こんな記事を見つけたので、ちょっとコメント。
日本の労働市場は異常ですって??(wasting time?) – BLOGOS(ブロゴス)
絶対的な異常性
こちらの記事は、ざっくりいえば
・「日本の労働市場には異常な慣習がはびこっている」と不満を吐き出し、またはそうした意見に同意して、自分たちを慰めている人は多い
・しかし、欧米と比較すれば、日本の労働市場は「そこまで硬直的で異常ではない」。
という主張になるのでしょう。3〜4分もあれば読める記事ですので、詳しくはぜひ原文をお読みください。
ぼくは、日本の労働市場は異常だと考えます。
その理由は超シンプル。だって、労働で人が死んだり、うつ病になったりしてるんですよ。しかも、1件や2件ではなく、社会問題として大々的に認知されるほどの規模で。
仕事で人が死んだり病んだりするって、どう考えても「異常」でしょう。それは国際比較がどうとか、そういう話ではなく、絶対的な異常性です。
この種の国際比較はなかなか厄介で、ときに問題が問題であることを隠してしまうことにもなります。
「日本の貧困が拡大している」という主張についても、しばしば「世界にはもっと大きな貧困があるじゃないか!」という反論をもらうことがあります。
これ、実にナンセンスなことがわかりますか。そういう反駁をする彼らは、「日本の貧困者は優先順位が低いからそのまま飢えて死ね」とでもいうつもりなのでしょうか。人の命が絡むような問題に関しては、国際的な比較をもってして、問題性の軽重を推し量るべきではありません。
国際比較は問題提起の材料にすぎない
国際比較は、あくまで「問題提起する上での材料」に留まるのでしょう。
たとえば日本の大きな問題である「住まいの貧困」。最近話題の「脱法ハウス(最近は「違法ハウス」と呼称されるようになっているようです)」問題などが象徴するように、日本の住宅政策は、貧困問題への観点がほとんど向けられていません。人の命が関わっているわけで、これは大きな問題です(詳しくはビッグイシュー・オンラインの「住宅政策」タグをぜひ)。
住まいの貧困について問題提起する際にも、住宅政策が進んでいる欧州の話がしばしば用いられます。たとえばこちらの記事では、フランス、スウェーデンの現状が紹介されています。
フランスでは、住宅ストックの17%を低家賃の社会住宅(公営住宅)が占める。その対象は低所得世帯であるが、日本のように年齢や家族形態によって制限されず、若い単身者でも入居が可能だ。
若年世帯は規定の所得水準以下であれば、家族向けや単身者向け(学生を含む)の公的住宅手当を受給することができる。また、若い失業者や就業者、学生などを対象とした住宅制度(ロカ・パス)として、借家契約の際の連帯保証人の代行、保証金の無利子貸与、未払い家賃の保証(18ヵ月まで)などのサポートがある。
こうした比較を通して、問題の問題性がよりくっきりと浮かび上がってきます。また、どのような解決策がありえるかについても、議論を深める材料になるでしょう。国際比較というのは、基本的にこうした使い道に留まるとぼくは考えています。
ちょいと元記事の問題提起とは逸れている部分もあるので、ぜひ原文をご覧の上、日本の労働市場が異常かどうかについて、考えてみてください。
日本の労働市場は異常ですって??(wasting time?) – BLOGOS(ブロゴス)