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サムスン、韓国内で囁かれる勢力低下のはじまり…韓国の政治と財閥の関係とは?

Business Journal 6月11日(火)4時1分配信

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サムスン、韓国内で囁かれる勢力低下のはじまり…韓国の政治と財閥の関係とは?

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サムスン、韓国内で囁かれる勢力低下のはじまり…韓国の政治と財閥の関係とは?
サムスングループの中核企業・サムスン電子本社(「wikipedia」より)

「韓国のGDPはサムスンが支えている」
「サムスンが倒産したら韓国経済もつぶれる」

 日本の経済界では、そういった言説がささやかれている。実際に、サムスンの躍進は日本国内にとどまらず海外でも続いており、凋落する日本の家電メーカーと対比して語られてきた。特にサムスンのスマートフォンは、世界中で大きな売り上げを誇った。サムスンの2010年の売上高が韓国のGDPの22%、株式時価総額は韓国株式市場の25%、韓国の輸出額の24%を占め、資産は韓国の国富の3分の1に迫る大企業である。

 多くの日本人は、サムスンほどの大企業なら絶対に倒産はないし、韓国経済がおかしくなっても、サムスンがなくなることはないかのように考えているようだ。しかし日本で同社は、GDPや輸出額などの数字だけを見て語られてきたので、私たちは現在のサムスンの“本当の内情”をよくわかっていない。

 韓国の経済界や政治に詳しい人の中では、サムスンが安泰だと考えている人は少ないようである。彼らは一様に「サムスンは、遠からず凋落するでしょう。少なくとも、今のまま繁栄を続けるということは絶対にない。まさに今がサムスンのピークです」と話す。

 これは一体どういうことなのであろうか? 

「韓国は、李承晩大統領(り・しょうばん/第二次世界大戦前から1960年まで韓国政府や臨時政府の大統領を数回務めた)のころから経済界と政治権力の癒着がある国です。財閥がその時々の与党や大統領を支援し、彼らが作った政府から恩恵を得るという構造が続いてきた。というのも、もともと韓国は朝鮮戦争で一度国内の経済が破壊されており、その復興に際しては、政府が中心となって経済政策を行ってきました。李承晩政権のときは、戦前の日本人が遺した“遺留資産”の帰属に関する帰属財産処理法や朝鮮戦争の復興のための資金援助などをめぐり、財閥との癒着が大きく問題になりました。そして、李政権では、政経癒着と揶揄され、政治に結びついていた財閥は特恵財閥とされました。そして、60年に李大統領は不正を問われて失脚するのです」(韓国の経済識者)

 韓国の経済は、戦前から続く政界と財閥の癒着が基礎にあるわけだ。そしてご存知のとおり、そうした癒着は何度も大統領が替わった今でも続いている。韓国の経済識者は続ける。

「その後、清廉といわれた朴正熙大統領は(第5〜9代大統領。在任:1963〜79年)、そうした特恵財閥の不正蓄財処理を進めた一方で、経済発展のために傾斜生産方式のような重点的な産業に政府系の投資が行くことになり、新たな財閥が形作られました。そして、彼らからの政治献金に関する問題も当然存在し、三鶴焼酎や双龍グループなどは、献金した政治家の失脚と同時に、財閥そのものが没落またはグループの解体となったのです。

 続いて全斗煥大統領(第11・12代大統領。在任:1980〜88年)は、国際グループとの癒着が大きく、それは韓国人ならば誰でも知っていた。しかし、その国際グループも全大統領の失脚ともに没落し、財閥グループそのものが解体されました。その後も同国では、政治家、特に政権与党の政治家や大統領と財閥の間で癒着と汚職が続いており、歴代の大統領が汚職や不正で、退任後に逮捕されるか、または自殺をしている。それに合わせて、癒着していた財閥も徐々に凋落していく……というサイクルが確かにある。

 09年5月の盧武鉉大統領(第16代大統領。在任:2003〜08年)の自殺によって、盧武氏が行っていた太陽政策に協力し利益を得ていた現代財閥も一時ほどの力はなくなり、李明博大統領(第17代大統領。在任:2008〜13年)時代にはサムスンが台頭した。しかし、その実態は李大統領による保護と、政府系の融資、そして許認可の優先的な取得で経済的に大きくなってきたもの。当然、李大統領が退任し、今後政治的な力を失えば、サムスンも無傷ではすまない、という観測が公然と唱えられています」

 韓国の経済界は、大統領の交代と同時に、「主役」となる財閥が替わるというのである。ではサムスンが、現政権である朴槿恵大統領(第18代大統領。在任:2013年〜)と癒着関係を持てば、今までどおり、または今までよりももっと強い経済集中が起きるのではないか?

 この疑問に関して、韓国人の経済記者は答える。

「07年、当時ソウル市長だった李明博氏が大統領に立候補するときに、ハンナラ党では4人の候補がいた。その中の一人が朴槿恵氏であり、最も有力な候補でした。しかし、どうしても大統領になりたかった李氏は、ほかの3人の候補と手を組んで、朴候補を追い落としたのです。朴氏は、暴漢に襲撃されるなど、李氏の工作に対抗することができなかった。候補から追い落とされた朴氏は非常に落ち込んで、一時は政治家の道をあきらめたほどでした。

 そして、その李氏の工作などに、金銭面などで手を貸していたのがサムスンでした。今期の大統領選挙でも朴氏を大統領にしたくなかったサムスンは、無所属の安哲秀弁護士を推していたのです。安候補の支持層は、サムスンのスマートフォンを使っている世代だったことも関係しているでしょう。そうした若い世代が朴候補の支持をしなかったために、朴氏の支持層は年寄りばかりです。当然、朴氏は、それら一連の事件を深く恨んでおり、表立ってサムスン批判をしているわけではありませんが、財閥解体と経済の自由化を強く主張しています」

 こうした動きが、サムスン財閥の解体を念頭に置いていることは言うまでもない。では、今後の韓国経済とサムスンは、どのようになるのであろうか?

「よく言われるように財閥の独占により、韓国国内の富は極端に2極化しています。今後、財閥解体と中小企業育成がうまくいけば、経済もより上向きになるでしょう。国民全体の所得が上がり、それだけ内需も増えることになります。しかし、うまくいくまでは、かなりの混乱が予想されます。もちろん、中国やそのほかの諸国から受けるさまざまな要因があるので、韓国の経済全体を予想するのは難しい。ですが、サムスンが徐々に凋落することは目に見えている。もともとサムスンは小麦粉などの食品材料の輸入業者だったのが、廉価版の家電を発展途上国相手に売り急成長した企業。しかし、それも頭打ちになっています。日本企業は、サムスンが韓国の3分の1の経済力を持っていると誤解したままだと、もし仮に同社が急に条件の良い話を持ってきたときに、飛びついてしまうかもしれませんが、そうした甘い話には落とし穴があると思ったほうがよいでしょう」(同)

 日本の企業は、風評や肩書やブランド力で判断してしまい、本当の姿を見ない場合があるので、十分に気をつけなければならない。いずれにせよ、韓国の経済と財閥に関しては十分に注目が必要である。

宇田川敬介

最終更新:6月11日(火)4時1分

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