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中国バブル崩壊後、大相場がやってくる

東洋経済オンライン 7月12日(金)8時0分配信

■ 逃げ出した資金は中国に戻らない

 もちろん影響を甘く見ているわけではない。しかし世界の金融経済とのつながりが深い日本など先進国と、特殊な制度・文化を持つ中国を同じように考えることも危険である。

 日本に何かショックが起こると、リパトリエーション(資金の本国回帰)が起こる。だから97〜98年危機の時も、リーマンショックのときも世界の株が売られると同時に強烈な円高となった。「3.11」の東日本大震災時(2011年)も規模は小さかったものの、円高・株安となった。これは世界一の債権国として各国に投資している日本の特徴と言えるだろう。

 中国も確かに「金持ち国家」なのであるが、日本とは全く違う。政府高官からして家族や資金を国外に逃亡させ、生き残りのため「保険をかけておく」国である。中国の混乱が拡大すれば、むしろ資金の海外流出は加速する可能性が高い。いずれ「海外送金停止」「海外渡航禁止」の措置が取られる確率も低くないと考えている。そもそも、シャドーバンキングで集められた資金は本当に中国の不動産に投資されたのか? 実は「投資で損をしたことにして」海外に送金されたのではないか。今の段階では想像に過ぎないが、たとえそうであっても驚くことではないだろう。

■ 株式市場は一時調整、そして緩和は「バブルの燃料」に

 中国バブルの崩壊は、一部の国や企業にとって深刻な問題である。特に中国の成長をあてこんで大きな投資をした資源国は、過剰投資と代金不払いに悩まされることになるだろう。

 しかしアメリカ・ドイツ・日本など競争力のある知的産業を抱える国にとって、そういった国の苦境はインフレ圧力を抑える「冷却材」のように感じるに違いない。輸入物価は上がらず、金利も上がらず、好調な企業収益を支える要因となるだろう。新興国での需要が落ちても、先進国企業のキャッシュフローは好調なはずだ。

 97〜98年の危機のとき、日本・アジア・ロシアは大変な苦しみを味わった。日本では資金調達ができずに企業がバタバタ倒産し、大幅な円高を食らって悶絶した。LTCMやタイガーファンドが破綻し、リスク管理に限界があることを思い知らされた。

 しかし、欧米株式市場は95年から2000年まで続く長い株価上昇トレンドのさなかにあり、危機のピークであった98年秋に2割ほど調整をしただけである。
今回も米国経済は盤石であり、そのおこぼれで日本企業にも相当な恩恵があると考える。ドイツも基本的に問題はないが、欧州ソブリン問題に飛び火すれば盤石ではないかもしれない。すると基本的に日米の株価は上昇トレンドが続き、中国やそれに連なる新興国は反発を交えながらも長い下降トレンドが続くという2極化が見られるだろう。

 そして中国の危機が本格化したとき――たとえば海外送金停止、海外渡航禁止から内乱・軍事衝突まで様々なパターンがあるが――日米株式市場も2割から3割の急落となるに違いない。それに対して日米欧が大規模な追加緩和や緊急融資に踏み切れば、「今回の」中国危機はいったん落ち着きを取り戻すだろう。
そこで生み出されたマネーは、バブルの「燃料」となり、日米の株価上昇を再加速させる可能性が高い。一時的な急落への備えは不可欠だが、恐がり過ぎて大きな上昇トレンドを取り損ねる愚は避けたい。

安間 伸

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最終更新:7月28日(日)8時35分

東洋経済オンライン

 

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