教育委員会の改革が文部科学省の審議会で議論されている。8月中にも原案が出る。大津市の中学校や大阪市立桜宮高校など、いじめや体罰を受けた子が亡くなる事件が相次いでいる。そ[記事全文]
中部地方を横断し、東京、名古屋、大阪を結ぶJR東海のリニア中央新幹線計画が徐々に見えてきた。東京と名古屋の間で環境影響評価を進め、中間の四つの駅の位置を盛り込んだ準備書[記事全文]
教育委員会の改革が文部科学省の審議会で議論されている。8月中にも原案が出る。
大津市の中学校や大阪市立桜宮高校など、いじめや体罰を受けた子が亡くなる事件が相次いでいる。それが教育委員会への批判につながっている。
対応があまりに遅い。市民感覚とかけ離れている。首長は民意の代表なのに、今の制度では教育に口をだせない。首長の権限を強める「抜本改革」が必要だ――。首長や政治家らのそんな主張が力を得た。
だが、大津と大阪の調査報告書を読むと、問題は別のところにあるように思えてならない。
教育を行政任せにせず、住民目線で点検してものを言う。それが委員会の役割だ。そして、教育行政の実務は委員会の下にある事務局が担う。
ところが、大津でも大阪でも教育委員は情報のかやの外に置かれていた。問題が起きた学校とは事務局がやり取りをして対応を決め、委員会にはろくに報告も相談もしていなかった。
ならば、大切なのは委員会に大事な情報が上がるようにすること、つまり本来の「外の目」として機能するように制度を見直すことではないか。
多くの自治体では、事務局は教員出身者が主体だ。身内意識や目上の校長への遠慮から学校を強く指導できず、学校をかばおうと委員会への報告が甘くなりやすい構造にある。
これに対し、たとえば京都市教委は事務局の7割を教員ではない行政職とし、学校を指導する指導主事に校長格のベテランを多く起用している。学校にものが言える組織に事務局を改めるうえで参考になる手法だ。
教育行政に住民の声を届けるためには、委員会の発言力を高めなくてはならない。
それには仕事の選択と集中を進めるべきだ。委員は非常勤でせいぜい月2回しか会議を開けない。一方で、守備範囲は学校教育から文化財、スポーツ、公民館事業まで幅広く、一つ一つの議論が薄くなりがちだ。
事務局やほかの行政部局に任せていい仕事もあるだろう。子どもの安全や教科書採択のような重要な事項に議題をしぼり、じっくり議論できる環境を整えたほうがよい。
民意の反映には、委員の選び方も大切だ。学校をよく知り、かつ客観的に考えられる人物を任命する。
そういう人材を育てるためにも、コミュニティースクールをはじめ、住民や保護者が学校の運営や支援にかかわる仕組みを広げたい。
中部地方を横断し、東京、名古屋、大阪を結ぶJR東海のリニア中央新幹線計画が徐々に見えてきた。
東京と名古屋の間で環境影響評価を進め、中間の四つの駅の位置を盛り込んだ準備書が秋に公表される。9兆円を超す建設費はすべてJR東海が負担し、東京―名古屋は27年に開業する。全線開通は45年の予定だ。
3大都市を1時間程度で移動できるようにし、日本の成長につなげたい、とJR東海は説く。来年で開業50年を迎え、老朽化が懸念される東海道新幹線の代替役との位置づけもある。
一企業でこれほどの事業を手がける意気は立派だが、何しろ計画は9都府県にまたがり、社会への影響は大きい。人口減少時代に新線が必要なのか、という疑問も消えない。
さまざまな異論や意見にきちんと対応しながら進んでこそ、リニアは社会に根付く。そこを十二分に留意してもらいたい。
たとえば、各地での住民説明会ではリニアの安全性や、発生する磁界による健康影響、工事に伴う環境破壊への懸念を示す声が出ている。
JR東海は半世紀に及ぶ研究で安全性は確認されている、と強調する。磁界の影響は国際基準を下回り、環境保全にも万全を期すという。
慣れない先端技術に不安を抱く人たちがいるのは、社会の常だ。「安全」と繰り返すばかりでなく、納得が広まるまで説明を尽くす責務がある。
5月に公表された中間駅のデザインも議論の的だ。ネットなどによる全席事前指定制なので切符売り場は設けず、待合室も売店もない。「商業施設などが必要なら、地元負担で追加を」というのが基本姿勢だ。
JR東海は2年前、地元負担を求めてきた中間駅の基本建設費を自己負担に切り替えた。ただ、駅は沿線住民とリニアの唯一の結節点でもある。どんな駅がふさわしいか。切符売り場や待合室は本当に不要か。経費分担のあり方も含め、地元自治体とじっくり協議すべきだろう。
実のところ、新駅をどう生かせば地域活性化につながるのかは、課題が多い。
沿線の都府県は79年から協力してリニア建設に旗を振ってきた。ただ、中間駅の多くは人口密集地を外れる公算が大きい。しかも大部分の列車は駅を通過することになりそうだ。
新幹線でも地元要望でできた駅は軒並み停車本数が少なく、不振に苦しむ。リニア人気への期待はわかるが、こうした現実も見据える必要がある。