果たして今期も様々なアニメがスタートし、約1月あまりが経過した。そわそわしながら第1話をチェックする時期は終わり、そろそろ毎週楽しみ家へと帰る曜日も決まってきた頃だろうか。
もしかしたら「今期のアニメは箸にも棒にもかからなかった」という人も居るかもしれない。……というわけで(本当は毎期ごとに書いているが)本稿では、今期のオススメタイトルをご紹介する。
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オリジナルから人気漫画・ライトノベル作品原作まで、今期も様々なアニメが放送されている中で、今回取り上げるタイトルはズバリ、スパイク・チュンソフト発売のゲームを原作としたアニメ作品『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 The Animation』(以下『ダンガンロンパ』)だ。
※ちなみに『ダンガンロンパ』は推理要素が強い作品だ。文中にアニメ版・ゲーム版の公式サイトから見て取れる以上のネタバレは含まれていないが、念のため「まだアニメ版もゲーム版にも触れていない」という方は一応注意してほしい。
とかく原作付きのアニメにおいて「原作と違いすぎる」や「原作のストーリーが再現されていない」といった批判は、よく耳にすることだろう。
しかし、原作から寸分違わない内容にも関わらず(原作の人気に対して)評判が上がらない作品は少なくない。また、逆に原作から大きく離れた作品が評判を浴びた例もある。そう、重要な事は「原作に沿っているか否か」ではないのだ。
「じゃあ、その“重要な事”とやらは何だ?」という問いかけに、非常に分かりやすく答えてくれているのが、今期より放送が開始された『ダンガンロンパ』である。
まず、『ダンガンロンパ』について簡単に説明しておこう(知っている人は飛ばしてOK)。原作のゲーム『ダンガンロンパ』は、「超高校級」と呼ばれる様々な才能を持った16人の高校生が、閉鎖された学園内からの脱出をかけた殺し合いを展開する、推理アドベンチャーゲームだ。現在2つのシリーズが発売されているが、アニメ版ではその第1作目を原作としている。
4話まで放送を観た方は分かるかもしれないが、アニメ版『ダンガンロンパ』は“原作を再現”するタイプの作品だ。ストーリーラインやグラフィックデザインなど、可能な限りの要素を原作から引用している。
アニメ版と原作との最も大きな相違点は、主人公「苗木誠」の立ち位置だ。原作では、基本的にすべての場面でプレイヤーキャラクターである苗木が登場しており、彼が見聞きできる情報以外はプレイヤーの目に入ることは無い。そのため、推理を展開するのは常に苗木の役目だった。
しかし、アニメ版では視点が苗木以外に移り変わる場面も多い。それどころか、苗木以外の人間が新たな証拠を提示し、推理を進めることすらある。しかし、それに違和感を感じる視聴者は少ないはず。なぜなら、その方がアニメとして自然だからだ。
推理ゲームである原作「ダンガンロンパ」では、主人公=プレイヤーでもあるため、ほとんどの場面で主人公が進んで何かを調べたり、誰かに促されて行動を取る事になる。だが、アニメにおける主人公と視聴者は(行動に共感はしても)基本的に別の存在だ。主人公の苗木に主要な視点を置きつつも、ひとりの独立したキャラクターとして扱わなければならない。
原作はあくまで「ゲーム」という、アニメとは根本的に異なるメディアである以上、過度な“原作順守”は大きな違和感を呼び起こしてしまう。アニメ版「ダンガンロンパ」は、その点を上手にまとめ上げているのだ。第3話で起こる「学級裁判」における会話の流れは、特にアニメらしい変化が加えられているので、興味がある人は見比べてみると良いだろう。
キャラクターや状況解説(状況設定)、およびストーリー展開は「アニメ」らしく、世界観を作り出すグラフィックや演出面は「ゲーム」(原作)らしく、という形を徹底した『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 The Animation』は、まさにゲームのアニメ化における教科書のような作品なのだ。
これから、原作ゲーム『ダンガンロンパ』のストーリーを、どのようにアニメへと再構成していくのか。今後も注目して行きたいところである。