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DOL特別レポートSPECIAL
2013年7月5日
著者・コラム紹介
西原哲也

日本で新しいマーケットを創るために
「投資移民制度」はどうだろうか

オーストラリアでも始まった成熟国家の生き残り策

 あるいは、都市再開発や自然保護のための不動産投資もいいと思います。不動産投資はとかく加熱しがちですが、例えば、水源の山林を外国人が買い占めるというようなケースが懸念される場合は、あらかじめ規制を設ければよいだけです。一方で、優秀な技術を持っている人材には、投資額の垣根を下げてもよいと思います。

 仮に年間1000人の投資移民を認めた場合、1人5億円の投資額ならば、毎年約5000億円以上のGDP引き上げ効果があります。

どうして日本では投資
移民が議論にならないか

 そこで筆者は、なぜ日本も投資移民制度を導入しないのかと、取材などの機会を見つけては日本の政策立案に関わる方々に話を振ってみてはいるのですが、なかなかどうして反応が鈍いのです。まったく意に介さない風で一蹴されることも多々あります。

 なぜ日本では、投資移民制度の導入が議論にすら上らないのでしょうか。

 背景にはどうしても、国に「外国人移民への拒否反応」があると言わざるを得ません。日本には諸外国のような移民省はありません。また、先進国の中でも難民受け入れには積極的とは言い難い。外国人住民に選挙権を与えるかどうか、という議論も起こっては消えというのもその延長線かもしれません。

 先進国の労働人口における移民比率は平均10%以上、しかし、日本はそれがたった1%にも満たないのです。

 外国から若い人が来るということは、国としては税収による歳入が増え、形成される外国人コミュニティーで消費が行われ、新しい市場も創成されるということです。文化や民族的にも多様性が生まれます。オーストラリアは、国の将来を見据え、投資移民制度によって特にアジア圏からの資金を積極的に取り込み、国力を安定させようとしています。

 翻って日本では、社会を活性化するメリットよりも先に、「外国人が増えると犯罪が増える」「日本人の職業を奪う」といったホラーストーリーがもっともらしく持ち出されてしまいます。それ自体にも誤解があると思いますが、投資移民制度なら治安面や労働市場への影響は大きな問題にはならないでしょう。

 真に恐るるべきは、短絡的に犯罪が増えることを危惧することではありません。むしろ、日本が「さあ永住権を与えるから投資して」といつの日か諸外国にPRする頃には、日本が衰退し、外国人が日本市場に魅力を感じなくなることなのです。

 遠く離れた南半球の地から母国を思うにつけ、日本は、少しばかり悠長な気がするのです。

西原哲也
1968年長野県生まれ。時事通信社外国経済部記者を経て、香港大学大学院アジア研究修士課程修了。海外経済通信社NNA香港華南版、中国総合版編集長を 経て、豪州&オセアニア版編集長兼NNA豪州社長。主な著書に『秘録・華人財閥-日本を踏み台にした巨龍たち』(NNA)、『覚醒中国-秘められた日本企 業史』(社会評論社)など。

 

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