【編集委員・浅井文和】東京大の論文不正では、撤回が妥当とされた論文数が43本と多いほか、加藤茂明元教授は国の重要な研究プロジェクトを担う重鎮だった。論文の発表は、1996年から2011年までの長期間に及んでいる。問題が指摘された論文にかかわり、他大学の教員に就いた弟子もいる。
研究の不正は相次いでいる。昨年6月には、日本麻酔科学会は元東邦大准教授の麻酔科医が発表した論文約170本が捏造(ねつぞう)だったと公表した。ただ、元准教授個人の不正とされた。10月には人工多能性幹細胞(iPS細胞)による世界初の臨床応用をしたと発表した東大特任研究員が虚偽発表だとして懲戒解雇された。
今年4月には京都府立医科大が、元教授の動物実験などの論文14本で改ざんなどがあったと発表。高血圧治療薬の効果を調べた論文も撤回され、同医大は7月、不正なデータ操作があったと判断した。
昨年、科学誌に発表された調査によると、医学生物学分野で過去に撤回された国別不正論文数は、米独に続き日本が第3位だった。