾を撃ち込まれ、航行不能となり自沈しました。

「霧島」に乗っていた帆足宗次さん、92歳。211人の戦友を失いました。戦後、手彫りの模型を作り続けたのは、その壮絶な最期が何時までも脳裏を離れないからです。

戦艦霧島 元砲塔員 帆足宗次(92)さん:
「砲弾がですね、炸裂するでしょ。物を壊す、人間なんかもうそりゃ、もう切り刻むというような感じですね、ばあー。兎に角、あの頭が無くなっとる、足が無くなっとる、手が無くなっとる、というか、大体その形をしとらんですね。それっていう、それだけがやっぱり、あの炸裂した弾が部屋中を引っかき回して、殺してしもうたというような感じですね」

★駆逐艦「春月」1944年竣工

日本も開発を続けていた波長10センチのレーダーを、1943年以降、実戦に投入します。

★二号ニ型電探(レーダー)

しかし、マグネトロンの中心部分の精度が充分ではなく、安定した性能を発揮することが出来ませんでした。敵の状況を知るレーダー技術の優劣は、戦局を決定付けます。1945年8月、敗戦。明治以来、戦争に次ぐ戦争の時代を生きたジャパンの最後でした。

ロンドン大学名誉教授(日英関係史)イアン・ニッシュさん(英語:NHKによる翻訳):
「同盟とは、そもそも何か。よく考える必要があります。たとえ同盟国であっても、全ての目標を共有することは出来ない。つまり、同床異夢なのです。明治初期に北海道に来たアメリカ人教師の日本へのメッセージに、大志を抱け、というものがありました。そして、常に大志、野望を抱き続けた日本は、多くの目的を達します。しかし、国家にとって重要なのは、その大志を国際関係の中で、現実的に摺り合わせることです。日本は、それが出来ませんでした」

日本海海戦の勝利を祝う「三笠」の記念式典です。今、最も重要な来賓として招かれているのは、現在の同盟国アメリカの司令官です。

第七艦隊司令官 ジョン・バード中将(英語:NHKによる翻訳):
「米海軍と海上自衛隊の強い絆を三笠の歴史とともに祝福します(式典挨拶)」
「現在の日米関係はかつてないほど強いものです。我々は緊密に協力し、日本とその周辺地域を守ります」

戦後64年。レーダーによる直撃弾で、数多くの戦友を失った帆足さんは、今も慰霊を続けています。

戦艦霧島 元砲塔員 帆足宗次(92)さん:
「一日も忘れたことはありません。どうぞ、安らかにお眠り下さい」

戦後、焼け野原の占領の時代から再出発した日本は、半世紀を超えて、アメリカとの同盟を維持してきました。複雑な国家戦略が交錯する中で、真に日本の国益となる情報を如何に掴むのか。他国との同盟を、どう選択し、何を得るのか。日本が世界にデビューした150年前から今なお続く重い課題です。


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★エンドロール
NHKスペシャル
シリーズJAPANデビュー
第4回 軍事同盟 国家の戦略

資料等協力(略)

音楽:プロジェクトimage
加古隆 羽毛田丈史 松谷卓 小松亮太 古澤巌 宮本笑里
ゴンチチ
タイトル映像:西郡 駿
語り:濱中博久、礒野佑子
声の出演:81プロデュース
撮影:日昔吉邦 板倉達也
音声:鈴木彰浩 北野栄治
照明:野島生朝
映像技術:真壁一郎
映像デザイン:森内大輔
CG制作:工藤薫裕季 小田健市
リサーチャー:田村都志夫 サブリナ・エレオノーラ 岩本善政
藤岡ひかり
コーディネーター:
バッサロ・桃坂麻由子 孫明淑 柳原緑 ナタリア・ゴリーチェバ
ペティーナ・ポスト小林
音響効果:佐々木隆夫
編集:吉岡雅春
取材:山本貴志子 田中敬子
ディレクター:宮本康宏 三須田紀子
制作統括:林新 河野伸洋
制作著作:NHK
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文字起し:夕刻の備忘録
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Author:JIF-情報統括
すべての拉致被害者の
 生存と救出を祈って…

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